表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/32

*プロロ―グ 〜貴方の望みは何ですか?〜

〜願望屋〜

彼の元には日々、色々な人からの依頼が舞い込む。

それは失踪事件の捜索だったり、事件の助言だったり、不良の更正だったり、家事の手伝いだったりいろいろだけど、時々厄介な依頼が舞い込むこともある。

これは、現在、願望屋助手であるぼくがここを訪れるきっかけとなった出来事である――――。



タスケテ――

え?


『貴方の望み。叶えて差し上げます』

そのキャッチコピ―につられ、ぼくは家から数キロ離れたこの町にやってきた。

それで、今その“願望屋”という店の前で突っ立っている。

見上げて否、見て一言突っ込みたくなった。

『ここが、願望屋?』

確かに、“望みを叶える”などといった神秘的なビジネスにはこのようなレトロな外観があっているのかもしれないが、現在の日本にこのような建物が残っているという事実に驚きを隠せなかった。

“本当に望みを叶えてくれるのだろうか?”

今更ながら不安になる。“願望屋”と銘打った胡散臭い詐欺紛いの商売じゃないだろうか?金を沢山ふんだくられて挙句の果てに望みは叶えてくれないなんて展開にはならないだろうか?

『まさかな・・・・』

首を振って否定してみる。けれど、不安はおさまらなかった。

『でも、ぼくにはもう―――ここしか残されていないんだ。』

ぼくは決心して扉をノックした。

 

『いらっしゃいませ!お客様。』

『!!!』

驚くことに目の前に飛び込んできたのは大量の薬の数々。ぼくは、一歩外に出て看板を探した。

『藤沢・・・薬局?』

『そうでございます。お客様』その女性の店員はにこやかにぼくに笑いかけた。

『!!!』ぼくはまた言葉にならない言葉を発した。『じゃッッぁ、願望屋はここではないんですか?』

『あぁ、そちらのほうのお客様でしたか。どうぞ、こちらへ・・・・』

案内された部屋は古風で薄汚い外観とは裏腹にとても綺麗だった。

壁にこれでもかと敷き詰められた巨大な家具の数々。左側一面に広がる巨大な本棚には、見たことも無いような大量の本や、少し不気味な骨董品(アンティ―ク)が飾られている。まるで、ファンタジ―(例えていうなら、そうファンタ―ジェン!)の中に迷いこんだような錯覚がぼくに起こった。

『不思議かい?』その店員は僕の心を見透かしたように言った。『ここにある本の中にはね。世界中に数冊しかない本とかもあるんだ。』

『え?!』

『例えば、販売を規制、禁止された本とか、あまりに危険なので本にさえならなかった本とか。』

『何でそんな本を持ってるんです?』

『集めるのが趣味だからだよ。』店員はまた、シニカルに笑った。『ところで、自己紹介はまだだったね。ぼくの名前は藤沢 秋。因みによく間違えられるけど、性別は♂ね。』

女の子じゃなかったのか。ぼくは少し驚いたが、あえて突っ込まなかった。

『えっと・・・・新堂 夾です。宜しくお願いします』

『夾くんね。今日はぼくに何をお願いしに来たのかな!?』

ぼくは答えようとしたが、止めた。

その前にここが本当に“何でも叶えてくれる願望屋”であるのか?確認したかったからだ。

『あの・・・・』ぼくは遠慮気味に口を開いた。『このお店に行けば“願い事を何でも叶えてくれる”って訊いたんですが。本当ですか?』

『本当に決まってるじゃん?』彼は首を傾げた。『それとも―――人の望みを何でも叶えるなんて、君は無理だと思っているのかな?』

正直、吃驚してしまった。話していないのに、知られてしまっている。そう、真っ裸にされている気分に近い。しかも、まったくと言っていいほど恐れを感じさせず、真っ裸と言っても産まれたばかりの赤ん坊が親にその裸体をさらすような感覚。

『いえ・・・ただ・・・・。』

『まぁいいさ。最初はみんなそうだしね。信じられないようだから夾くんは後払いでいいよ。でも、願いが叶ったらちゃんと払ってね。』

『―――わかりました。』

信用はできない。

でも、願いが叶った後の後払いでいいって言ってるし、ぼくにはこの“願望屋”にすがるしかもう道は残されていなかった。

       *

『なるほど・・・・・・』願望屋はうんうんと頷いた。『その話から察するに、君の―――夾くんの“願望”は、ガンボウを見つけることかな!?』

そうです、とぼくは頷いた。

『そっか。なら簡単だよ。』

『本当ですか?』ぼくは、疑わしい眼で彼を見た。

いままで、何店も病院や店を回ったが、治すことが不可能だったぼくのこの心の虚構を虚無を、彼は簡単に治してくれるというのか?

『本当はこんな心理学者紛いなモノは嫌いなんだけどね。明日、学校終わったらまたきなよ』

『わかりました』ぼくはそう答えると、回れ右をしてドアノブに手を触れた。そして、不意に後ろに振り向くと続けた。

『今日はありがとうございました』

帰宅後、ぼくはベットに寝転がると、『人生は夢である。死がそれを覚まさせてくれる。』と呟き、深い眠りについた。


この話はぼくの友人のある女の子が書いた願望屋〜人魚姫の歌声〜の前作として製作した話です、どうぞ宜しくお願いします。

もしよければ、評価していただけると幸いです

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ