仮初めの上手い話
大変長らくお待たせしました(T . T)
「というわけで、皆さん急ですが今度リオルへ行くことになりました。暴動があるとはいえ、国軍も動いてますし我々はあくまでも補佐という形なので、それほど危険はないと思います。が、身を引き締めて訓練に励む様に。」
しーんと静まり返る中、ロイ将軍の声が響く。
それでは解散、という声とともにざわめきが広がる。
「国に認められたってことか?」
「うまい話には裏があるのが常識だ。」
「うまくいけば国軍のお偉いさんの目にとまって引き抜きとかあったり?」
そんな期待と疑惑が交差するが、期
待の方が明らかに大きい。
「ユーリ、少しいいですか?」
ロイ将軍に手招きされて、廊下まで出る。
「どうかしましたか?」
「その…週末は、約束していたのにすみませんでした。」
ぺこりと頭をロイ将軍が下げた。
「あっ、いえ。大丈夫ですよ。気にしないでください。」
公園でアルメアに出会う少し前に、ロイ将軍の家から将軍が急用で来れなくなったと執事さんが伝えにきてくれた。
「お詫びといってはなんですが、どうぞ。」
手のひらにカチャリと置かれたものを見ると、ガラス細工で出来たアクセサリーがあった。
「かわいい…」
「王都では、こういったガラス細工が今流行っているようでしたので…気に入ってもらえましたか?」
小さな淡いピンク花に深いグリーンの葉が添えられたペンダントだった。
「あの、すごく嬉しいです…でも良いんですか?その、自分なんかに…」
異性にアクセサリーを送るイコール好意を抱いているとアピールする。というのがこの町の、いや国の間では常識とされてるわよね…?将軍だってそれ位は知ってるだろうし…でもやっぱりただのお詫びのつもりなんだろうか…いろんな人にもプレゼントしてそうだし…うーん。
「言っておきますが…こういったものを女性に送るのは貴方だけです。」
真剣な眼差しに顔が一気に熱くなる…そんな様子をみてロイ将軍が手のひらのネックレスをとり、微笑んだ。
「後ろ…向いてもらえますか?」
「あ、はいっ!」
かなり勢い良く背を向ける。クスクスと笑う将軍の声が段々と耳元に近づく。
「失礼しますね、」
そういって後ろから回された手が顔のすぐ近くにあることにドキドキしてしまう…
はい、出来ましたよ。こっちを向いて、ユーリ…。
耳元で優しく囁かれて、おとなしく向き直すが顔が上げれない…絶対赤い。は、恥ずかしい…なんだかすごく恥ずかしい。
「ユーリ…今回の王都からの話ですが、私はあなたを連れて行かないつもりです。」
「えっ!?」
驚いてバッとロイ将軍の顔を見る。
「ど、どうしてですか…?わたしの力不足ですか?」
「…わたしの単なるわがままです。あなたには安全な所にいて欲しい。」
「先ほど皆の前で危険はないと言ったじゃないですか…」
「今回はきっと我々の実力を測るだけでしょう…ですが次はきっと…」
「次?次があるんですか?」
「…私の憶測なので現時点ではなんとも言えませんが。」
ロイ将軍の顔を見る限りきっと何かがあるんだろう…やっぱり世の中美味しい話には裏があるんだ…。




