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*第十六話 相似

ここは何処だろう?

コポコポコポコポ・・・

コポコポコポコポ・・・

真っ暗だった。

見たこの無い世界。何だか不安になった。


世界が急に見開いた―――


そこは荒れ果てた荒涼地帯だった。

砂嵐が目の前に降り注ぎ青と黒の線が横に走った。


ぼくは、やっとこれが夢だと悟った。


でも、いつものように、白い文字は見えなかった。

ぼくの前に黒い影が現れた。

『ぼくは誰?』影は唐突にぼくに話しかけた。『ぼくは誰?』

『・・・・』

『何故答えてくれないの?』

『ぼくは君―――新堂夾。』影は尚も続けた。『君の事は何でも知ってる。君は?』

何を言っているのだろうか?

『・・・・・』

『答えてよ。わからないの?ぼくにはわかるよ。君が何を考えているか。ぼくは誰なんだろう?生きてる価値はあるのだろうか?人生とはなんだろうか?』影は笑った。『ぼくは君だけど君はぼくじゃない。矛盾。可笑しいとは思わない?』

独り言のように彼は呟く。

『ぼくは君と一心同体。表裏一体。ぼくから見れば。でも、君から見れば赤の他人。』

わかる?、彼はぼくに尋ねた。

『君は僕のことを知ろうともしない。それどころかぼくの存在さえ知ってくれない。ぼくはもうウンザリなんだ。』

『・・・・・』

『ぼくは君のことは何でもわかる。君のしていること、感情、毛の数まで何でも。だから、君を殺すことだって容易いし、成長させることだって同じく容易い。』

『君は誰?』

『ほら、ヒトに聞こうとする。やっぱりもうぼくはウンザリだ。』

ぼくは訊ねた。『じゃぁここは何処?』

『ここは君の心の中。“墓場”“荒涼”あああ、もううんざりだ。君がぼくを知らないのに、ぼくは存在したくない。君の事なんて知りたくない。』影は言った。『もう終わらせてもいいかい?』

『え―――』

風が起きた。影は、それに飲み込まれ、ぼくの目の前は真っ黒になった。

*****************************

『真衣――――・・真衣――――・・・』

誰かの声が聞こえる。誰だろうと私は眼を開けた。

『どうした?』眼を開けるとそこには秋がいた。『大丈夫か?』

『ええ。大丈夫よ』

そうだ。私はここにいる―――。何故だか安心した。

『全く。急に倒れて。どうしたの?』

『別に。』私は答えた。『それよりね。秋。私と夾くんって似通った点があるように思うの』

『似通った点?』

『ええ。例えば―――』私は、秋の書棚のほうへ向かった。そして、洋書の医学書を取り出す。『“Dissociative Identity Disorder”――解離性同一性障害とかね』

『二重人格があるふうには見えなかったけど』

『私もそうだったでしょ?確証は無いけどね。でも――』私は言葉を繋いだ。『リスカをしてる時点で私とも似てるし・・・』

『気付いたの?夾くん見せないように隠してたのに。』

『わかるわよ。私もそうだったし、一応これでもセラピストなんだから。ある程度観察していればわかるわ。あと―――ひとを信用してないところ。恐らく過去に何らかの経験トラウマがあるんだと思うわ』

『でも、それは忘れていると考えていいよ』

『え?』

『僕も訊ねたんだ。でも、彼は答えてくれなかった。』秋は笑った。『最もそれは彼が言いたくない過去だった可能性もあるけどね。』

『どちらにせよ』私は洋書を持って秋の横に座った。『私と似通っている。ううん。“完璧なる相似”の新堂夾くんは私よりも手強い―――性質たちの悪い病にかかっていることだけは確かね・・・』

『・・・・で?セラピストさんには見つかったのかな?彼の処方箋』

『ええ。』私は頷く。『でも、とりあえず彼を見つけるのが先決よ。』

私は立ち上がると、雨の降る外へと出た。

この話のサブタイトル

“リンク”、“相似”、“うんざり”

の三つで悩みましたが、最終的に相似に落ち着きました。あと、十五話と最初のシ―ンは繋がっておりません。最後と同一時間軸です。

また、あと、五・六話で完結予定。最後は予想外?いや、予想内?のクライマックスが待っています。宜しくお願いします。

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