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弐拾肆

「あ〜、クッソ。勝てるはずないでしょ」

鷹は口の中に溜まった血を吐き捨てる。

戦闘を続けているせいで全身を虚脱感が支配していた。

この虚脱感の原因を鷹は知っている。この虚脱感を払う方法も目の前の天使に勝つ方法すらも知っている。

だが、踏ん切りがつかないでいた。

その方法を実行すれば鷹は目の前にいる活け好かない天使を叩き伸すことができる。その代わりに鷹は人間からかけ離れてしまう。

この鷹が先天的に持っていた異能と言うものは本来人間が持っていないものだ。その力を使い続けると言うことはそれだけ人間から離れていくと言うこと。そして、鷹が欲しているのは熾天使を殺せるほどの力。それほどの力を持っている人間を果たして人間とは呼べるのだろうか?

人間ではなくなってしまった自分を自分の愛している人がどう思うか。それを想像してしまうとどうしても足がすくむ。

ひびってしまっている自分の心を叱咤しながら苦笑した。悩んではいるが答えがもうすでに出てしまっている自分に対して。

「まぁ、あいつらが死んだら元も子も無いですよね・・・」

鷹は決断した。自分が愛する人たちを護るために人間の看板を返上することにした。決断してしまえば後は悩む必要がない。

自分の頭の片隅に声をかける。

「おい、相棒。俺は俺が背負っているものを護れるだけの力がほしい。その為に代償が必要ならいくらでも持っていけ。その代わりに目の前の天使を殺せるだけの力を寄越せ!!」

頭の奥底から笑い声が聞こえてきた。

「そうか。お前にも護りたいものがあったか。いいだろう。代償は時間、貴様の時間を貰おう」

「時間?」

「言ってしまえば寿命だな。それを貰えれば俺も世界に干渉出来るようになる。今回は俺とお前の回路を三つ増やす。その代わり、お前の時間を十年分貰う」

「持っていけ」

この場所を切り抜けるために寿命を十年寄越せと言われた鷹は一瞬も迷わずに渡すと言う。一度決断してしまった鷹にとっては迷う価値も無い問題だ。

「かっこいいな。さぁ、くれてやる。反動で死ぬんじゃねぇぞ、相棒?」

「お気遣いどーも、こんなんで死んでられねぇよ。アーサー」

軽口を叩くとまず劔を握っている右手に違和感を覚えた。その違和感は一瞬で全身を駆け抜ける。

その違和感を追うかのように全身を意識が飛ぶほどの激痛が鮮烈に駆け抜ける。

「ぐ、がぁぁぁーーーー!!!!!!」

全身が内側から弾け飛んでしまうような感覚に襲われる。

痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!! 何も考えられない。思考が痛みのせいで真っ白に染まる。特に劔が刻印されている左目はマグマのように煮えたぎっている。

今までも劔を振るっていたときに多少体に流れ込んできていた力の総量が明らかに増えた。文字通り桁違いの力が体に流れ込んできている。器の大きさを圧倒的に上回る量の力がそのまま痛みとしてからだの表層に現れているのだ。

それを見た天使は驚愕に喉を震わせる。

「何ですか? この力の量は!? こんなの私でも受けてられません。落ち着く前に殺します!!」

天使が手もとに光で形作られた槍を生み出す。それを鷹に投げつけた。

痛みで思考がホワイトアウトしてしまっている鷹の前に人影が立ちふさがった。


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