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仮初めの  作者: やいな
14/22

仮初めのの息抜き

「はーい、では、潜入捜査が成功したということで、打ち上げ開催ですー。かんぱーい。」


レイティーのおっとりとした声とともにグラスのカチンとぶつかる音が四方八方から聞こえる。ただいま食堂にて打ち上げ真っ最中。三日前の作戦頑張ってくれたからご褒美よ〜とレイティーが調査班の費用もちで開いてくれた。


「よっしゃー、日頃のうさを晴らして飲みまくるぞー!」


「うぉぉお!」


口笛をふいたり嬉しそうに盛り上がる声が後ろの方で聞こえる。


「余り飲みすぎたりしないでくださいねぇ?特に活躍も何もしてない方々は…身の程をわきまえてくださいねぇ〜。」


やんわりと、盛り上がる団員たちにレイティーが笑顔で促す。


レイティー…目が笑ってないよ…


「ユーリも将軍もお疲れ様っ!大活躍だったね!」


ニースが空いたグラスにワインを注ぎながら陽気に話しかける。


「いえ、そんな、自分はあまり役に立ってなかったんで。みなさんが早くに駆けつけてくれたからうまくいったというか。」


「もぅ〜謙虚だな〜!ユーリの美貌でみんなころっと賭場を吐いちゃったんでしょ〜?」


「いや、それは…」


ちらりとロイ将軍の方を見ると、静かにワインを飲んでいる。


最後のアレって…さ、作戦だったのかな…それとも…あー。わかんない。本当将軍ってなに考えてんだろ…


しばらく見入った私に気づいてか将軍が微笑みながらこちらを向いて話した。


「ユーリがうまく周りの気を引いてくれましたからバッチリでしたね。」


「そうだよねー!もうユーリってば可愛かったな〜!…あ、今が可愛くないとかじゃないよ?今でも十分だけど、もっとこうパワーアップしてたというか〜!」


ワイワイと実行部隊の面々がちらりとみたけど凄かっただの、すごい変わりようだっただの、自分としてはもう少し控えめがだの、本人がいるのにお構い無しで盛り上がっている。もう既にお酒が入っているのでみんな容赦ない。


「そういえばユーリ!お前はいくつだっけ〜?」


顔を赤くした隊員が絡んでくる。


「18ですけど。」


「っく!じゅうはちだとぉ〜?わっか〜い!俺よりわかいぞ〜!」


「当たり前だっ!隊の中で一番若いんだぞ〜!」


「あはは!お前よりほとんどのやつが年下だ〜!」


わかいってのが面白いのか何なのか…酔っ払いは何で笑い出すかわからない。こんなんで喜んで笑って…男ってみんなこんなにアホなのかしら…


ゲラゲラと笑い出す退院たちについていけず、愛想笑いで対応する。


「じゅうはちかぁ〜!ユーリ!好きなやついないのかよ〜!」


「えっ!」


突然の恋バナですか!?


「おー?なんだぁ!いるのかー?」


「えっ!ユーリってば好きな人いるの〜?」


どさくさに紛れてニース教官まで混じって聞いてくる。


「い、いや、どうでしょうねっ?!」


「恋人か〜?ちゅーくらいしてんのか〜?」


「どーなんだよー!」


「ちゅーってコレな!ちゅー!」


唇を突き出し口に指を当てている。


「みんな飲み過ぎです!」


「ウブだな〜!」


「照れちゃってかーわいいー!」


ヒューヒューと周りが囃し立てる。


「…絡みすぎですよ。ユーリも答えなくて宜しい。」


将軍が助け舟を出してくれてホッとしたのもつかの間。また周りが騒ぎ出す。


「ロイってば邪魔しないでよ〜!過保護だよ〜?」


「そっすよ〜将軍は飲んでてくださいよ〜!」


「そりゃあ新入りだし若いからって甘やかしちゃダメですぜ〜!」


「そうそう、こういうのにも慣れてもらわねぇと〜!」


…あ、将軍の目が怖い…


周りがやいやいと今度はロイ将軍をターゲットにして騒ぎ出す。


…そろそろヤバいんじゃ…


「もう一度言いますよ。酔いすぎです。」


「「よってませーん!」」


皆が声を揃えて陽気に答えて新たなお酒を片手に笑い出す。


はぁ…とため息をついたロイ将軍と目が合う。


「まったく…仕方のない連中ばかりですね。」


笑いながら話すロイ将軍に笑い返す。


「そうですね、でも皆面白くていい人たちばかりです。」


「えぇ、そうですね。…本当いい部下に恵まれました。」


「みんなロイ将軍の事が大好きなんですよ。」


嬉しいような微妙なような困った顔をしてロイ将軍が質問した。


「あなたも?」


「えっ?」


「あなたも…私の事が、大好きなんですか?」


「えっ!えーと、その…」


どっ、どうやって答えよう。いや、普通に上司としてって事なんだろうけど…!


「ふふっ、そんなに困らないでください。」


笑いながら頭をぽんっと叩きお酒を飲む。


「私も…ロイ将軍の事、好きですよ?」


少し驚いた様子のロイ将軍がこちらを見る。


「あ!もちろん上司としてって意味ですけど!」


「ふふっ、わかっていますよ。」


ぽんぽんっと頭をふわりとたたき、将軍は挨拶に行ってきますねと他のテーブルに移動した。


かぁーっと顔が熱くなるのがわかる。あー!もう〜!!!


バンッとテーブルに伏せる。


「ユーリってば酔っ払い〜!耳まで赤いよー!」


ゲラゲラと笑うニース教官を他所に呟く。


「言葉にすると、はっきりわかっ…ちゃうんだよね…」


「えっ?何〜?」


「っ何でもないです!よし、私も飲みます!」


「わーい!ユーリってば案外いけるねー!」


そうしてどんちゃん騒ぎをみんなと一緒に繰り広げた。楽しくて、このメンバーと一緒にいれて嬉しいと心底思った。



お酒はハタチになってから!

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