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*第六話 ナイフ

午前、九時五十七分“砂嘴川駅”―――北口ロ―タリ―、大時計台前

昨日の夜、ぼくは真衣さんに携帯で呼び出しを受けここにいる。この約束の為に、今日は朝から友達に連絡し全ての予定をキャンセルした。

『遅い・・・・』

せっかちなぼくは、十分以上遅れるとイライラしてくる。昨日、真衣さんはなんと言ってきただろうか?一応、もう一度メ―ルを読み直してみた。『九時四十分に砂嘴川の北口、時計台前に集合ね。拒否権は無いから。お金だけ持ってきてね。^^』

『やっぱり、九時四十分だよな?』

ぼくは、辺りを見回してみた。

知らないヒトが沢山あるいていた。

殆どが二人組のカップルで、自分だけ取り残されたような気がする。

孤独。世間がぼくを嘲笑っているようで、ぼくを虐げているようで

視線が全て自分に注がれているようで、ぼくは思わず眼を閉じた。

辺りが真っ暗になった。

不意に叫び声を上げそうになってしゃがみ込む。耳を塞いだ。

呼吸が荒くなった。

ポケットを弄る。ナイフを掴み、必死に落ち着こうとした。


『タスケテタスケテタスケテ』

手が汗ばみ、眼の奥で大量の水が見えた。


もう一度、ナイフをぎゅっと握り締め、落ち着こうとした。

(おちつけ。ぼく・・・・)

心の中でゆっくりと、唱える。ナイフをギュッと握り締めたから手がますます汗ばんだ。

(落ち着け。落ち着くんだ。もう・・・あいつは・・・)

また、叫びだしそうになったとき、誰かに背中を叩かれた。

あまりに吃驚してぼくは思わず叫び声(悲鳴を)上げそうになったがその人はぼくの口を塞ぎ、ぼくを抱き寄せた。

『大丈夫?夾くん?』

見上げた場所にいたのは真衣さんだった―――。


『遅いですよ。真衣さん。』ぼくはゼェゼェ声で呟いた。

『仕方ないじゃん。いろいろあったんだから。』真衣さんはニコッと笑う。風に煽られて短いスカ−トが舞った。『それより、夾くん以外と重症みたいね。』

『ええ。』吐き気を抑え、掠れた声で呟く。『でも、いつものことですから。今日は真衣さんがいてくれて助かりました』

そう。いつものことだ。大抵予測できない状況に一人で置かれると叫びだしてしまい、その場に倒れこむ。一番酷かったのは去年の秋、この場所で倒れて救急車が駆けつけて十日間ぐらい入院した。そのときは流石に皆に怪しまれ精密検査を受けたが、適当に言い訳して回避した覚えがある。そのときにナイフも没収され、今もっているのは二代目だった。

『いつも?じゃぁ、一人でいるときはどうするの?』真衣さんが訊ねた。

『計画通り予定が進めば大丈夫なんです。だから―――』

『だから?』

『・・・友達と遊ぶときは十分から二十分の誤差があるものとして行動します。それ以上こない場合大抵家に帰っちゃうんです。』

『じゃぁ、今日は私が約束の時間に遅れたのが悪いわけ?』

『そうなりますね。』

『ごめんね。』そして、ぼくに聞こえないように呟いた。『こりゃぁ、願望屋(あいつ)が思っている以上に厄介なクライエントだね・・・』

**************************

神楽坂ショッピングモ―ルは、早くも二十一世紀代最大と呼び名の高い超大ショッピングモ―ルだときいたことがある。その敷地面積は裕に73へクタ―ルを超え、“ネット時代”と呼ばれるこれからの世界に希望の兆しを灯したとか世界中にその名を轟かしたとかいわれているそうだ。(ぼくは、この手の話には疎いので確かかどうかは知らないが)その客の動員数は一日のべ約5万人。休日になると少なくとも3倍から15倍、夏休みなどはそれの更に2倍から3倍の客足を動員し、日本の経済を潤す。

ぼくたちは、日本の経済を潤すべく(表現が間違ってるかもしれないが)そのショッピングモ―ルに出向いた。

『やけに人数が多いね・・・・』真衣さんが呟いた。

このヒトは田舎の人だろうか?神楽坂のこのショッピングモ―ルがこれくらい混むのは当然のことで、今日は少ないぐらいな気がする。少なくとも、去年の開店一年目のGWの頃は、これの十倍ぐらい人がいて、イベントも何も無いのに、10M行動するのにかなりの時間を要したものだ。そえれが何分だとはあえて触れないが。

『真衣さんは何処に住んでるんです?』

『ん?私の私生活が気になる?』真衣さんは微笑を浮かべた。『秘密だよ♪あっ、それと私のことは真衣って呼んでね』

『え〜教えてくださいよ』

こんな他愛の無い会話をしながらぼくらは進む。途中、同じクラスのヤンチャ娘、“大友、小手川、簗瀬(やなせ)”の三人を見かけたが、大勢の人ごみに紛れすぐに見えなくなった。

“月馬ヶ丘高級ショップ・神楽坂店”の看板の前で真衣さんは立ち止まった。

『ここで買い物するんですか?』ぼくは驚いて真衣さんを見上げた。彼女はシニカルにぼくに微笑を浮かべた。『そうよ。』

ぼくの手をとり、彼女は店の中へ入った。


*第六話 ナイフは、思いつかなかったのでとりあえずつけてみました。

でも意外とあっているような気もします。

お知らせ・この第六話の更新の再、第参話 願望ファイル第十八項目に(確かですが)些細な文を追加させていただきました。物語にはさして影響が無いかもしれませんが、念の為連絡しておきます。



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