拾肆
さっきと同じような手順で地下都市に戻るとそこにはムッツリと口を引き結んだ夕菜がいた。
「お前が出迎えてくれるなんて珍しいな」
「あなたに話したいことがありましたからね。無卯には遠慮してもらいました」
「俺にはてめぇと話したいことなんざねぇよ。報告せんといかんから退けよ」
鷹は突っかかってくる夕菜を避けようとしている。普段のようなてきとうな雰囲気はまとっておらず、抜き身の刀のような威圧感を放っていた。
普段つけている仮面が剥がれるぐらいには疲れているのだろう。
「何を苛立っているのですか?」
「てめぇにゃ関係の無いことだ」
「あれを使ったんですね」
鷹は軽く舌打ちをする。使ったらばれるだろうとは思っていた。
その程度には鷹と夕菜の力は近い。
「だとしたら何だってんだ。あれは俺の力だ。今まで迫害され続けても捨てられなかった俺の一側面だ。使いたいときに使う」
「別に使うなとは言いません。使わなければいけない状況も多々ありましょう。ですが、その場合は私に教えてください」
「何で逐一報告せにゃならんのだ。貴様は俺の何だ。親か? 恋人か?」
「同族です」
鷹の問いかけに一瞬の迷いすら見せずに言い切る夕菜。
「あなたの苦しみを分かち合える同族です。あなたの苦しみを理解できる同族です。あなたの罪を共に背負える同族です。だから、一人で抱え込まないでください。私は世界中が敵になろうと、世界が滅亡しようと、あなたと私のどちらかが息絶えようとあなたの味方ですから」
夕菜は閉じられた右目をまぶたの上からなぞりながら思い出す。
かつて自分がそんな誓いをしたことを。同族である鷹を認めた瞬間に。鷹が夕菜を守ってくれたあのときに。
その誓いを果たすために夕菜は鷹の傍にいるのだ。
だが、鷹はウザそうに手を振る。
「同族? ハッ、俺にそんなものはいない。俺は世界が滅ぶまで一人だ」
鷹は今度こそ夕菜を押し退けて出ていってしまった。
夕菜はその鷹の背中に痛ましげな視線を向けている。
「・・・頼ってくださいよ。あなたが私の心の支えなのですから。あなたがいない私に意味など無いのですから」
悲哀たっぷりの夕菜の嘆きは歩き去っていく鷹に届くことはなかった。




