仮初めの補佐官
リオルへ着いた夕方、王都から派遣されてきた総指揮官との顔合わせに、街の中央にあるレストランへとロイは向かった。
「今日からお世話になります。団長のロイ・サーベルトです。」
「いや、こちらこそ急に来てもらって悪いな。ここでは総指揮官を務めるニッケス・マイルだ。」
40代ほどのしっかりした身体付きの男が傷だらけのごつごつとした手を差し出した。
「よろしくお願いします。それにしても、思ったよりも落ち着いていますね。」
「あぁ、そうだな。まぁ、なんだ。詳しい話は食べながらでも。こっちはマルクス。副司令官だ。」
そう呼ばれていたのは、男らしい体型のの総司令官とは裏腹に、柔らかな雰囲気をまとう男だった。
「マルクスです。サーベル団長。こちらへどうぞ。」
食事を取りながら、気になったことを総司令に質問した。
「思ったよりもこの街は落ち着いていますね。」
リオルへ近づくにつれてそれは目に見えた。リオンの街は人々の笑顔と活気に溢れていた。
「あぁ、そのことか。うむ、まぁそうだな。反乱といっても市民が起こしているわけじゃない。国外からこの街にやってきた商業者たちが起こすんだ。」
「国外の商人たちがですか。」
「今までは、服装飾にしろ本にしろ殆ど輸入してたからな。だから、技術者をよそから招いて自分たちで商売を成り立たされると面白くないんだろう。」
「いくらそうであっても…それだけで反乱を?」
「そこだ。特に反乱を起こす理由がない。むしろ外交問題に発展しそうだしな。」
ごくんとグラスに入った赤ワインをマイル総指揮官が飲んで続ける。
「実は王の事をよく思わない連中が国内にいてな。反乱は多分目くらましだ。そっちに気が向いている間に首を狩ろうってことだろう。だからといって起きるとわかっている反乱を無視して城の周りに軍を固めるのは、国民の信用を失う。だから、表向きにこうして軍を派遣しお前さん方を呼んだんだ。」
「何を…王を失えば国が傾く。」
「あぁ、まぁ一応王には兄と弟がいるからどっちかを王にして、首謀者が政治を牛耳ろうって事だろう。あの兄弟は、王に向いていないしな。」
「総指揮官は、王と親しい間柄なのですか?」
「そうだな。三兄弟の剣の稽古の指導でずっと側で見ていたからな…。」
「そうだったんですか。」
「まぁ、あれだ。とにかく、首謀者うんぬんは俺たち国軍が相手にする。何処にいるかわからんからな。お前さんたちは商人たちが暴れたら少しおとなしくさせておいてくれたらいい。」
「わかりました。」
「いいか?今回はあくまでも“商人たち”の反乱だ。」
他言するなよ?と目で合図されて心の中で大きなため息をつく。
面倒な事に巻き込まれたが、これ以上巻き込まれないようにしなくては…まぁ、おとなしく商人たちの相手をしておけば悪い方へはいかないだろう。
その後作戦当日の簡単な流れや世間話をして会食を終えて宿へと戻った。
ガチャリと部屋の扉を開ける。
「あ、おかえりなさいっ。」
慌てた様子の彼女を見て自然と笑みが零れる。
「ただいま、ユーリ。先に休んでいても良かったんですよ?」
「いえ、大丈夫です。」
部屋にあるソファに腰をかける。
「お疲れ様です。お茶でもいれましょうか?」
「あぁ、ありがとうございます。」
「はい。じゃあお湯もらって来ますね。」
パタパタと部屋を出て行く彼女を見ながら、シャツのボタンを外した。
お待たせしましたorz




