弐
次に鷹がいたのはさっきの廃墟同然のビルのエントランスではなく綺麗に掃除が行き届いた場所だった。
そこでは一人の少女が待ち受けていた。
優しい笑顔を浮かべる少女は純白のノースリーブのワンピースを着ている。
少女の肩には逆巻く炎のタトゥーが入っていてそれだけが少女の見た目で浮いていた。
「お疲れさまです。鷹さん、夕菜さん」
「ダウト」
慰労の言葉をかける少女に夕菜が否定の言葉をはいた。
「な、何がダウトなんですか?」
夕菜に突然ダウトと言われた少女は目を白黒させながら驚いている。
「前に言ったでしょう。私たちのことはお父さん、お母さんと呼ぶようにと」
「え!? あれって本気だったんですか!?」
「ていうかそんなこと言っとったんか・・・」
少女は驚きの声をあげ、鷹は嘆息する。
お父さんお母さんと呼べと言う夕菜の顔には無表情の奥に若干の母性が感じ取れた。
「え、え〜・・・。でも、そのぅ」
明らかに言いよどむ少女に夕菜は期待の眼差しを向けている。
たぶんこれはお父さんお母さんと呼ばない限り終わらないだろう。
それを理解した少女は意を決して声を出した。
「お疲れさまです。お父さんお母さん」
少女は頬を赤らめながらその言葉を発した。
「よく言えました」
夕菜は少女を抱き締めると、よしよしと少女の後ろ頭をなで始めた。
「はぁ、めんどい。俺は先に報告行ってくるわい」
「よ、鷹さん助けてください〜」
「めっ、お父さんでしょ」
二人の会話を見た鷹は数秒思案すると親指を上にたてた握り拳を少女に見せながら言う。
「ぐっとらっく」
そう言うと鷹は早足でその場を立ち去った。
鷹の後ろからは断末魔のような声が聞こえてきた気がしたが、無論無視した。




