過去編 父殺し=/絆
お詫びの、連続更新!
本当に期間が空きすぎてすみませんでした!
これで過去編は完結です!
誤字脱字の可能性あり、先に誤っておきます。
六歳 フェイルノート=??????
血まみれの床、無残に打ち捨てられた子供たちの死体。
孤児院だったところで、その戦闘は始まった。
父と娘ーーー。
その「家族」という名前の因縁を清算する戦闘。
それはどちらかの命が潰えるまで終わらないだろう。
「くっ……。」
フェイルノートは苦戦していた。
父の体格は約2メートルの筋肉質とぎっしりしており、それは脅威だった。
だからこそ接近戦は避け、遠距離の魔法戦を、しかけていたが、それはうまくいかなかった。
なぜなら父もフェイルノートと同じだったからだ。
魔法無効。
それは父も持つ特性だった。
故にフェイルノートにはもはやいつも持ち歩いていたナイフしか武器がなく、それもか弱い少女の手では父の体はうまく貫けない。
一方父はその体格を武器にして、少女の体を殴ったり蹴ったりして、ボロボロにしていた。
それはまさしく虐待と呼ばれる光景だった。
しかし状況が父の思い通りに行っているかというとそうでもなく、さっきから少女の体を剣で切り裂こうとしているが、その攻撃はかろうじて避けられる。
そう、まるで致命傷を受けまいと、それ以外の攻撃は受けているかのようにーーー。
相手の思惑にはまっているような気がして気に入らない。そう思いつつも、少女の体力を減らそうと暴行を続けている。
一方少女も、その回避策があれば勝てるかというとそんなことはなく、所詮時間稼ぎにしか過ぎない。
この戦いの天秤が傾いた最大の要因は父の魔法無効能力。
(母からの遺伝と聞いていたそれは、実は父からの遺伝だったのですか。知っていたならなんとかなったのにです。)
彼女はそう思っていた。
しかし、そう思うことで状況が好転するわけもなく、やがて決定的な一撃を貰ってしまう。
みぞおちに入ったその蹴りは、彼女の速度を落とす。
息を枯らすその少女を見下しながら、父は言う。
「哀れだなーーー。それにしても、雷で死体を爆発させて目くらましにするなり、お前の雷力ならいくらでもできるだろうに、父だからって殺したくないか? 手緩いよ。 いいさ、永遠の忠誠を誓ってくれるなら、俺も優しくしてやるよ。まずは地面に這いつくばって頭を下げたまえ。」
その言葉はフェイルノートの心を折ったようで、彼女は地面に這いつくばって土下座をした。
だが、父は彼女が自分から視線を外した隙に不意打ちを仕掛けた。
刀を最小限の動きで動かし、音を消して彼女の無防備な背中に突こうとするその行動は、しかし、それを予想していた彼女に躱された。
そしてそれに動揺する間もなく、顔面で爆発した肉片が目に入り、目を潰された。
「なんだとーーー。」
だが、問題はない。
娘に私に致命傷を与える手段はないはず。
それに私の周りで気配があればすぐにわかる。
血染めの床では音を隠しようがないからな。
耳を潜めて、気配を探ろうとしたその瞬間、乾いたかのような音がした。
そして、父は心臓を撃ち抜かれた。
「銃を持っていた……? そんなこと口のおくびにも出していなかったぞ……。 それよりも私への温情や優しさはどこにいった……?」
「銃は遅いですし、射線をすぐに見切られたら、躱されますから、最後の切り札にしていました。 目を潰して避けられる心配もなくなったので撃ちました。 残念でしたね。」
フェイルノートは父に笑顔を向ける。しかし、その笑顔に優しさは微塵もなかった。
「そんな……、それよりも父親への優しさは、温情は、父娘の絆はどこにいった……!? 相手が父親なら、子供が手加減をするのは当たり前じゃないか! それが道徳で、人間の法だ! お前は人間でいたくないのか?」
それを聞いて、フェイルノートは心のそこから父を嫌悪した。 なぜならーーー。
「父を殺したからって人間じゃないなんて誰が決めました? ええ、小説には確かに親子の情を美化するような表現が多いですーーー。そしてそれは確かに存在するものです。 けれど、私は、あなたのことが殺したいほど嫌いです。 その気持ちは、殺した今でも変わりません。 あなたは私に愛をくれなかった。 なら、私もあなたに情けをかけないのは当然の結果だと思いませんか?」
フェイルノートは、その後、まくしたてるかのように、父をこき下ろす言葉を吐いていく。
何年間もののストレスを晴らすかのように。
それを聴きながら死んでいった父の心境はどのようなものであったか。
それは誰にもわからない。
◆◆◆
「みんな、仇は取りました。 」
フェイルノートは子供の死体に対して哀悼した。
墓を作りたいのもやまやまであるが、父を殺した今となっては、早くこの街を出なければならない。
なにも知らない第三者から見れば、私のしたことは奇異であるでしょうね。彼女はそう自嘲しながら、旅立つ用意を始めた。
孤児院に残されていたわずかな資産と食料を悲しみながらも盗み、少年の遺品であるリュックに入れた。
「ごめんなさい。」
親娘喧嘩に巻き込んでしまって、ごめんなさい。
彼女はそう謝った。
わずかな時間であったが、彼らとの間には確かな絆があった。
もっと時間があれば、父とももしかしたらーーー。
それはないか、父親の本当の動機はフェイルノートの魔法無効に憎んでいたこと。
おそらく、父の魔法無効は道具の効果であったのだろう。
それが、過去に父が自分の魔法で手にわずかな傷を負っていたことを思い出して、出した結論。
あの男は、他人が自分より上であることに耐えられない、そんな心の狭い男だった。
あの男は、私の心に傷しか残さない。
さて、旅立ちましょう。
仕事はどんなものか、世界はどんなものなのか。
この足で歩まないと手に入らないものを手に入れようと、彼女は動き始める。
彼女の旅の先にはなにがあるのか、それは誰にもわからない。
◆◆◆
「フェイル、また会えるといいな。」
誰もいないはずの孤児院に、そんな声が響いた。
さて、次回から本編に戻ります。
サーカス編はどうなるのか!?
フェイルさんの活躍に期待しててください!
(そこ、主人公は?とか言わない)
そういえばもうすぐ大逆転裁判2の販売日でしたね。
前作の伏線の張り方、口調は大変参考になりました。
(そこ、活かせていないとか言わない!)
2で完結してくれるといいなあ……。