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神様の居ない世界  作者: 御神楽しおん
世界少年編
11/11

夜の見ている世界

目を開くと、そこは紛れも無く自分の家の自分の部屋のベッドだった。


夢…のわりには記憶が鮮明だった。

夢じゃないんだな、と、視線を動かすと、そこには今朝まあこが貸したピンクの服を着た夜が座っていた。


「ごめんなさい、ごめんなさい…」


ただ、夜はそう言うだけだった。

俺はゆっくり起き上がると、天使でなくなった夜の頭を撫でた。

全部、夢じゃないみたいだ。

頭を整理する。


「…謝るなよ。」


今朝と違うのは、服が一部破けている事、夜が傷だらけだと言うこと。


俺は救急箱は何処だったかと、部屋を漁り始めた。


「何、してるんですか…?」


申し訳なさそうな夜の声を聞きながら、救急箱を見つけた俺は夜の前に座った。


「だってお前、すごい傷だぞ。」


「…。」


俺の一言を聞いてようやく自分の体を見た夜は、驚いた顔をしていた。


「何か俺さ、色々あり過ぎてよくわかんねーし…今出来るのってこれ位だからさ。」


「怒って下さい…わたし、また…」


「怒んねーよ。」


暴走の事だろう、そう思って呆れた。

色々あり過ぎてわからなかった中でも、こうなんだろう、ああなんだろう。

仮定は出来た。


「他の双子がどうなったのか聞いたら解るか?」


出来るだけの手当てはするべきだと、手当てを始めながら俺は問いかけた。


「恐らく、ですけど、今頃テストをされてる最中だと思います。」


「テストねぇ…天使同士での半殺し合い、みたいなところか。」


「はい…」


頷く夜に、俺はそっか、と答えた。


「お前は、あの夢で言ってたミカエルの力を暴走させてんのか。」


「はい…。」


「もしかして今朝もか。」


「…そうです。」


あの無機質で機械のような声や行動を思い出す。

何かに操られてるような、悲しい声。


「天使家に行って、何があったんだ。」


傷だらけの手を消毒し、我流の包帯の巻き方で包んでいく。


「いつ、契約したんだと。

ここの世界で天使化したのはきっと私も今日が初めてだったので…お叱りを受けました。

トリイは、あの時の事を覚えてるようでしたけど…。」


「あの時…契約した時に許可出したのがガブリエルだったからか。」


「そうです…。」


「知らないフリしてお前ボコされたってコトか?」


「…はい。トリイ…さんも、(あるじ)には捨てられたくないみたいです…」


「主とかそういうの、俺はあんまり分かってないけどな」


「主がいるといないとでは、違うんですよ…力、とか。」


弱々しく話す夜に俺は質問をぶつけていた。

双子で天使になったペアには聖天使の名前はつかないのか。

それはイエス。

過去に(元の俺の居た世界で)名前があった天使にだけ、今もその名前が使われているらしい。

神の巫女とは何か。

この世界で言う、暴走前の神様に近い存在。

天使をコントロール出来る、主より上の存在。

ただし、その役割は俺の妹ではなく、未来がなる筈だった物らしい。

時間軸がずれたコトによって、椅子取りゲームみたいに役割がずれているらしい。

未来は何の巫女なのか。

聖天使のお告げを、人間に伝える巫女。

天使家(あまつかけ)には残り何人の天使がいるのか。

正確にはわからないが、双子の天使予備が居るコトは明らか。

だけど人間から天使になったケースはトリイのケースだけなので、正確性は無い。

天使化出来る人間が少なくとも5人未満居ると思うとのこと。


「じゃあ最後。


まあこはどこだ。」


痣を包帯で覆いながら俺は視線を変えずに問いかけた。


「多分…ですけど、天使家(あまつかけ)に。

天使家は全ての天使をコントロール出来る力が欲しい筈なので…。」


ここで手当てを終えた俺は夜の目を見て言った。


「じゃあ、行き先は天使家だな。それと」


「…?」


「暴走中のお前って何であんな寂しそうな顔してんだ?」


「寂しいから…だと思います。」


俯く夜はそう答えた。

傷だらけの体で。

服の下は流石に見てはいけないのはわかってるし、手は出さなかったけど。

滲んでいる血が怪我の大きさを伺えた。


俺は夜の頭を撫でた。


「暴走しないように、俺がお前の名前連呼してやるよ。」


そう言うと夜は涙を零しながらもう一度、『はい』と答えたのだった。




神様がいなくなったことによって生まれた意味の無い争いや悲しいこと悪魔の事。

天使家が神様みたいに特別視されてること。

こんな世界に生まれた記憶はやっぱり無い。

俺はこんなファンタジー世界を知らない。

元の世界に帰れる日はあるのかと思いながら、ただ夜の頭を撫でていた。


お隣さんや、そもそもこの地域に、天使関連の人間が居ないのにも、この頃の俺はなんとなく、気付いていたんだ。


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