*第十一話 許せない!!!
今回より蓮宮ヨイチ、改めまして蓮宮志奈多です。
よろしくお願いします
真衣と言う名はお父さんがつけた名前だ。
私を生んですぐ母は死に、孤独だった私に少しでも幸福が訪れるように、人への思いやりが厚く、誠実で奉仕が良くでき、より幸福な子に育つように願いを込めて父がつけてくれた。
そんな父も私が三歳のときに交通事故で他界した。
身内が殆どいなかった私は孤児院に入れられた。
幼稚園、小学校では汚い、臭いと虐められ、進学した中学校でも私は机に落書き・物を隠す・リンチなどの虐めを受け不登校になった。それからまもなく私に反抗期が訪れ、元々孤児院でも孤独なほうだった私からは友達が消え、誰からも相手にされなくなった。私は何故か無性にイラついて髪を染めたり、耳に大きなピアス穴を開けたり、煙草を吸ったり万引きしたり援交したりした。そのうちに高校生ぐらいの年になって素行も悪かった私は孤児院を追い出された。
『私は孤独だ。』
その頃は丁度思春期で色々悩んだりした。
心に空白があることには気づいていたけれどその心の空白は産まれてからずっと白い場所。
そこが白いことに慣れっこで、別段気にしなかった。
だから、孤児院を追い出されても私の孤独は変わらなかったし、生活も変わらなかった。
そんなときだった。私は出会い系で知り合った男のヒトから紹介を受け“願望屋”の扉を叩いた。
『ようこそ。願望屋へ』
彼は初対面な私を温かく迎えてくれた―――
私は何故か涙が止まらず、その場に泣き崩れた。
温かかった。彼は火傷しそうなくらい温かなヒトだった。
初めて自分を認めてくれるヒトと触れ合ったような感じがした。“秋”に会ったとき、驚きを隠せなかったのは今でも鮮明に記憶している。きっとそれは、彼が余りに幼かっただけではなく、彼が認めてくれただけでなく、何か彼から不思議な力が感じられたからなんだと思う。
それから、私は自分がどれだけ辛かった人生を歩んでいたのか知ることになった。
だから―――
私は一瞬眼を閉じ、一呼吸を置いた。
『私はあんた達のようなやつが許せない!!!!!!』
彼のため―――
いや昔の自分に―――
秋と会う前の自分に―――
言い聞かせるように―――
私は言った。
たとえ嘲笑されても大声で笑われても構わないって思った。
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同時刻 願望屋
『久しぶりだね。そろそろ来ることだと思っていたよ。夾くん♪』
『え?』ぼくは思わず訊ね返した
『そんな驚くこと無いだろう?運命は必然にせよ、偶然にせよ君が来ることは予測ぐらいできる。』彼は続けた。『まぁ、学校の時間なのにそんな慌ててるところを見るとそれどころじゃないようだね』
『えぇ。願望屋さん』ぼくは苦笑いを浮かべた。『どうやらカラオケで発狂したのがまずかったみたいで皆口を利いてくれないみたいなんですよ。』
『どうだい?虐められれるっていうを経験してみて』彼はクスリと笑った。
『正直。参りましたね。まさかぼくの望んでいたことがこんな現実だったなんて思いもよりませんでした。』
『だから、』彼は声の音量を少し上げた。『言ったでしょ?君の悩みは贅沢すぎる・って。』
『ええ。その通りでした。』ぼくは肩を落とした。『でも―――、ぼくは依頼したはずですよ。こっちの意味で平凡脱却は嫌です。って』
『まぁ、そう慌てないで。スマイル。スマイル。』
『でも―――、』彼はぼくの口を人差し指で塞ぐとウインクした。
『ちっちっち。ちゃんとぼくの策通りシナリオは進んでいるんだから。』そして、大声で言う。『君の願望の正体を見つけたよ!夾くん♪』
当初、*第十一話の題名は過去(または出会い)という題名にして真衣ちゃんだけを綴るつもりでしたが、
どうも書きにくかったので変更いたしました。