参拾陸
「もむもむもむもむもむもむもむもむもむもむ」
「まぁ、良いんですけどね。金は腐るほどありますし」
商業区に来てからというものブリュキエルは屋台に気をとられまくっている。そのすべてが食べ物屋台だ。その度に鷹が買ってやっている。
理由は簡単。ブリュキエルは金銭というものを理解していないし、前提として金を持っていないからだ。別に鷹としては金の使い道など無いに等しいし、貯めておくのもなんなのでちょうどよかった。
唯一の誤算はブリュキエルが大食漢だったことだけだ。漢ではなく女だが。
ブリュキエルは見ているだけで吐き気がする量の食料をその口に放り込んでいる。
「お腹は壊さないでくださいね」
「もむもむもー」
頬袋パンパンに食べ物を詰め込んでいるその姿は愛らしくもあった。
ブリュキエルを微笑ましく見ていた鷹は唐突に近くを歩いていたフードを被っている子供の頭を鷲掴みにした。
「もむもっ!?」
「な、何するんですか!?」
頭を掴まれた子供が驚きの声をあげる。その声はソプラノぐらいの高い声だったので子供は少女なのだろう。
ブリュキエルも驚いたような表情をしているが、食べ物を口にいれる手を緩めようとはしていない。どれだけ食い意地が張っているんだ。
驚いている二人には見向きもせずに鷹は鼻をならす。
「お前嗅いだことある臭い何だよな。どっかであったことない?」
「な、何の事?」
問いかける鷹から目をそらし少女は素知らぬ顔をする。
「知らんか。それならそれでいいか。そんなことより茶飲み話にでも付き合ってくれない?」
「な、何でボクがあなたとそんなことしなきゃならないの!?」
「ちょっとお話ししようってだけだよ。それに場所も変えた方がいいな。だろ? 金毛九尾ちゃん?」
金毛九尾と呼ばれた少女は分かりやすく肩を震わせた。
「それじゃあ、俺の行きつけの店にでも行こうか。そこではその見苦しいフードとってくれよ?」




