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神様の居ない世界  作者: 御神楽しおん
世界少年編
6/11

双子の世界

思い出して欲しい。

今朝からのゴタゴタによる俺の服装を。

寝起きから、飯を食い、悪魔と戦い、夜が去り…その間。

その間の俺の服装を。


お察しがいい人には分かるだろう。

俺がカッコ良く夜を呼んだ瞬間も、正座させられて話を聞いていた時も。


俺は妹が選んでくる水色の可愛らしいパジャマをずっと着ていたのだ…。


うう、恥ずかしい。

全部無かったことにして欲しい。

せめていつもの学生服が部屋の片隅に脱ぎ捨てられてるのさえ目にしていれば、着替えてから飯を食い、カッコ良く制服で夜を呼び出していた筈なのに。


妹はいつまでもパジャマでいる俺に、さっき少し冷たい眼差しでこう言ったのだ。


『お兄ちゃん、いつまでパジャマなの』


いつの間に着替えたんだ妹よ、と思っても、さっき夜と着替えたに違いないまあこはそう言ったのだった。


お前だってそれまでパジャマだったろうに…と、それは口から出さないでいようと思う。


この世界の前日の俺は何故かいつもと違う場所で制服を脱ぎ去りそのままにしていたらしい。


なんでだ。普段なら必ず皺を気にしてハンガーにかけておくのに…。

ガックリしつつ、俺は制服の皺を気にしながら袖を通し、これまたベッドに引っかかっていたネクタイを丁寧にしめ、鏡で全身を確認した。


なんでだかとても落ち着く。

やっぱり学生は学生服だ。


時計を見上げる。

時刻は11時。

その双子の儀式とやらまではあと1時間程だ。

俺は部屋を出て隣の部屋のドアをノックする。

妹の部屋だ。

返事を待つ。

普通ここでそのまま入ってしまっては、もし何かあったとき…例えば着替えのシーンなんぞの時にぶん殴られるというのが定番であって。


「お兄ちゃん準備出来た?」


ぴょこんと顔を出して来たまあこはそう言うと俺の服装を見た上で


よし、じゃあ行こっかと先に階段をおりて行った。

その横顔を見て、まあこの頬がまだ赤いことを確認した。

キスをしなければいけないことは変わらない。

そのことでまあこは悩んでいるに違いない。

俺がそんなに信用出来ないのか、まあこ。

キスってのは好きな奴とするもんだぞ。


俺だってまだキスなんてものはしたことがない。

双子でキスしてキス童貞解除!なんて、俺だって望んでない。


俺もまあこの背中を追い、玄関へと向かう。


地下の施設、というのがあのシェルターなら、ここからすぐの所からすぐなはずだ。

まあこと並んで革靴を履き、玄関を出る。


「あの階段おりるのかぁ」


避難訓練で下りた階段を思い出し、ぽろっとこぼした言葉にまあこは首を傾げた。


「階段?階段じゃないよ?エレベーターだよ?」


「えっ…なんだそのハイテク…」


「やっぱり、お兄ちゃんはそういう記憶、違うんだね。ほら、あそこ。」


まあこが指差した先には『只今訓練中』と赤い文字が点滅する大きなエレベーターの入り口が存在していた。


「俺の記憶だと急な階段だったはずなんだけどなー」


「あそこまで階段でおりてたの…?それは大変だったね…ちょっと想像出来ないかも。」


苦笑するまあこが、エレベーターのボタンを押す。


俺は今の所の疑問をまあこに聞いてみることにした。


まず、何組の双子がここの下の施設に来るのか。


それの答えは4組。


「友達のはるちゃんも、そこにいると思う」


少し寂しげにまあこは付け加えた。


4組というと、まあこを除いてこの後3人の天使が生まれるコトになる。

悪魔と戦う為に。神様に抗う為に。


エレベーターが現れ、2人で地下へ進む。


「なんだっけ、そこにトリイっていう天使も来るんだよな?」


「トリイさんと海さんは絶対来るよ。だって今までこの地域はその2人が守ってくれてたんだもん。」


海って方が人間なんだよな、確か。

1年前にテストケースとかがあったってさっき聞いたし…。


「巫女は来るのか?未来っていう…」


「そんなの当然だよ、未来ちゃんがいなかったら今日のこの日なんて誰も知れないからね。」


なにやらモジモジしている落ち着きのないまあこはそう静かに言う。


チーン


間抜けな音と共にエレベーターは地下へと到達した音を鳴らす。


そこから地下へと出ると目の前には近未来的なモニターの並んだ暗い空間に突き当たる。


広い。訓練で使った時は体育館位の大きさだった筈だ。

俺は上の方を見上げた。


そこに見たのは、ドカンと偉そうに椅子に腰掛けた男と、その横にちまっとした、背中に翼をはやした天使。

その横にはまあこと同じ制服を着た少女が男の横に立っていた。

その3名がこちらを見ていた。

多分、男が海って奴で、その、横がトリイっていう天使。

制服の子がまあこのいう巫女の未来ちゃん…て、ところだろう。


地下だというのにトリイという天使は光をまとっていて、表情はわからなかった。


「お兄ちゃん、そんなにガン見したらダメ。」


こそっとまあこが俺に耳打ちした。

そして別の方向から、エレベーターの到着する音が聞こえた。

その方向を見ると、多分こちらと同じ理由で呼ばれた男女が立っていた。


そして女の子の目線がまあことぶつかる。


「まあこ!」


小さく駆け寄って来たのは、まあこの友人であるはるちゃん、という女の子なのがわかった。


「はるちゃん…!」


駆け寄る2人を俺は見守っていたが…はるちゃんの兄貴と思われる同い年の男が軽く舌打ちしたのがわかった。


そして。

口がめんどくせぇと動いた。


こいつが、はるちゃんを使う主になる。

なんだか胸糞悪かった。


そして立て続けに二つのエレベーターから音が聞こえ、残りの二組が姿を表す。


私立の制服を纏った双子と、隣町の高校の制服を纏った双子だった。


この4組の双子で全員。


それぞれが何故か睨み合い、妹達は怯えていた。

自分の体が天使になる、兵器になると知った妹達はそれぞれどう思ってここに集まったのだろう。


まあこの友人であるはるちゃんさえ、涙をこらえてまあこにしがみついている。

まあこは優しく頭を撫でていた。


「これより、儀式を始める」


いつの間にか経過した時間。

今を12時と告げるように立ち上がる天使と巫女を引っさげて高い所に居る男はそう、俺達に言い放った。


一斉に、双子である四組の俺達はその男を見上げるのであった。


1人の男はつまらなそうに。

1人の男は挑戦的に。

1人の男はアタフタしながら。


そして俺は、上から目線の男を半分睨みつけながら。

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