第5話「勝手な仕様変更は認められませんよね。」
宇宙人側のお話です。
異形。
コマンドルは赤目のバケモノを見てそう思った。
もしゃもしゃした毛に覆われ本体は埋もれて見えないが四肢に描かれた薄っすらと光るラインから人型であるのは見てとれた。
その身体に埋め込まれた6基のハイパーリトルジェネレーターが宇宙船をおおう力場の光を空間を歪めながら渦を巻き、妖しい紫を放つの半球体に吸い込まれていく。
「キャトルミューテーション、現場到着。標的を補足。ミッションを開始する。」
「こちらフーファイター。了解。懐かしいコードネームだな、コマンドル。ふふ。」
コマンドルの機甲鎧の後方にドクトルの機体が近づいてきた。
「笑える状況ではない。ドクトル。」
クモのような外観をしたドクトルの機甲鎧がジェネレーターの物理ターミナルのパネルを開け、4本のマニュピレーターを差し込み作業を始める。
「わかっているさ、こちらも確認した。ヤツはエネルギー補充中のようだ。このエリアの力場を吸収している。計算上は全容量の1/3ってところか。ハイパーリトルジェネレーターは設計上、単体での恒星間航行が可能な仕様に規格を上げたから大容量、高出力。条件次第では重力干渉で戦艦搭載級レーザーも曲げる事もできる。」
「相変わらず勝手な仕様変更で迷惑をかける問題児だな。」
「やってる途中から楽しくなってきて*つい*な。途中経過を報告しなかったのはその件もある。それを聞いていれば実験許可などしなかっただろう。」
「あたりまえだ。」
タコ型機甲鎧が脚を上げて怒った。
「なに、オールレンジで使えるわけじゃないさ。本体の5m以内では干渉できない仕様にしている。だから白兵戦で行動不能にして亜空間の穴に廃棄する。」
「軽く言ってくれる。わたしももう年寄りといわれる年齢に片足をつっこんでいるので、いたわってほしいものだ。」
「よくいう。知っているぞ。毎晩、高重力トレーニング室で高機動基礎訓練してるのだろう?」
「たしなみだ。戦士としての習慣は抜けないものだ。」
「ふむ。すまないがそちらのB1バルブを赤い印にしてくれるかね?」
「ああ、これか?」
「ありがとう。では、作戦通りにいこう。12基あるジェネレーターの力場を最低出力まで下げ、ヤツに近い7番ジェネレーターを再起動して稼働率最大にあげ力場を精製しカタパルトのトラップゾーンへ誘い込む。」
「出口を塞ぎ、艦載機の繋留治具に繫ぎとめてエリアごとパージ。か。」
「ふむ。そのプランでいくのがベストのようだ。」
「重力射出装置で船外へ撃ち出す方法は却下されたのだな。」
「ああ。力場を維持できないため失敗するリスクが大きい。撃ち出すまでおとなしくしておいてはくれまいな。」
「了解だ。作戦スタートは?」
「この動力パイプとモジュールを物理的に接合してしまえば…OK。いつでもいける。」
「艦橋、そちらからこっちはみえているか?」
『はい。問題ありません。』
「よし。しっかりモニタリングをたのむ。トロベローニャ船長。」
『ハッ。これより作戦を開始する。…3.2.1.0、ゴー‼︎』
11基のジェネレーターが一斉に勢いをなくし、7番ジェネレーターが普段の4倍の動力を送りこまれ黄色い光があふれだす。
力場の濃度が薄くなり7番ジェネレーターのエリアの方が増していくのに赤目の怪物が気づき、通路をカタパルトのほうへ歩き出した。
「フェイズ1、成功。」
「了解。フェイズ2に移行する。」
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