弐拾玖
いつもの場所に降り立つと真金と夕菜がいた。真金はいつものように難しい顔で唇を引き結んでいる。
かわって夕菜はすごく笑顔だ。この笑顔という仮面の下でどんな感情が渦巻いているのか。それを考えただけで少し胃が痛くなってきた。
「ただいま帰った・・・ぜ?」
辛うじて挨拶をする。ブリュキエルは怯えた表情で鷹の背後に隠れている。おい、それでも元熾天使か。
「面白いことをしてくれたな。驚いたぞ。熾天使をここに連れてくるなんてな。俺にも想像できなかったぞ」
「あはは〜・・・なんのことやら。ココニハ人間シカイナイヨ?」
「嘘をつくならその棒読みを直しませんとね?」
夕菜の笑顔が怖い。表情こそ笑顔だが目は一ミリも笑ってない。
過度なプレッシャーにさらされた鷹は、
「うっせぇー!! ブリュキエルは俺の友だ!! 文句あっか!?」
キレた。
「んっ・・・お父さんうるさいですよ〜・・・」
声が大きすぎたせいか鷹の腕の中の無卯が起きてしまった。「これ、どんな状況なんですか〜?」
無卯の目はまだトロンとしている。半分寝ているような状態なのだろう。
そんな無卯を見ていたら足がふらついた。
思っている以上に力を増強した代償は大きかったらしい。その事を自覚してしまったらもうダメだった。アドレナリンの過剰分泌による効果が薄れ、今さらになってさっきの戦闘の疲れを思い出してしまった。
「あ、こりゃ無理だわ。あとよろしく」
無卯を下ろすとふらふらとした足取りで立ち去ろうとする。
「は? おい鷹、どこに行く気だ」
「寝る。もう無理だ。ブリュキエルは俺が預かる。それでいいだろ。おい、行くぞ」
「あ、はい。待ってください」
鷹はブリュキエルを連れて自分の言葉通りに部屋に向かってしまった。
あとに残されたのは眠気でトロンとした目をしている娘と鷹の背中に不安げな視線を向けている鷹の二人いる保護者だった。
「・・・あれどうなりますかね」
「・・・さぁな。あいつのことだからそれほどヤバイことにはならん・・・と、信じたい」




