第6話 フェイルが(変態面で)成長した
矛盾・誤字脱字の可能性あり。先に誤っておきます。
初めてダンジョンに潜った日から一か月が過ぎた。
私は順調にAランクの討伐系依頼を消化していき、ついに正式にAランク冒険者として認められることになった。
「「「うぉー!Aランクの可愛い子ちゃんが誕生したぜー!」」」
自分のことのようにはしゃぐ男どもは、ビールの乾杯をしながら、大騒ぎしていた。
「まったく男どもは……。」
受付嬢さんもあきれ顔である。
若いAランク冒険者はなかなか出てこないということで、むさくるしい男どもが大騒ぎを始めて、いまや軽いパーティーという雰囲気になっていた。
そうすると、どうしても必要以上にすり寄ってくる男どもが出るので、それを腹部を小突くことであしらう。
「ぐぉっ……ひでぇじゃねえか……。」
「ぐはっ、……ああ、でもこんな扱いでもいいかもー。」
……若干新しい扉を開いてしまった男もいるようであるが、それは忘れることにした。
話しかけてくる人に対しては、興味を持っていると思われないように、かつ、逆に無視されていると思わせないように、ある程度会話したところで、さりげなく席を立つ。
これが社会の処世術である。
老害の親戚どもとの政争の過程で身についてしまったのは、なんか悲しいことであるが。
「ええ、ではそろそろ他の人に挨拶しませんと。」
「おう、話こみすぎたな。」
席を立って、何十回目になるかわからない男との会話を終える。
はぁ……
ここに来てから一か月。
ここにも慣れてきたけど、一か所にとどまるのは私の性分に合わないということが、なんとなくわかってきた。
ほかのところも見て回りたい。
そんな気持ちが強くなってきた。
「レキおねぇちゃんー愛してるー!」
「ぎゃあ!」
突然後ろから抱き着かれ、そんな声が聞こえてきた。
い、いきなりこんなことをしてくる人物に心当たりは一人しかいない。
「フェイル!なにすんのー!」
「ああ、この抱き心地、とてもやわらかくて気持ちいいですぅ……。」
フェイルは、ことあるごとに、私のことが大好きとか言ってくる変な性癖をこじらせている女である。
もう一度言う。
私は女である。フェイルも女である。
私はノーマルだっ!
「は、放してぇ!」
「「「おー、いつもの絡みだーーー!ヒューヒュー、いいぞもっとやれー!」」」
周りの男どもがはやし立ててくる。
いつものことであるが、面白がっている男どもに怒りがわいてくる。
「今日は、せっかくの記念なんですし、もっと深いコミュニケーションをとりましょうね……。」
「ね、ねえ、もしかして酔っていない?」
「当たり前ですよぅ!今日はたくさん飲みましたけど、私は酔わない体質なんですよぅ!」
ああ、これは確実に酔ってるわ。
フェイルは確かにたくさん飲めるけど、酔ってるという自覚がないタイプである。
その癖酔っている間にしたことは忘れるというはた迷惑な性質を持っているのだ。
この間も、酔ったフェイルにいろいろなところを触られて、あやうくお持ち帰りされかけるということに……。
あのときのフェイルは、とても……みりょ、ヤバい、体の芯から熱が……。」
「絶対酔ってるって!ああん、そこ揉むな!」
「ふふふ、感じていますねーーー。では今日はちょっと冒険して下の方をーーー。」
「周りに人が居るでしょうがーーー!この馬鹿ーーー!」
私はフェイルの鳩尾を思いっきり小突いて気絶させた。
ま、まあ、やりすぎたかもしれないけど、明日には忘れているから大丈夫でしょ。
「ふぅ……。」
「あー、やっちゃったか。」
受付嬢さんが呆れたように話しかけてきた。
「この馬鹿は何度言っても聞かないんですよ。」
「苦労しているねー。でも、さっきの言葉……ぷぷっ。周りに人が居なければ好きにしてもいいよっていう意味にもとれるけど?」
「「「それもそうか!両思いだねーーー、このバカップル!ヒューヒュー!」」」
「あ、………………そ、そんなわけないでしょーーー!この腹黒ーーー!」
私は、いたまれなくなって、逃げて宿にこもることにした。
言っておくけど、絶対に、絶対にそんなことはないんだからね!
「はたから見ると、完全に両思いのカップルですよねぇ。」
受付嬢は暗黒の笑みを浮かべていた。
「主役が逃げちゃったんでお開きだなー!そういえば、みんな、明日からの狩り大会の準備はできているかー!」
「ああああああああ!忘れていたぁ!」
「し、しまった、狩り大会があるのに飲み過ぎた……。」
「ザックさん?では素麺生活決定ということで……。」
「いやいや、一滴も飲んでいません!(あとで酔い覚ましの苦い奴買わないと……うえええ……。)」
どうやら、もうすぐ大きなイベントがあるようである。
何気に主人公の愛称初出し
ちょっとした小ネタ
ザック「ソーメン生活から脱出するためにも、受付嬢の機嫌を取らないとッス!」