プロローグ いつもの日常
俺は藤宮 理央。この物語の主人公。好きな食べ物は林檎。趣味は…。
「会長、なに独り言、喋ってるんですか?」
いま、喋っているこいつは、1年S組、綾崎 隼人。とても、不幸そうな残念な顔をしている。
「おい、こら。誰が不幸そうで残念な顔だって」
「違う。とても不幸そうな、だ」
ちなみに、ここは、生徒会室。俺は会長。不幸そうなフツメンは、副会長だ。
「そうだね。隼人君は歩いていると、空から鳥のフンが落ちてきそうな顔だよね」
「なんで、そんなこというんですか。千秋先輩。千秋先輩だけは信じてたのに!」
「ごめんね。隼人君、僕は本当のことしか言えない。正直な性格なんだ」
この人は3年S組、牟田 千秋先輩。生徒会書記をやっている。ふんわりとした、 和風美人だ。
「ガーン!うぅっ。ストライキしてやる〜」
隼人が生徒会室を飛び出て行った。
まったく、困ったものだ。こんな忙しいときに、なにをふざけているんだ。あいつは。
「お前が言えることではないがな」
いま、喋ったのは、爽やか系男子、斎藤 ひかる。イケメンだ。
「はあ〜、理央。書類ができた。さっさと確認してくれ」
最近、ため息ばかりしている。なにかあったのだろうか?
「お前がきちんとしてないからだろ」
別に、会長としての任務は、はたしているのだが 。
生真面目だな、ひかるは。
「みんな〜。体育祭の書類は、順調に進んでますですか」
「うぇっ。びっくりした」
心臓がドキドキ、ムネムネしている。
「それを言うなら、ドキドキ、ハラハラですよ」
「帝王、気配を消して、生徒会室に入って来ない。僕、びっくりしましたよ」
「あはは、ごめんなさいです。つい癖で」
俺たちの白百合学園の敷地内にはあと二つの学園がある。一つ目は山桜学園。二つ目は霞学園。俺たちの学園、合わせて3つとも全寮制男子校である。そして、3つの学園の頂点に君臨しているのが、帝王であり、神無月 薫璃様だ。口調は優しいが、この人は…。言い尽くせないほど、俺たちと圧倒的な差がある。この方は俺にとって、恩人であり、神であり、そして…。
神無月様が微笑んでくれた。俺も恥ずかしいが、笑い返す。今日は幸せな日だ。幸せな気分にひたっていると…。
「理央くん!(理央!)」
同時に呼びかけられた。なんだ、まったく。
「理央くん、帝王とアイコンタクトしている暇があったら、仕事しなさい」
「理央、俺が渡した書類、早くしろ」
「?。あぁ、わかった」
なに、不機嫌な顔してるんだ。こいつら。まあ、いいか。
それが俺たちの日常。