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仮初めの  作者: やいな
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仮初めの尋問

鳥のさえずりが聞こえる。

目を開けると見知らぬ天井と小さなシャンデリアが上にある。


どこだっけここ。なんかちゃんと寝衣きてるし。お風呂とか入ったっけ。しばらく回らない頭を働かせ昨日自警団に連れて来られたことを思い出す。


そうだ、昨日は散々な目にあった…騙されたんだったっけ。。。

軽くため息のでる。もう少し横になろうとふかふかの枕に顔を沈めた時ドアを軽く叩く音がする。


「失礼しますよ。」


ガチャリとノブを回し入ってきたのはロイと呼ばれる男だった。


カーキ色の制服でなく、白くゆったりしたシャツに紺のズボン姿は昨日と違う印象を与えた。


「調子はどうです?」


「あ、、はい、大丈夫です。えっと、ここは…」


「私の自宅です。昨日あなたの持ち物から身分証を確かめましたが、ユーリ・スミノフで間違いありませんか?」


「はい。」


寝起きだが、尋問のようなので頭を回転させる。自分の身は自分で守らなければいけない。


「スミノフ家といえば名のある家柄でしょう?どうしてそんな人が夜の繁華街なんかうろつくんです…」


はぁっという溜息をつかれどうしてそこまでうなだれられなければいけないのかと思うと。


「残念ながら二週間前に一般市民に戻りましたので。」


一年前に両親が事故に遭い他界するまではかなりいい暮らしをさせてもらっていた。だけどそのうち自分を引き取ってくれていた親族テイラー家にいいようにされ遂に先日スミノフの管理していた全権がテイラーに移され爵位を譲る形になってしまった。


正直自分一人で家を背負うのは無理があったので、よかったのかもしれないが。


「彼は以前から違法薬物の件で見張っていたんですが、あの日は取り引きがあるようでした。あなたは知っていましたか?」


「…いえ。」


どうしたものか、初恋の植木屋は運び屋をしていたらしい。。それがなんらかのトラブルで私に代わりに行かせたのか…


「正直に答えてくださいね。こっちもひまではないので。あなたは無関係。だが、誰かがあなたにあの場へ行くようにしたのですね?」


「…」


「誰です?」


正直にさっさと答えた方がいいんだと思う。だけどあの人の笑顔が頭をよぎって黙り込んでしまった。


「だんまりですか…」


軽いため息をついてつかつかとベッドに近づいてくる。


「あまり手荒なことはしたくなかったんですけどね。」


そう呟くと肩をおもむろに掴まれ上体をベッドボードに押さえつけられる。


「さっさと言ってください。痛い目みますよ?」


男はベッドに膝をのせ距離を縮める。深い緑の目がより深く見える。こわい。背筋に冷や汗が流れ落ちる。何の表情もなく、ただただ静かに、でも怒りにも似たような、獲物を狩るような視線。


口を開こうにも怖さで固まって何も言えない…


「女性の口を割らせるには二通りあるんですが、あなたはどちらがいいですか?」


男が、温度のない声で喋りながらこちらを見つめる。


シュルっと音を立てて胸元のリボンがほどける。


「まぁ、こちらの方が、みなさん大抵早いんですけどね。」


クスリとする男の声でようやく自分の胸もとがはだけていることに気がつく。


「では、尋問開始としましょうか。」


冷たい汗が胸元に落ちるのがわかった。

何の感情も見えない目から目が離せずにいると


「ロイ将軍!わかりましたよ!」


バーンっと大きな音を立ててとびきり明るい声でドアを開ける。口を割らせたのは僕だ!褒美に有給なんかもらえちゃったりして!意気揚々としていた僕、ニース・ロードの前には衣服の乱れた女性がベッドに、その女性の上に上司であるロイ将軍がいた。


「…自分、なんか、タイミング間違えたみたいですね。」


二人の視線が僕に向いて沈黙が流れる。

ロイ将軍はため息交じりにこちらを見て、女性の方は…


「将軍…女の子泣かしてナニやってるんですか…?」


今度はため息交じりに僕が言う。


え?将軍がふと女性を見る。女性は目から涙をポロリ、ポロリと落としていた。


将軍の目が一瞬大きくなって


あ、ヤバイ。やりすぎた。


と顔に思い切り出てる。


「まぁ、とにかく後で報告するんで。」


そう言ってドアを閉めた。


………



泣くつもりはなかったのだけど、本能的に安心して涙がこぼれていた。


さっきの獲物を狩る目はただの深いグリーンの目になってこちらの様子を伺う。


「すみません、いたずらが過ぎたようですね。」


そう言って胸元のリボンを結び直し服を整えてくれた。そして少しバツが悪そうに距離をとる。


「い、いえ…た、ただ…」


別にそういったことで泣くほど純情ではない。けど、目が本物の殺気が感じられて驚いた。それに丁重に扱われているのはこの寝室にいることで分かったので乱暴なことをされるとも思わなかった。


そう伝えようとしても止まらない涙のせいで上手く言えない。


「本当、すみません。」


申し訳なさそうに頭をきちんと下げられて、逆にこちらがどうしようと思う。


「あの、ただ…驚いただけですから。頭を上げてください。」


「いや、私が本当に悪かったのだから謝らせてください。」


そういって頭を上げようとしないので、少し近づこうとした時、


グゥ〜ルル


盛大に私のお腹の音がなった。




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