仮初めの入団
「それはこっちのフォルダーだよ?」
「す、すみません!ニース教官。」
イマイチ教官という呼び名が似合わない金髪の少年に頭を下げる。
「いい?このハガキは、スタンプの色が深緑だからこっちの緑のフォルダー。黒にすごく近いから普通は見落とすんだけど、とーっても、大事な書類だから。」
この変哲もないハガキが大事な書類?ただの旅行先からのハガキに見えるのに。確かによく見るとスタンプの色も僅かに違うけど…
入団して一週間、朝に軽いランニングと筋トレ、お昼まではこうして書類の整理、午後からは各部署を日毎に回って仕事内容を理解する。そして夕方には将軍と共に彼の邸へ帰る、という生活を送っている。
「ユーリ、手が止まってるよ?」
「あ、はい。」
こうして暫くは届いた手紙の整理。ニース教官は来月まではつきっきりで自警団の仕組みについて教えてくれるようだ。年も近そうというより下のような気がするから、気は使うが変な気は使わなくてほっとする。
「ニース教官はいつ頃自警団に入団されたんですか?」
「んー、正式に入団したのは一ヶ月前だけど。」
「えっ⁉︎」
たった一ヶ月で…もう人に教える立場…⁈
「ゆ、優秀なんですね?」
「まぁ、割とそうなのかもね〜。ってそんなに驚かないでよ。」
「す、すみません…!」
「…まぁ、それ以前からロイ将軍とは知り合いだったし、半年程インターンってやつをしてたんだけどね?」
「あ、そうなんですか。よかった、一ヶ月でここの仕事を全部覚えきる自信がなかったので…」
「それはいくらなんでも無理だよ〜。あの人結構細かいとこまでうるさいからね。色んなもの事に対してルールまで決めちゃったし。」
はぁ〜とため息交じりにニースが答えた。
「しっかりしてるんですね。だからあの若さでもう将軍に?」
「あぁ、将軍ってのはあだ名かな?自警団はロイが作ったからリーダーって事で僕が呼んでたらみんな呼びだしただけだよ。」
「そうなのですか?」
「うん、だって全員あわせてもまだ20人ほどだし。それに、リーダーってより将軍の方がなんか強そうな気がしない?」
笑いながら言われ、確かに将軍って言葉が似合うと思った。
「最近は色んな所からも注目されるようになってきたから、本当に将軍になる日も近いかもね。あ、これ秘密ね?」
「ニース教官はロイ将軍と仲がよろしいのですね。」
毎日の二人の様子を見ていると、上司と部下というにはニース教官がロイ将軍に対してフランクだし、将軍もまた保護者のような目でよく見ている気がしていた。
「まぁ、昔に、その…、色々お世話になったしね!さぁ、お昼まであと少しだからパパッとやっちゃおう?」
ニース教官のにごした《色々》についてはこの後に行く予定の調査班にでも聞いてみよう。