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*第九話 病院

病室のベットで(後で気付いたことだが)ぼくは夢を見ていた――――

それはまたいつもの夢でいつものように彼と問答を交わした。

『じゃぁ君はぼく?』ぼくは彼の言葉に返事をした。

『ううん。君はぼくであって、ぼくは君じゃない、ぼくは―――君の中にいる。だから、君とはこの中でしか会えない。』

『何故いつも消えてしまうの?』

『これが夢だからさ。夢だと自覚したとき―――』

夢?そうだ。これは夢だった。目が覚めてしまうような気がして慌てて目をぎゅっと瞑った。彼の顔が揺れて消えた。夢が変わった。

砂嵐が目の前に降り注ぎ青と黒の線が横に走った。

『I・・・・m・・・・ y・・・・・u・・・・ ・・・・n ・・・・・・u』

砂嵐の奥で白い文字が見えた―――。何故かそれは前のときよりはっきりと見えて、何かの暗示のような気がした、。

文字が消えた後、遠くのほうでヒトがまた見えた。

男の子でぼくと背格好が同じことがわかったが、それが誰かヤッパリわからなかった。


ぼくは、目覚めた。

隣で真衣さんがスヤスヤ眠っている。

ずっと看病してくれたのだろうか?目の下に大きな隈ができていた。

倒れてから何日がたったのだろう?

ぼくは辺りを見回したが日付を特定できる物は無く、“ケープ・マリーゴールド”の花がいけた花瓶がベット際に置かれていた。

看護婦さんがぼくの病室に入ってきた。

『あら、お気づきになられたんですね?新堂さん』その可愛らしい看護婦さんはぼくに親しげに話しかけると、微笑を浮かべた。

『はい。あの・・・』

『七瀬サンって律儀な子よ』看護婦さんは真衣さんの頭を撫でた。『三日三晩、君に付きっ切りだったんですもの。たった一人で』

『三日も寝てたんですか?ぼく。』

『ええ。』彼女は答えると、タオルを水に濡らして無抵抗のぼくの上半身を拭き始めた。『まぁ、でもお気づきになられたんなら今日明日中に退院できますよ。』

『そうですか・・・・』

真衣さんは罪悪感でも感じたのだろうか?大人の母性本能が働いたのか。あるいは他に理由があったのか知らないが、色々世話をしてくれたと聞き、心がほんわか熱くなるような気がした。

看護婦はぼくの体を粗方拭き終えると、『困ったときにはそこのボタンを押して私たちを呼んでくださいね。できるだけ早く駆けつけますから。』とナ−スコールのボタンの場所を教え、そそくさと病室を出て行った。

『はい。』

ぼくは真衣さんを見つめる。また、胸が熱くなった。

惚れてしまったのだろうか?

まさかと思いつつ、胸に手を当ててみる。

でも、ふいに怖くなって胸から手を下ろした。

ぼくは再び眠りについた。


『ちょっと!なによ〜』聞きなれた声が聞こえる。僕は目蓋をゆっくりと開いた。

『んっ、ん・・・・』

『!!!!』七瀬さんは涙を浮かべぼくに抱きついた。

隣に看護婦さんがいたがその光景を見るなりそっと病室から出て行った。

『不安だったんだからぁ。』彼女は涙をぼくの頬にこぼした。『私のせいで死んだらどうしようかと思った。』

『そっちかよ(笑)』

ぼくたちは暫く談笑をして四日間真衣さんがどれだけ大変だったかくどくど聞かされた。

『夾くん。今日中に退院できるって!だから、明日には多分クラスの皆に会えるよ』

彼女のいっていたとおり幸ぼくはその日のうちに家で安静ということで退院した。

家までは真衣さんが車で送ってくれたが、流石にお互い一中学生ということになっているぼくたちが(しかもカレカノでも幼馴染でも近所でもない)一緒にいることはまずいということとなり布団の用意だけして帰っていった。

『明日にはクラスの皆に会える・・・・・か。』ぼくは呟く。

それがぼくの望んでいることなのだろうか?

学校行きたいと僕は思っているのだろうか?

ベットにつくと、ぼくはすぐ眠りについてしまった。

そのときはまだ、期待していた。

学校はぼくの居場所なんだって。あまりにも平凡なぼくの居場所なんだって。

そして、知らなかった。

ぼくの望んでいた願望がこんなにも恐ろしいものだったなんて。

夢の中で出てくる白い文字あれは、あと五話くらい先の題名にするつもりです。あっ、でも実はあの言葉もう文中に出てきてるんですよ。日本語でですけどね!

そうそう、この話の題名にも悩みました。本来、あの白い文字を題名にしようと思ったんですが最終話のほうに入れたほうがカッコイイ気がして止めました!

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