拾弐
少し時間が経ち、場所は移り地上。太陽が沈みかけ、帰る頃には真っ暗闇に包まれることだろう。
そこにはさっきと寸分違わぬ格好の鷹と千波がいた。
「夕焼けってきれいですね・・・」
「なに現実逃避してんの?」
千波は生まれた瞬間からあの地下都市にいた。だから、頭上一杯に広がる青空を見たのも生まれて初めてのことだった。
それもこの状況でなければもう少し、感慨深いものがあっただろう。
あのあとの真金の言はこうだ。
「てめぇが連れてきたんだからてめぇで責任持て」
鷹はその言葉に渋々頷いた形だ。ちなみに、千波は自分から仕事がほしいと言った手前反対する権利はなかった。
さっきの言葉を発した千波の目に生気は宿っていない。明らかに生きるのを諦めた人間の目だ。
「だって私たち一般人にとって地上に出ることはイコールで死ですもん」
「大丈夫だって。俺がいる限り千波は死なないよ」
「・・・さっきから思ってたんですけどあなた何者なんですか? 地上にも詳しいみたいですし」
「ただの変な人だよ。ちょっと地上に出る機会が多いだけのね」
鷹はまたもはぐらかした。さすがに千波でも鷹が一般人でないことぐらいはすでに理解できている。
作戦区に顔パスで入れるだけで千波からしてみれば別次元の存在だ。千波には鷹という人間が全くつかめていなかった。
「それにしても着の身着のままで良かったんですか? 何か防具とか着けた方がよかったんじゃ・・・」
「いやいや。一般人が防具なんて着けたって何の意味もないよ。重いだけだ。一般人が地上で生き残るのに一番大事なのは機動力だからね。かと言って異能者も防具なんてつけないけど」
「そういうものなんですか」
「そういうものなんですよ」
二人の間にある空気は地上とは思えないほど軽い。
千波はもう諦めている節があるが、鷹は完全に自然体でいる。それが千波には不思議で仕方がない。
「確か誰か先行してたと思うんだけど・・・」
鷹は辺りをキョロキョロと見回しながら、耳をすます。真金の話では一人先行して天使とやりあってるらしい。
少し遠くから戦闘の音が聞こえる。
「あ、いたいた。行ってみますか」
「行きたくないですけど、もうどうにでもなれって話ですよね」
足取り軽く歩く鷹の後ろをため息混じりの千波が続く。




