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*第十話 僕の望んでいたはずの願望

プルルルル プルルルルルルルルルル・・・

秋の携帯が鳴り響く。

『はい。藤沢薬局ですが』

『秋チャン?私だよ―――』彼女はいつもより悲しい声で言った。

『なんだ、真衣か。どうした?』

『あのね―――』


こんな形で願望が叶ってしまった今となってやっと言えることだが、“平凡”のときのほうが幸せだった。願望屋“藤沢秋”の言うとおり、ぼくは贅沢だったらしい―――。

その日、桃太は来なかった。シャワ―を浴び、いつものように家で待っていたが、外には誰もおらず、“きっとぼくが今日から登校するのを知らないのだろう。”と勝手に決めつけ、ぼくは一人で登校した。

不思議とその日はあの感情が――――葛藤がこみ上げてこなかった。

校門をくぐるといつもそこそこ仲の良いクラスメイトに会い“おはよ!”と声をかけたが、彼は苦笑いを浮かべ“お・・・おう”としか、答えてくれなかった。ぼくが“どうしたの?”と声をかけると彼は黙り込んでしまったため、気分でも悪いのかと彼を抜かして、教室へ向かった。

悪夢はそこからだった―――。

ガラッ、

教室のドアを開けると、皆は一斉にぼくのほうを振り向いた。

『やぁ、おはよう。』

誰も反応はしない。仕方が無く、ぼくは席に着いた。

ビチャ―――え?

腰を上げると、水風船が割れていた。

周りがクスクスと笑う。


『キモい。死んじゃえ』


机の上に油性のペンで落書きがしてある。訳がわからず、呆然と机の前に立ち尽くした。

周りがまたクスクスと笑った。よく見ると、桃太がこっちのほうを見ていた。悲しげな表情をしている。必死で助けてくれとサインを送ったが上の空で気付いてくれないようだった。不意に涙がこみ上げてきて、ドアのほうへ向かった。途中真衣さんとすれ違ったが、向こうは気付かないようだった。


『何故?』


不思議と冷静だった。ぼくはすぐさま校門を出て、とりあえず走った。

自分でも何処にいきたいのかわからない。何処にも行きたいわけではないのに足は勝手に動く。暫くすると、十字路が見えてきた。何処かで見覚えがあったが信号が青だったのでそのまま突き進んだ。

次第に涙がこみ上げてくる。

あの時のように発狂しそうになった。しかし、ポケットに手をいれて、ナイフが無かったことに気付く。

ぼくは益々不安になった。

さらに走って走って、ぼくが行き着いた先は―――無意識のうちに向かった先は―――“願望屋”藤沢秋のもとだった。


七瀬真衣は教室の扉を開いた。

辺りを見回してみる。いつもの光景―――

ただ、そこに何かが足りない。

彼はいるだろうか?

確か昨日電話したときには“明日は行くから”といっていたはず。

いやな予感がした。


『キモい―――』


彼の机に油性ペンで走り書きされた文字。

彼女は思わず叫びだしそうになる。聞きたくなる。

『誰がやったの?』って。『これは許されざる行為だよ』って。

誰かが肩を叩いた。

『真衣さん、おはよ!』

笑顔を浮かべている。確か彼は麻呂といった気がする。とりあえず、訊ねてみたかった。彼が今何処にいるか。

『ねぇ、新堂君は何処にいるの?』

小さな声で言ったはずなのに彼らへの憤怒からか思わず声が大きくなった。何人か彼女のほうを向いた。

『さぁな。』麻呂は薄笑いを浮かべた。『さっきいたけど、教室に入ってきた途端血相変えて出てったぜ』

辺りからクスクス、笑いがおこった。

『――――!!』

『泣いてたよね。』誰かが言う。『うん。マジきもかった』

『真衣さんも同じ目にあいたくなけりゃ、あいつと関わらないことだね。』

『そうそう。』女の子が一斉に笑った。


思わず、怒りがこみ上げた。

昔の過去が蘇る。

セラピストになる前。藤沢秋に拾われる前の出来事を、彼女は思い出した。

今回の話は非常に痛々しく、書いてて辛かったって思う。早いトコこの話も終わらせたくなっちゃいました・・・・・

ところで、次号は真衣さんの過去編。

因みに過去編が終わり次第、最終ステ―ジへと突入させたいなと思います

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