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*第二十話(後) フラッシュバック


死ね。失せろ。消えちまえ。


――――ここは暗い奥底。誰もいなくて真っ暗な場所。

淋しくて。悲しくて。孤独で。恨みたくて。恨めなくて。憎しんでいた。

あるじを。新堂夾を。

与えられた名もない自分。気付いたとき、“僕”は、“新堂夾”という心の奥底にいた。

“第二の人格”として、作られた後その出来損ない残骸に“恐れ”という感情を背負わされ僕は彼の心の奥底に埋められた。

僕は彼を知らない。けれども彼は僕自身であるのだ。

自分を捜し求めやっと自分自身にたどり着いた先、―――自分のアイデンティティを見つけた後、幾度声を張り上げようが、何度彼の名前を呼ぼうが、何度彼に尽くそうが、自分という存在が自分自身に気付かれないことがどれだけ淋しかったか孤独だったか彼にわかるはずもないだろう

いつしか淋しさは、その孤独は憎しみへと変貌を遂げていたのに僕は気付く。

『もう、うんざりだよ・・・・・・』

               *        

『ぼくの恐怖を背負った二重人格・・・・・?』

何を言っているんだろうか?この男は。

『そうだよ。』彼は言った。『僕は名もなき二重人格。作られた挙句、恐怖という感情を背負わされて抹消された、ね。』

懐かしい感じはそのため。

触れることは容易くとも躊躇してしまうのはそのため。

『俺はお前なんて知らない。』ぼくは強く言った。『お前なんて知らない。』

そうだ。ぼくはこんなやつ知らない。

これは夢だ。質の悪い夢。

眼が覚めたら嗚呼怖かったってことで終わるだろう。

それまでの辛抱だ・・・・・・。

『知らない?そんなはずないよ?』彼はぼくの眼を見ていう。『君は―――新堂夾という名の君は確かに僕を生み出した。必要とした。』

『ない!ない!そんなことなんてない!ありえない。』僕は強く言った。『大体、“仮に”二重人格であるきみをぼくが生み出したとして、“ぼくがきみの存在を知らないこと”が何故問題になるんだ。』

『君は僕を生み出した後、僕の存在を消した。無責任にも。君はぼくの存在を知っていたんだ。そして、意図的に抹消した。だから僕は名前さえわからないままだ。』

『仮に、君が言っている仮説が正く、ぼくがきみを“無責任にも名前さえ与えずに消したなら、抹消したなら、何故きみが生き残っている?』

『君の奥底に深層心理に、いたからだよ。』

『なら、何故記憶が・・・・』

不意に何かが―――ぼくの脳裏をよぎった。


『なら、見せてあげるよ。君が“僕”という存在を生み出した瞬間をね。』


ぼくの体は薄っすらと消えてゆく。

次第に世界が歪み、荒れ果てた荒涼は川へと森へと橋へと形を変える。

『ああああああああああああああああああああ――――――』

記憶が、記憶が―――フラッシュバックした。

次話は、過ぎ去りし過去の傷跡。へ

尚、今回・願望ファイルと覚悟の一部分を変更させていただきました。

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