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仮初めの  作者: やいな
6/22

特訓開始です。

「明日からは、本部に行かなくていいですよ。」


「へ?」


ロイ将軍と夕食を屋敷でとっている時に言われた。


「明日からは、私と特訓です。時間が無いので少し手厳しくいきますよ?」


「…お手柔らかにお願いします。」


露骨に嫌だという顔をしていたようで、将軍がクスリと笑った。



「まぁ、元貴族のお嬢さんですからそう苦労はしないでしょうけどね。…一応聞きますが、踊れますよね?」


「そうですね、まぁ、人並みには。」


「明日は仕立て屋を呼んだので、採寸してもらいましょう。」


「一から作るんですか?間に合わないんじゃ…」


「そうですね、それは流石に無理なのでもとあるドレスからサイズを調整する形になりますね。」


「そうですか、なら大丈夫そうですね。」


「…だと、良いんですけどね。」


ちらりと将軍がこちらを見て意味ありげに目尻を下げて笑った。その理由は次の日に分かった。


「っく、苦しいです!」


「何を言ってるんですか。若いんだからこれ位で丁度です!」


午前中は、あの例の資料と睨めっこして一息ついたと思えば、今度はドタバタと採寸のおばさまたちとドレスを持った商人がやってきた。


そして、久々にコルセットをはめられぎゅうっと締め付けられる感覚を味わっている。その横で、ドレスを選んでいたロイ将軍がこちらを見て笑った。


「女性は大変ですね。」


「っ!」


「それに…やっぱり既製品のドレスでは、少し問題がありそうですね。」


将軍の目線がゆっくりと上下する。コルセットのおかげで必要以上に胸が盛り上がって、腰のラインもはっきり浮き出る。


「…目線がセクハラですよ。」


「そう、ですか?部下がきちんと令嬢に変身できるのかを見定めなくてはいけないので。」


将軍が意地悪く笑う。ってか、仮にも乙女の下着姿なのよ!?さっさと退室してよ!!とジッと将軍を睨んでいると、将軍が目尻を下げて笑った。


「そう睨まないでください。今晩は素敵な姫君と音楽鑑賞出来ることを楽しみにしています。私は書斎にいますから、終わったら来てください。」


そう言って何枚かのドレスを選んで、部屋を出て行った。


その後おばさまたちが素敵になりましょうね!と気合いを入れて、コルセットを更に締め上げてくれた。将軍の選んだドレスを次々と着せられて、サイズの調整をする。その中でも、おばさまたち絶賛のドレスがあった。これで是非あの素敵な方を誘惑するように!コレならどんな殿方もイチコロよ!とお墨付きを得た。


髪も結い上げ、お化粧もしてもらった。何だがドレスが久しぶりで胸元が少しスースーするけど…お化粧も、久しぶり…どこか、おかしくないかな…なんか緊張する。


書斎に続く廊下を、歩きながら冷静にならなくちゃと何度も心を落ち着かせようとする。むしろあの将軍にちょっとは見直させてやるんだから!スゥっと深呼吸し、ドアをノックする。


「ロイ将軍、ユーリです。」


「あぁ、入ってください。」


返事があったので、ドアを開けるといつもと違う雰囲気の将軍がいた。


「私も準備が出来たところだったので、では行きましょうか。」


黒い前髪が上に軽く上げられて、銀で縁取られたグレーのスーツを着ている。胸元についている銀の鎖が揺れる。


っ!似合いすぎよ…おまけに夕陽がバックって!!ま、負けた…


「素敵ですよ。黄色のドレスが、あなたの髪色とよく合っている。」


「しょ、将軍も…よく、似合ってますね。いつもと違って…その、」


かっこいいです。だとか素敵です。だとか、緊張して言葉に出来ない。ただ頬が熱くなるのを抑えられず、思わず俯いて言葉をにごしてしまう。


将軍が近づいてきてピタリと目の前で足を止めた。


「緊張してるんですか?私も、こんなに素敵な女性を前にして、口説かずにはいられなさそうです。」


耳元で囁かれ、頬を撫でられる。顔ばかりでなく、全身が熱くなる。


「さぁ、行きましょうか。今宵は貴方がディーヴァだ。」


そうして夜の街へと出掛けた。



今回も拙い表現力ですみませんorzもうしばらくお付き合い下さい。

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