*第十六話 相似
ここは何処だろう?
コポコポコポコポ・・・
コポコポコポコポ・・・
真っ暗だった。
見たこの無い世界。何だか不安になった。
世界が急に見開いた―――
そこは荒れ果てた荒涼地帯だった。
砂嵐が目の前に降り注ぎ青と黒の線が横に走った。
ぼくは、やっとこれが夢だと悟った。
でも、いつものように、白い文字は見えなかった。
ぼくの前に黒い影が現れた。
『ぼくは誰?』影は唐突にぼくに話しかけた。『ぼくは誰?』
『・・・・』
『何故答えてくれないの?』
『ぼくは君―――新堂夾。』影は尚も続けた。『君の事は何でも知ってる。君は?』
何を言っているのだろうか?
『・・・・・』
『答えてよ。わからないの?ぼくにはわかるよ。君が何を考えているか。ぼくは誰なんだろう?生きてる価値はあるのだろうか?人生とはなんだろうか?』影は笑った。『ぼくは君だけど君はぼくじゃない。矛盾。可笑しいとは思わない?』
独り言のように彼は呟く。
『ぼくは君と一心同体。表裏一体。ぼくから見れば。でも、君から見れば赤の他人。』
わかる?、彼はぼくに尋ねた。
『君は僕のことを知ろうともしない。それどころかぼくの存在さえ知ってくれない。ぼくはもうウンザリなんだ。』
『・・・・・』
『ぼくは君のことは何でもわかる。君のしていること、感情、毛の数まで何でも。だから、君を殺すことだって容易いし、成長させることだって同じく容易い。』
『君は誰?』
『ほら、ヒトに聞こうとする。やっぱりもうぼくはウンザリだ。』
ぼくは訊ねた。『じゃぁここは何処?』
『ここは君の心の中。“墓場”“荒涼”あああ、もううんざりだ。君がぼくを知らないのに、ぼくは存在したくない。君の事なんて知りたくない。』影は言った。『もう終わらせてもいいかい?』
『え―――』
風が起きた。影は、それに飲み込まれ、ぼくの目の前は真っ黒になった。
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『真衣――――・・真衣――――・・・』
誰かの声が聞こえる。誰だろうと私は眼を開けた。
『どうした?』眼を開けるとそこには秋がいた。『大丈夫か?』
『ええ。大丈夫よ』
そうだ。私はここにいる―――。何故だか安心した。
『全く。急に倒れて。どうしたの?』
『別に。』私は答えた。『それよりね。秋。私と夾くんって似通った点があるように思うの』
『似通った点?』
『ええ。例えば―――』私は、秋の書棚のほうへ向かった。そして、洋書の医学書を取り出す。『“Dissociative Identity Disorder”――解離性同一性障害とかね』
『二重人格があるふうには見えなかったけど』
『私もそうだったでしょ?確証は無いけどね。でも――』私は言葉を繋いだ。『リスカをしてる時点で私とも似てるし・・・』
『気付いたの?夾くん見せないように隠してたのに。』
『わかるわよ。私もそうだったし、一応これでもセラピストなんだから。ある程度観察していればわかるわ。あと―――ひとを信用してないところ。恐らく過去に何らかの経験があるんだと思うわ』
『でも、それは忘れていると考えていいよ』
『え?』
『僕も訊ねたんだ。でも、彼は答えてくれなかった。』秋は笑った。『最もそれは彼が言いたくない過去だった可能性もあるけどね。』
『どちらにせよ』私は洋書を持って秋の横に座った。『私と似通っている。ううん。“完璧なる相似”の新堂夾くんは私よりも手強い―――性質の悪い病にかかっていることだけは確かね・・・』
『・・・・で?セラピストさんには見つかったのかな?彼の処方箋』
『ええ。』私は頷く。『でも、とりあえず彼を見つけるのが先決よ。』
私は立ち上がると、雨の降る外へと出た。
この話のサブタイトル
“リンク”、“相似”、“うんざり”
の三つで悩みましたが、最終的に相似に落ち着きました。あと、十五話と最初のシ―ンは繋がっておりません。最後と同一時間軸です。
また、あと、五・六話で完結予定。最後は予想外?いや、予想内?のクライマックスが待っています。宜しくお願いします。




