高畑先生とロケット先生
下ネタ短編企画でございます。
とある女子高の校長室で、新任の体育教師と中堅の体育教師が校長に呼び出されていた。
新任の体育教師は二十二歳独身。体育大学では飲み会クイーンと呼ばれる程のノリの良さで知られていて、赴任した女子高でも生徒受けが良いと評判の女性教諭高畑。
中堅の体育教師は女子高の緩みがちな校内の空気をピリッと引き締めてくれる男性教諭で、陸上スポーツ全般に明るく陸上部の顧問なども引き受けている。
女子生徒からは「ロケット先生」などと親しまれ、女子高の風紀を保つには不可欠な存在である男性教諭盛岡。
「えー、それで今回御二方に来てもらったのはですね、校内である噂が流れていて教師陣の耳にまでその噂が届いて来たからなんですよ」
「はあ」
話に全く心当たりの無い盛岡が煮え切らない返事をする。
「あー!」
思い当たった様な返事をする高畑に校長が頷く。
「要するに噂の主を私達にぶっ飛ばして来て欲しいんですね?」
「違います」
校長の間髪入れない否定に高畑は小さく舌打ちをする。
「実はですね、体育教師の御二方が親密な関係にあるのでは無いかと噂が流れているのですよ」
「なかなかやりますねその体育教師」
高畑がニヤリと笑うと事情を粗方察した盛岡が高畑の後頭部をグーで殴った。
「何するんすか先輩!」
「やかましい! 噂の主は俺達だ! これは名誉毀損どころの騒ぎではありませんな」
「御二方に限ってその様な事は無いとは思いますが、PTAの突き上げもありますし……」
ムニャムニャと苦い顔つきで苦言を呈する校長を、盛岡が言葉を被せ気味に制止する。
「その点は平気です。コイツは処女ですので」
「はい処女です! いや何で先輩が知ってんすか!」
「お前大学の飲み会で『初めての相手は小学校の登り棒』とか大声で発表しただろう」
「それは飲み会の鉄板ネタなんですよ! 二次会には呼ばれた事は無いっすけど!」
「ドン引きされてんじゃないか!」
次第にヒートアップする二人をなだめる様に、校長が問題点を指摘する。
「まあまあ、もし高畑先生が処女だとしてもそれを証明する事は出来ませんし……」
盛岡はツカツカと校長室の隅にある掃除用具箱に歩み寄り、中に片付けられた掃除機のパイプを取り出した。
「高畑!」
「ハイっす!」
盛岡が放り投げたパイプを高畑がしっかりとキャッチすると、盛岡が高畑に命令した。
「挿れろ!」
「ハイっす! いやいや! 何掃除機のパイプで人の純潔を散らそうとしてるんすか! しかも結構な太さっすよこれ! 中、上級者向けっすよ!」
「高畑!」
「ハイっす」
再度掃除用具箱から放られた物を高畑は素直に受け取る。
「初心者向けアタッチメントだ」
「スキマノズルじゃないっすか! どんだけ掃除機にこだわるんすか!」
「血が出れば掃除機でも食器洗浄機でも構わん」
「掃除機で純潔を散らしたら王様ゲームで“初体験の人の名前を言え”って言われたらメーカー名と型番のどっちを答えれば良いんすか! またOB会からも飲み会誘われなくなっちゃうじゃないっすか!」
「お前が飲み会に誘われないのは、OB会で来ていた先輩のビールに自分の陰毛をトッピングしたからだろうが! どうせ一生処女なんだからパイプで破くか、闘牛の角で破くかの違いだ! どっちみち家系図の突き当たり系女子なんだから、俺の潔白の為だけに処女膜破っとけ!」
「ぶっちゃけ過ぎっす! 新しい女子の系譜を作らないで下さいよ! 一応自分だって子供を作る機能があるんすから子供を作るっす! お年寄りの持つスマホ並に機能は使い切るつもりっすよ!」
「作ろうと思えば作れるって事で満足しておけ」
高畑は手に持つ掃除機のパイプを盛岡に投げつける。
「先輩!」
「おう!」
「挿れて下さいっす!」
「俺が挿れても何の証明にもならんだろうが!」
「先輩から搾り取った物をスキマノズルで注ぎ込めば子供を作れる証明になるっす! 男の人は掃除機本体をつなげてバキュームかけた方が良いっすか?」
「なんで俺の子を作ろうとしてるんだお前は!」
「先輩の親権は認め無いっす! 自分と掃除機の子です! 男の子なら“そうじくん”女の子なら“くりなちゃん”です!」
「あー……御二方……」
「今忙しいです!」
「今取り込み中っす!」
頭を抱えた校長が大きく溜息を吐く。
「誤解は解けましたので、さっさと帰って家で子作りでも何でもして下さい。くれぐれも校内で事に及ばない様に気を付けて」
翌年体育教師二人は目出度く結婚する事になり二児を授かる事になるが、校長からの出産祝いは紙オムツでは無く掃除機の紙パックであった。
全員避妊失敗しますように。