弐拾漆
一瞬で距離をつめると劔を力の限り薙ぐ。それを槍の表面でなぞるようにしながら逸らす。
流れた体にもう一つ新たに生み出した槍で脇腹を狙う。その槍での一撃は視認することのできないほどの勢いだったが、蹴りを槍の柄に叩き込むことで槍の穂先を逃がす。
鷹は一度バックステップでブリュキエルから距離をとる。
戦闘開始から僅か二十分。戦闘は膠着していた。
鷹の攻撃もブリュキエルの攻撃も相手に決定打を与えることができない。
二人は立場こそ違えどその境遇は似ていた。
片や数日前に生まれ落ちて右も左もわからない天使。
片やほんの数十分前とはくらべものにならないほどの力を手に入れ、その力に振り回される人間。
どちらも力をもて余していた。
ブリュキエルは一度に数百の光球を生み出す。それをタイミング、軌道、スピード、威力それぞれを微妙にずらして鷹に殺到させる。
「舐めんなよ!!」
劔を思いっきり振り回す。その劔の軌跡に沿うようにして劔から溢れている光が薙がれる。
光球が全て爆散したのを確認してから一足で近づき飛び上がる。そのまま劔をブリュキエルに全力で振り下ろす。
「・・・っ!?」
ブリュキエルは辛うじて槍でガードするが耐えきれずに弾き飛ばされる。翼でスピードを減衰させようと試みるが大した効果も得られずに地面に叩きつけられた。
地面に叩きつけられた衝撃で翼が数枚イカれてしまったようだ。動かそうとすると強い痛みしか反応してくれない。
「チェック・メイトだ」
辛うじて体を起こすとブリュキエルの鼻先に劔が突きつけられた。
「楽しかったぜ。こんなに本気でやりあったのは久しぶりだ」
「私も・・・ですよ。生まれてから出会った方々は歯応えがありませんでしたから。最後にあなたと戦えて良かった」
二人の顔には自然と笑みが浮かんでいた。二人とも世界を物足りなく感じていた矢先にこんな好敵手と会えたことを喜んでいた。
だが、好敵手との別れは死によるものと相場が決まっている。
「じゃあな。来世では友になれるといいな」
「そうですね。私もそれを願っていますよ」
鷹が劔を振り下ろした。
一体の・・・いや、一人の好敵手の真新しい時計が止まった。




