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弐拾壱

「ヒャッハー!! 狩りの時間だぜぇ!!」

荒ぶっていた。それはもう面白いぐらいに荒ぶっていた。

地上に出ると同時に地面を踏みしめ戦闘をやっている気配がする方向に駆け出す。鷹の鼻は無駄に高性能なので然したる時間もたたずに戦闘現場が俯瞰できる場所に到達した。

そこは倒壊しかかっているビルの屋上だ。

眼下ではアクセルと月が背中合わせで天使と相対している。

耳を澄ませば戦闘音にかき消されかかっている二人の会話を盗み聞くことが辛うじてできた。

「あ〜あ〜。アクセルがうるさいから天使が寄ってきちゃったじゃないですか〜」

「あ!? てめぇがクソでかくて無駄に目立つ氷柱をおっ立ててるからだろうが!!」

「は〜。男のいいわけは見苦しいですね〜」

「あぁん!?」

二人は天使を殲滅しながらも罵りあっている。

「・・・意外と元気そうだな。俺要らなくね?」

鷹が自分が助ける意味を見いだせなくなるぐらいには元気に喧嘩している。今見たところ鷹が手助けする必要があるような天使もいない。

そして、鷹は健か肯定派なので喧嘩事態はどうでもいい。

あの調子なら周りにいる天使たちも危なげなく倒せそうだ。そう思い踵を返した瞬間。鷹の背中におぞけが走る。

そのおぞけの正体を探る前に体が動き出していた。

出せる限りのスピードを出し、一瞬で二人の側にたどり着く。

「鷹!?」

「鷹さんですか〜?」

驚いている二人に構っている暇はない。

「顕現しろ!! 我に救いを求める者のために!!」

言霊を込めた呪言を発することによって強制的に自分の手もとに今出せる最高出力の劔を顕現させる。それを掴むと型も何もなく大振りに薙ぎ払う。

視界中にいた天使が、一体を除き全て殲滅された。

その一体の天使は背中から六対十二枚の翼を生やしている。その神々しさたるや太陽に匹敵するほどだ。

「おいおい・・・冗談だろ?」

今の一閃はここ数ヵ月で最高の威力である手応えがあった。それを受けても眼前の天使は涼しい顔をしている。

鷹の背中に冷や汗が流れる。直感した。目の前にいる天使は熾天使だ。アクセルも月もこいつの前では足手まとい以外の何者でもない。

鷹は臨戦態勢をとり、二人を背中に庇いながら苦笑する。期せずして鷹に庇われる形になった二人は顔面蒼白で震えている。

「おいアクセル、月」

「な、何だよ」

「ななな何ですか〜?」

声まで震えてしまっている。歯の根も合わさっていないようだ。

「あいつはそんじょそこらの天使とは違う。お前らじゃ一瞬すら持たない。だから逃げろ」

鷹は一瞬すら天使から視線をはずさずに告げる。それは暗に足手まといだと言っていた。

「だ、だが・・・」

「何度も言わせんな。逃げろ」

必死に口を開くアクセルに有無を言わせぬ口調で命令した。

アクセルはさっきまでしていた喧嘩のことなどすでに頭にないのか、月を脇に抱える。そして足下にダッシュボードを生み出し、すごい勢いでその場を離脱した「あなたは逃げないで良いの?」

天使は優しい慈母のような声音で鷹に言う。

「はっ、俺が背中見せたら即座に刺されんだろ。それに熾天使と殺り合えんのは俺だけだ。俺が逃げ出すわけには如何だろ」

鷹は無意識のうちに左目を開いていた。左目を開けるときは本気でやるときだけだ。目の前で優しく微笑んでいる天使には鷹の本気をもってしても倒せる気がしない。

諦め半分で天使を殺す算段を立てていると鷹の頭の奥から声が頭に直接響いてきた。

「俺の力が必要じゃ無ぇのか? お前が欲するなら俺はいくらでも貸してやるぜ、相棒?」

「うっせぇ」

その声はふてぶてしい口調ながらも聞いている人間を惚れ惚れさせるような澄んだ声だった。

鷹はその声を断ち切るように首を横に振る。

「おい、腐れ天使様よ」

「何ですか? 人間」

「てめぇらの目的は何だ? お前らの仲間を殺したグリードは死んだはずだ。ならば俺たち人間とてめぇら天使が敵対する必要は無ぇだろ」

この天使と人間の敵対は一人の人間が天使を残虐に殺したことから始まった。

グリード・リッテンハイム。

この世界の記録に残っている上で最強の異能者にして、世界を破滅に追いやった男。

グリードが世界に生まれ落ちたことによって、天使たちはこの世界にやって来た。グリードを監視し、世界の害悪となる存在になった場合には殺すために。監視のついでで天使は人間に協力していた。

グリードが自分の力を過信し、天使を殺したのが今から十六年前、グリードが十七才の時だった。

その後、グリードは『熾天使攻略戦』時に戦死している。

原因となった人間はもうこの世にはいない。ならば、人間と天使はもう一度手を取り合えるのではないかと鷹は思っていた。

その鷹の発言を目の前の熾天使は一笑に付した。

「今さらですね。あなたたちとの戦争で多くの同胞が死にました。彼らの死はあなたたちを滅ぼすことでしか弔えないのですよ」

「そーですか。ま、今のが俺たちの最後通告だ。無理なら無理で良いけどね」

鷹は体に纏っていた気配を変質させる。緩やかで相手を取り込む気配から全てを拒絶し破壊する気配に。

「俺たちかお前たち。どちらかが滅ぶまでこの戦争は終わらない。それで良いんだな?」

「ええ」

熾天使が肯定を示し首を縦に振る。

それが鷹と熾天使の度を越えた殺し合い開始の合図となった。


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