弐拾
司令部に一歩足を踏み入れるとすぐに気づく。この部屋だけ明らかに空気が違う。
ちなみに千波は緊急を要する話みたいなので帰ってもらった。
端的に言えばさっき鷹がまとっていたしょんぼりムードが蔓延していた。
それにつられて鷹までしょんぼりムード発生源になって司令部の空いている椅子に座ってしまった。
「こ、この部屋でいったい何が」
ぼそりと無卯が呟くと司令部の人間+鷹が一斉にため息をつき、より空気が重くなってしまった。
そんななか司令部の奥から苦笑した真金が出てきた。
「すまんな、呼び出しちまって。・・・ん? 鷹も一緒に呼んだはずだが、どこにいる?」
「どんよりしてますよ」
真金の前で鷹を指差す。鷹の姿を見た真金は苦笑の色をいっそう濃くした。
「それでこの空気は何なんですか?」
「いや、これは気にせんでいい。いつものことだ」
「そうでしたか・・・?」
多少疑問が残ったがハッキリ断言する真金に追求する気にはなれなかった。
「そんなことよりちょっと面倒なことが起こってな・・・」
「面倒なこと?」
「ああ。月とアクセルが喧嘩してるらしい」
「たまにはいいんじゃないんですか? 喧嘩を一度もしない子供なんて不自然でしょう」
今までも幾度かアクセルは喧嘩している。大体アクセルが鷹に突っかかっていって機嫌悪いときの鷹にボコボコにのされている。
あれは喧嘩というよりどちらかというと体罰だったが。
「俺も喧嘩するのが悪いとは言ってない。如何せん喧嘩してる場所がな」
「どこで喧嘩してるんですか? まさか生活区ですか?」
「いや、地上だ」
「地上!?」
せめて、地下で喧嘩していてほしかった。
「しかもあいつらが喧嘩してるせいで天使まで集まってきてやがる」
「その喧嘩を止めてこいと?」
「あぁ、頼みたい。あいつらを平和的に止められんのなんてお前ぐらいだろ。鷹を行かせたらもっと酷くなりそうだ」
鷹は喧嘩を止める役ではなく、嬉々として喧嘩を煽りそうだ。もしくは乱入する。
真金の言葉を聞いた夕菜はあちゃー、と額に手を当てた。
「どうした?」
「ちょっと遅かったですかね。鷹さんはもう行っちゃいました」
「嘘・・・だろ?」
真金が祈りながら振り返るとさっきまで鷹が座っていた席には誰もいなかった。




