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*第十七話 捜索

何処にいるのだろう?彼は。

ザァザァ降る雨に打たれながら町をぐるりと一周回ったのに一向に彼が見つからない現状に私は絶望感を抱く。

『見つかった?』

秋が願望屋から出てきて、私に尋ねた。わたしは、ううんを首を振る。

『全然。通りの人にも聞いてみたけど見てないって。』

こういうときに不謹慎だけど、私は一瞬、なんだか、このまま秋を見ていたい気がした。珍しく願望屋に閉じこもっていない藤沢秋を。

『雨なのに・・・・・ね。』秋は呟いた。『大丈夫かな?』

『え?』

『平気かな?』

珍しく彼は弱気だった。

『そんなのわかんないよ。』私は言った。『でもさ、彼は私を探しにいったんだったら、私は責任もって探す。』

『ぼくもだよ。一応、追い払ったのはぼくだし・・・幾ら彼がきちんとしてるって言っても、彼は中学生だし、あの症状は立派な障害だもん。もしかしたら、どこかで叫んでるかもしれないからね・・・・』

『中学生・・・・・か。』

言いつつ、私は気付く。また、秋も十五歳の子供なのだ。世間を少し知っているけれど、精神的にはまだ未熟な無垢な少年。

『よし』彼は少し考えると、言った。『真衣はさ、砂嘴川駅前近くのネットカフェとか喫茶店とか探してみて。ぼくはさ親とか医療機関とか当たってみる。』

秋は願望屋に戻り、私は一人になった。

そういえば、夾くんは一人でいて予想外に出来事が起こると叫びだすとかいっていたっけ?

どんな気分なのだろう?

悲しいのだろうか?淋しいのだろうか?

でも、もし、彼が今その状況にあるにしても、私のとった行動は――新堂夾を追い払った行為は――間違ってなかったと思う。

多分、彼にあの事実を言ってしまっていたら、彼は―――

『でも、言わなきゃいけないのかな?この依頼に終止符を打つには・・・・』

正直言ってもう暫く言いたくなかった。“セラピスト”として、“経験者”として。

もう少し、スパンをおいて、彼の精神を安定させてからのほうが良い気がしたからだ。

『辛いや・・・・』私は呟く。

でも、誓ったように

私は、彼のため

そして、過去の自分のために

秋と出会う前の自分のために

私は彼を助ける。

私は、髪を掻き揚げた。『絶対、その世界から救いだしてあげるからね。』

************************

自分に問いかけてみる


―――ぼくは誰だかわかる?

彼に僕の声は聞こえない。


何度問いかけても。何度訊ねても


新堂夾には、

主には

僕の声が聞こえないのだ。


世間に問いかける


誰も答えてはくれない


何故なのだろう?


不幸な境遇。芽生えるべきでなかったのに芽生えてしまった僕という人格


僕が生まれたのはいつのことだっただろう?


誰も知らない。何も知らない。僕を生み出した本人でさえ僕の出生は愚か存在さえ忘れてしまっている。

知りたかった。


何故こんなにも僕が不幸なのか?


知りたかったけれど・・・・


もう、うんざりだ

もう終わらせたい――――

★嫉妬する、“ぼく”のふたつめの感情、“僕”・・・・

*第壱話 日常に始まり、サブタイトルをできるだけに文字にしようと一新してみました。

また、第十三話接吻より、第十七話捜索までかなりの数の矛盾点を発見しましたので修正しました。まことに申し訳ありませんでした

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