こんなのプロローグじゃないやい
はじめましたのでよろしくおねがいします。
艦橋にけたたましく警報音が鳴り響く。
「ラボエリア、第四隔壁を突破されました‼︎対象は移移動を開始しています。」
「先ほどの戦闘で動力パイプを破損。6番、7番、8番ジェネレーター内部圧力減少により、力場を維持できませんッ‼︎」
「第一強化装甲部隊、応答願います。応答願います。」
「第二部隊に出撃命令。第一部隊と合流して対処させろ。」
「第一強化装甲部隊…全機のバイタルサイン消えました‼︎」
コマンドル船長は艦橋内に設置された大型スクリーンに映し出される赤い眼をした怪物をにらみつけ、船長席のコンソールに手をたたきつけた。
その怪物は片手に今しがた壊した強化装甲の腕を興味なさそうに捨てた。
まわりにある立体サブスクリーンには通常ではありえないほどのマイナス数値が映しだされている。
そしてその数値は希望的な部分はどんどん減っていき絶望方向へどんどん加速していくのだった。
まさに状況は最悪寸前だった。
「コマンドル船長、ドクトル博士から通信が入っています。」
「つないでくれ。」
船長席の立体投影器にいかにも研究者といった白衣の男性が映る。
狂的科学者の異名をほしいままにするドクトル博士だ。
なにかの爆発に巻き込まれたのか頭から血が流れ白衣の一部を赤く染めていた。
「ドクトル博士‼︎」
「やあ、コマンドル船長。実験は成功したよ。」
「成功しただと⁉︎この惨状が成功したというのか?」
「うむ。現象発現実験としては成功した。だが制御するということが同じ実験でできるとは限らない。それとこれとは別の現象だな。」
「それを普通は失敗というんだよ‼︎」
「ふむう。実験を許可してくれたの君じゃないか。次はもっと上手くやる。」
「その機会はくることがないだろうな。それよりも今をどうするかだ。このままでは母船がアレに破壊される。アレを止める対策はあるんだろうな。」
「ふむ。それなんだが…」
大きな振動がコマンドルのいる艦橋を揺らす。
「なにがあった!」
「6番7番8番ジェネレーター内部圧力低下により機能停止。力場消失。船体が傾いています。」
「反対側の0番1番2番ジェネレーターを多くまわして船を安定させろ。⁉︎力場消失だと…?」
コマンドルは自分の聞いた単語に一瞬ひっかかりを感じた。
「こちら第2強化装甲部隊。いきなりガス欠になって動けない。なにがあったんだ?」
そうだ。
現在アレに対応させている強化装甲は力場がなければ動力を確保できず停止してしまう。
コマンドルはそんな基本的な事を失念しているほど焦っていたのだ。
そして今停止してしまうということは…
「イカン!!全員 強化装甲を捨ててそこを離れるんだ!!」
「う、うわー‼︎く、くるな‼︎やめデブゥ」
「ママ、助けレォ」
「ごめん、パパは帰れそうになニヮ」
全ての通信が途切れた。
「第二強化装甲部隊、全機バイタルサイン、消えました…」
歪んだ強化装甲のヘルメットが怪物に踏みつぶされた。
「すまない。わたしがもっと早く気づいて退かせておくべきだった。」
コマンドルは眉根を寄せ、悔しそうに首を振った。
「コマンドル船長。アレがいるエリアから後ろを切り離せ。」
「君たちを切り捨てろというのか。」
「アレを作っておいてなんだが、ここまで高スペックになるとは思ってもみなかった。実験素体の適合性が高かったというべきなのか。ま、とにかくだ。動けない強化装甲などアレにとってはただの石ころにしかなるまい。そして今のその対抗手段を失った我々には打つ手がない。幸い動くジェネレーターはまだ残っている。母船のパージ機能もまだ動くようだしこれ以上被害を拡大させないために早めに決断するべきだ。」
「それを元凶のおまえが言うのか、ドクトル。」
「元凶だからな。少なくともアレの能力は計算上知っている。それが予想外に大きかっただけだ。そうだな。力場に左右されない強化装甲でアレを押さえつけられるならベストだろうな。」
「力場に左右されない強化装甲なら心当たりがある。」
「わたしもだ。だが部の悪い賭けだな。」
再び大きな振動が艦橋を震わせる。
コマンドルは眼を閉じ、大きく息を吸ってから眼をあけた。
「船内に通達。これよりラボエリアを母船からパージする。ラボエリアにいる乗組員はラボエリアからほかのエリアに移動、または脱出艇に集合して脱出せよ。繰り返す。ラボエリアを母船からパージする。ラボエリアにいる乗組員はラボエリアから移動、または脱出艇に集合して脱出せよ。…私も実験の許可を出したものとして責任の一端をとらねばなるまいよ。」
「ふむ。ならばこちらもそれなりの準備をしておこう。」
「わかった。得物は任せるぞ、友よ。」
「うむ。では後程。」
コマンドルは通話をきって立ち上がり、被っていた帽子をとった。
「コマンドル船長、どちらへ?」
副官トロベローニャが側による。
「わたしの装甲鎧のところだ。それからこの後の指揮はトロベローニャ、君に任せる。」
船長の証である帽子を若いトロベローニャにむけた。
「お待ちくださいコマンドル船長。」
「元、船長だ。」
「ですが…。」
「何をしている。トロベローニャ新船長。キャプテンキャップをとりたまえ。先ほどの話を聞いていただろう?力場の中でしか活動できない強化装甲は役に立たない。だが旧式の装甲鎧は内蔵動力で動くことができる。そしてその装甲鎧を使えるものはこの船内にわたしとドクトルしかいない。わたしが出るしかないのだよ。わたしの出撃が遅れればこの船全体が手遅れになるぞ。早くしたまえ。」
トロベローニャはコマンドルの手からキャプテンキャップを受けとった。
「すまんな。こういうことはもっときっちりと引き継ぐものだとわたしも思っていたが、緊急非常事態なのでな。」
「はい。」
「力を抜け。大丈夫だ。何事も実践に勝る経験はない。」
「はい。」
「では行ってくる。」
「は!ご武運を。」
「トロベローニャ船長もな。」
トロベローニャは敬礼をした。
老兵は新たな船長に敬礼を返し艦橋を背に戦場へ向かった。
キャプテンキャップをかぶり船長席に着き赤い目をした怪物をにらみつける。
*読んでいただきありがとうございました。
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