弐拾参
『いい加減に諦めたらどうですか?』
映像の中の天使は手もとに空間を歪めるほどにまばゆい光を放つ光弾をいくつも生み出し放つ。
『俺は伊達や酔狂で第零世代最強を名乗ってる訳じゃねぇんだよ!!』
その全てを男は走って天使との距離をつめながら手元の劔で弾く。
射程に入ったところで男は跳躍し、劔を思いっきり薙ぐ。
一閃を天使は涼しい顔で避ける。その一閃の先にあったビルは跡形もなく崩れ落ちた。
「こ、これは何なんだ?」
机に足をあげている態度の悪い少年が辛うじてといった様子で震える声を絞り出す。
それを見ている夕菜の心はこの場にいる人間の菜かで一番落ち着いているだろう。
そんな夕菜が口を開く。
「熾天使と鷹の殺し合いですよ、和樹くん。第零世代最強、人類最強であるはずの鷹でも勝ち目の見えない相手、それが序列第一位熾天使です」
第零世代と言うのはこの世界にいる異能者のオリジナルだ。現在世界に五人しかいない。この第零世代の異能を解析して、その情報の応用によって生み出されたのが無卯たちだ。それ故に無卯たちは第一世代と呼ばれる。
そのオリジナルたる第零世代は第一世代とは比べ物にならないほどの性能を持っている。かく言う夕菜も鷹と同じく第零世代である。
第零世代の特徴は二つ。体のどこかにある刻印と汎用性が皆無な一極化された性能だ。鷹は攻撃がぶっ飛んでいる。
「今鷹が熾天使と交戦している。あいつの救援に向かえるのは夕菜だけだが、夕菜にはここを守ってもらわねばならん。そうしてもらわんとここが戦闘の余波で吹き飛ぶからな」
夕菜が特化しているのは防御。どんな攻撃にも耐えきるのが夕菜だ。
この旧日本支部の第零世代は最悪の矛盾と呼ばれている。
司令部が静寂に染まっている間も映像の中では絶え間なく戦闘が続いている。
『くたばれや!!』
『お断りします』
鷹が目にも止まらぬ早さで連撃を加えるが、その全てを天使は欠片ほどの焦りもなく受け止めている。
しかも連撃の合間を縫って鷹の腹部に蹴りを叩き込んだ。鷹はものすごい勢いでぶっ飛んで地面を数度バウンドする。
「俺からお前たちに出す指示は無い。そして、お前たちが地上にいくのを禁ずる」
「何でですか!! お父さんがあんなに頑張って戦っていると言うのに私たちには指をくわえて見ていろと言うのですか!?」
「そうだ」
無卯は声を張り上げながら真金に訴えるが真金の返答はそっけない。
「お前らが地上に出ても無だ死にするだけだ。それがわかったならここにいて鷹が勝つことでも祈っているんだな」
それだけ言い残し、真金は司令部から出ていってしまった。
司令部にいる異能者は鷹の戦闘の様子が映し出されているスクリーンを見ている。
その場にいた人間が一人減っていることに気づけた人間は誰もいなかった。




