*第十八話 発見
ぼくは、泣いていた―――。
誰も居ない神社の石段で。
真衣さんを追いかけたつもりなのに・・・
自分が何をしているのか全く理解できない。
もう自分が自分でわからなかった。
あの問いかけてきた自分は何なのだろうか?
ぼくは誰?え?新堂夾?そうだっただろうか?
何かが狂い、狂い狂う
気分が悪かった。何故ぼくはここにいるのだろう?
ぼくは何をしているのだろう?
狂っていく。何がなんだかわからない
叫びだしたくなる
『ぅぅう・・・ぅうぅ』涙まみれでぐしょぬれになった顔。止まらない涙。鼻水。『ぼくは一体何がしたいんだろ?』
真衣さんを追いかけたのは真衣さんが心配だったから?
いや、違う。
ぼくがあの場で真衣さんを追いかけたのはあの場から立ち去りたかっただけだ。恐ろしかっただけだ。
何故?ぼくは孤独がいやなはずなのに・・・・
逃げ出したのは何故だろうか?
もう、その症状は治ったんだろうか?
『違う・・・よな』
あの願望屋の“トラウマ”の話。あれを聞くのが恐ろしかったから?
あの話を聞いたときに不意に想起した“大量の水”あれが原因なんだろうか?
問いかけてきた自分に何か関係あるのだろうか?
自問自答するが、答えは見つからない。
自分で見つけることはできないし
誰も答えてはくれない。
あたりまえ・・・か
『誰も、助けてはくれない・・・・。ぼくは・・・・一人・・・・・』ひと言呟く。『“人によって人は救われない”・・・元々願望屋に頼ったぼくが馬鹿だったのかもしれないな・・・』
人によっては人は救われない。
もし、自分で解決できぬほどの悩みを抱えたら、悩みを解決できるようになるまで待つしかないのだ。これがぼくの出した結論だった。
『夾くん―――!!!』また、涙が溢れそうになって俯いたとき、誰かの声が聞こえた。『大丈夫?』
顔をあげると目の前には真衣さんがいた。体中ビショビショに濡れている。ぼくは嬉しかったのに思わず、『なんでここに?』と訊ねてしまった。
『君を探してたの・・・・』彼女は答えた。『何かの力になれればって思って』
『そうですか。でも―――もういいんです。力にならなくて』
何言ってるのだろう?ぼくは。
『え?』
『もういいんです。気付いちゃったんです。“人によって人は救われない”。人は常に一人で生きてるものだって。自分で如何にかしなければならないって。自分でできなかったらできるまで時を待つ。それでもできなかったら諦める!自分以外は誰も自分が求めたいものに気付くことはできないのだから。人に頼るという概念自体が間違っている、という事実に。』
『そうかもしれないけどね』優しい声だった。『少なくともさ。私は違うと思うよ。人は一人では生きていけない。一人で生きていけるほど道筋がはっきりしていて強い人は殆ど居ない。支えあって生きてる。わからにところ、求めたいものがあったら人に訊ねてそれを解決して―――或いは明確にしてもらう。逆に訊ねられたら明確にしてあげたり、解決に導いてあげたりする。私たちは“解決に導いて上げる専門職”いわば案内人。正しい道筋に誘導してあげる役目なんだよ。勿論、実際にその希望を、求めたいものを、解決策を模索して見つけ出すのは夾くんだけど、どっちに行けばいいか迷ったときや悩んだときアドバイスしたり注意してあげるのが私たちなの。だからね。夾くん。一人だなんて思わないでよ・・・・』
彼女の眼から涙が出ていることにぼくは気付く。雨で少しわかりにくいけれど、紛れもなくそれは涙だった。
『真衣さんは・・・・・なんで、なんで―――そんなにぼくのために必死になれるんですか?他人のことなのに。』
『君と私が似てるからよ。』彼女はぼくに言った。『君と過去の私は境遇は違うけど凄く似てるから。ほっとけないの・・・』
『・・・・・・』
何故かわからなかったけれど、心が軽くなった、気がして、ぼくは倒れた
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『そうですか。はい・・・はい・・ありがとうございます・・・』藤沢秋は受話器を下ろした。ボ―ルペンで紙に文字を書き加える。
【drowning accident―――水難事故―――】
★遂に、次号最終場面へ・・・
少し短い?のかな・・・?
兎にも角にも、もう後数話で完結、
頑張ります!