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*第四話 真衣 


秋は悩んでいた。

あいつに、相談すべきかどうか。

あいつを彼の元に派遣すべきかどうか。

彼の精神を壊してしまうのではないか。

彼の世界を変えてしまうのではないか。

いや、いいのかもしれない。

ふと、自分の奥底にある破壊願望が剥き出しになったことに気付いた。

彼が壊れたところを見てみたいような気がした――。

秋は電話帳に手を伸ばす。そして、受話器を握ると規則正しくゆっくりと番号をプッシュした。


翌日。

学校に着くと、騒がしい声が聞こえた。

どうやら、クラス一五月蝿い少女と名高い“真倉”と、クラス一のヤンチャ坊主“麻呂”らが話してるようだった。ぼくは、“野次馬”のような顔をして麻呂の後ろからその集団を覗いた。

『おお、夾か。今日転校生が来るらしいぜ』麻呂の隣にいた歩くレポ―タ―。拡声器こと茂信が言った。続けて『しかもそいつ美少女らしいぜ。』と麻呂が付け加えた。

『マジ?』

とりあえず聞いてみたものの、転校生が来ようが来まいが自分とは無関係な気がしてそれ以上訊ねなかった。が、話すことを生きがいとしている彼はこっちの気など考えもしないで更に続けた。

『マジマジ。しかもそいつ俺等と同じ北四住民らしいぜ。』

北四とは北野四丁目のことである。

ぼくと同じ北四住民である桃太がおぉぉぉぉ、と歓声を上げた。

『でもさ。』目の前にいた真倉が疑わしそうな目つきでぼくの顔を覗いた。机の上に足を乗っけていて、見たくも無いパンツが見えそうだ。ぼくは思わず顔を背けた。『私は―――せんせに貧乏な女の子だって聞いたよ?』

『はぁ?』男たちがハモッた。『なわけネェじゃん。きっと清楚な顔立ちで髪型はツインテ―ル。お嬢様みたいなヒトだよ。きっと』

麻呂は何処かを見つめていた。

『馬鹿じゃん?今時ツインテ―ルなんているわけないじゃん。漫画じゃあるまいし。』

麻呂はそれでも何か言いたそうだったがチャイムが鳴ったので、それ以上何も言わず席に着いた。


『起立、礼、着席』

いつも通りの挨拶。生徒一同は『おはようございます』と先生に頭を下げる。但し、今日はいつもより皆威勢がよいようだった。

転校生効果だろうか?

辺りを見回すと男の過半数の目が笑っていた。対する女はそうでもないようだったが、大半はどんな転校生が来るか楽しみにしているようだ。

『それでは―――えぇ〜、皆さんももう知っているかもしれませんが、転校生を紹介します。転校生、入って。』

ガラッ


『かわいいいいいいいい〜』

女子たちや麻呂が叫びだした。過半数の男子生徒も彼女に釘付けになっていた。

『真衣です。宜しく』

背はそれほど高くない。顔は小柄で髪の毛は長めのストレ−ト。あんまりわからないけれどスタイルはなかなかよい。あまり知らないぼくから見ても彼女は素直に可愛いと思った。

『じゃぁ、真衣君。壁際の麻呂君の後ろに座って。』

麻呂が待ってました。とばかりに手を上げた。ここです。真衣さん!という自己アピ―ルのつもりだろう。が、彼女はぼくのほうへ向かってきた。

『?』

皆は首を傾げる。当然ぼくも首を傾げてしまった。しかし、彼女はぼくの前で止まると快活な笑みを浮かべた。

『貴方が夾くんね。宜しく。』

彼女がぼくに手を差し伸べた。ぼくは、どうも。と言って彼女の手を握った。

皆、目を丸くした。先生が手を叩き、授業を始めますよ。と言ったが誰も聞いてはいなかった。

ぼくは唖然として席に戻る彼女を見つめていた。


*第四話 転校生でしたが、普通過ぎるので変えました 

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