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*第七話 恋心

“月馬ヶ丘高級ショップ―――”

昨今、若い子から人気上昇中の新感覚の店にして、デパ−トのように物は高くないけれどス―パ―なんかよりずっといい品揃えであると評判の女性向けの店である。その客層は大半を女子中高生から大学生までのハイティ―ンが中心で、ランジェリ―ショップなどのように彼氏などじゃなければ男は近寄ることは無い店だ。お蔭でぼくたち男子生徒諸君、同世代の男性から見ればこの店は未知なる世界であり“彼女連れのみ入ることの許される”憧れであった。

少し前、麻呂たちがこの店について話しているのを聞いたことがあった。

真倉によると、この高級店には、女性を除き、女子に免疫のある男子諸君しか寄り付かないため中は無防備に女性用用具などが取り揃えてあると言う。何処を探したとしても、男性が使うような物は見つからないんだそうだ。

そんな店の中にぼくのような初心で女性にあまり免疫が無い男子が彼女のような可愛い女性を連れて入っていいのだろうか?

ぼくは、彼女に訊ねてみたが、彼女は『大丈夫♪大丈夫♪』としか答えてくれなかった。

中に入ると、彼女はまず真っ直ぐとメインストリ−トらしき道進んだ。そして、突き当りで右折(ざっと辺りを見回してきたところ、とった道は全て化粧品売り場になっていた。)すると、そのまま直進し、突き当たりのところでやっと立ち止まった。

看板を見ると“服売り場・・・!!!”と明記されている。


嫌な予感がした。


気付いたとき、ぼくの目の前の籠の中には大量の服が山済みにされていた。

『これ、全部下さい♪』

『かしこまりました』

ぼくは絶句し、唖然と彼女を見つけた。ふと、一番上にあるシャツを手に取り値札を確認する。

5000円―――。いくらここが安くともこれだけあれば軽く十万は超えるような気がした。

しかし、彼女は普通にキャッシュでそれを支払い、ぼくに荷物を全て持たせ、その店を出て行った。ぼくの両脇には三つもの大きな紙袋が提げられていた。

それから、ぼくたち―――いや、真衣さんは暫く買い物し、ぼくは両脇に五つもの大きな紙袋を提げる破目になってしまった。彼女は四件目か五件目が終わった後、ぼくをベンチのほうへ呼び寄せるとぼくに『お礼♪』と言ってアイスを渡した。

やっぱり、これはただの走りなのか。とぼくは少しがっかりし、渡されたアイスを頬張った。

『ん・・・!?美味い』

市販のアイスだったが、流石労働した後だけあって、その冷たさが妙に美味しく感じられる。

ぼくは、『は〜』と息を吐き、真衣さんのほうを見た。

容姿端麗。まさしくその言葉が相応しい。買い物中も数々の男が彼女に目を奪われていた。

『真衣さん、』意を決してぼくは訊ねる。『今日はぼくは何のために呼ばれたんですか?』

『あれ、嫌だった?可笑しいな。皆私と買い物に行きたがるんだけど・・・』彼女は困ったように首を傾げた。『私って君にとってそんなに魅力ない?』

そんなわけじゃない。唯―――

『あれれ?どうしたの?夾くん?』

『なんでもありません。』

やっぱりいい。彼女に言うのが煩わしくなり、止めた。

『またまた〜。ん?』彼女の視線の先をぼくは追った。『あれれ?あの五人は、確か同じクラスの・・・』

『大友、小手川、簗瀬(やなせ)、桃太、麻呂。』

『そうそう♪』彼女はそう笑うと立ち上がって手を振った。『桃太郎君♪やっほ―』

『桃太だよ・・・』

ぼくは苦笑いした。


『あれ?真衣さんと新堂じゃん?どうしたの。』お転婆三人娘のリーダー格、簗瀬が尋ねた。

『別に。ぼくは真衣さんに・・・・』真衣さんを横目で見ていたら、突然彼女は抱きつき、ぼくの言葉は遮られた。『えへへ♪デェトだよ〜』

『!?』

四つの瞳から殺意を感じる。ぼくは、そこから隠れるように真衣さんの後ろによった。

『へ〜♪やっぱり新堂と真衣さんってそういう仲だったんだ。』

『ち、ちげぇよ。』

『アハハ、照れちゃってる♪新堂って可愛いトコあんのね』小手川がぼくの鼻を突いた。『そうだ。これからカラオケ行かない?こいつらだけじゃ物足りないからさ・・・』

見ると、麻呂と桃太もぼくと同じ様に紙袋をもたされている。相当連れまわされたんだな、と笑ってしまった。

『いいけど、真衣さんは?』

『私は勿論いくよ♪』と続けて彼女はぼくの耳元で呟いた。『キミの医師なんだからさ♪ある程度キミについていくから。もう二十歳だから親は実家だしね。』

『よし、じゃ決定♪』

彼女達の後ろで少しだけ桃太と麻呂が拳を握った。


プルルルルルル、プルルルルルルル

電話の規則的なコール音が鳴り響く。藤沢秋は電話を取った。

『はい、藤沢薬局ですが。』

『あ?秋ちゃん?』ゆっくりと聞きなれた声が秋の耳に響いた

『その呼び方は止めろよ。真衣』

『あのね。』彼女は少しも躊躇せず、秋に言った。『私ね。夾くんが欲しくなっちゃった。』

*第七話 ショッピングでしたが、もっとカッコイイ名前にしようと思って思考錯誤(←あってるかな・・・)した結果、この題名になりました。

あと、秋目線とぼく目線で表現が若干変わってますがそのところはあまり突っ込まないで下さい。。。

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