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仮初めの  作者: やいな
10/22

仮初めのご令嬢

特訓期間も終わり、ようやく本番当日。


朝から調査班の隊員たちが入れ替わりにロイ邸宅にやってきては、作戦を確認する。


書類の人物名と、ニースがまとめてきた他国の文化によく目を通す。


「よしっ、ばっちり。」


将軍と出かけた次の日、ニースがまとめてきた書類はとても見やすかった。私の演じるご令嬢は自由奔放で旅好きなちょっと変わった人らしいので、他国の文化を知る必要があった。容姿でバレるんじゃ?と聞いたら、今まで社交界に出たことがないようで問題ないとロイ将軍が答えてくれた。そんな私たちの様子を見てなんだかニース教官がニヤニヤしていたのは、放っておいた。それから今日までは、ロイ将軍と普通にダンスを軽く合わせたり、礼儀作法を確認しあったり、お互い当日にどう振る舞うかを話し合ったりした。


「ユーリ、調子はどうかしら?」


お昼に差し掛かろうとした時、扉が開きおっとりした声が聞こえた。


「レイティー!」


書類をテーブルに置いてレイティーに駆け寄る。


「元気そうねぇ。その様子だとばっちりかしら?」


「任せてよ!…と言いたいけど、ちょっと不安かな?」


「あら?そうなの?」


「まぁ、ほぼ大丈夫だけど…万が一何かあった時に対応できるかなって。」


周りには弱音なんか吐かないけど、レイティーの前だと少し甘えて弱音を吐いてしまう。


「それは、ロイ将軍に任せておけば大丈夫よ。」


ふふっ、身も心もね、と笑いながらレイティーが答える。


「もうっ。」


「ねぇ、ユーリ?今夜のドレスはもう決めてあるのよね?私は夕方には本部に戻ってしまうから、今見せてくれるかしら?」


「じゃあ、ちょっと着てくるね。丁度私も確認しようと思ってたの。」


クローゼットにある衣装合わせの時に絶賛されたドレスを手に取り、コルセットは付けずにそのまま着た


「こんな感じのドレスなんだけど…」


着替え終わって、レイティーの反応をうかがう。


「あらあらぁ。とっても素敵よ。」


目をドレスの上から下へと動かしレイティーが微笑む。


「ちょっと、露出が気になるけど…変じゃない?」


「それ位みんな出してるから平気よ?それに今日は特に目立って貰わないと、作戦に響くからねぇ。」


「そ、そっか…なら、仕方ないけど。」


「ん〜、それにしても…将軍が心配ねぇ。」


「え?ロイ将軍?」


「ん〜、大丈夫かしら?」


「何が???将軍なら、さっき任せとけばいいって言ったじゃない。」


「そういうことじゃなくて、、まぁそうねぇ。任せましょう。」


「???」


レイティーの言動がよくわからないけど、まぁ、いつものことか。


ドレスが汚れるといけないので、さっと脱いでクローゼットに片付けた。レイティーに一緒に昼食を取れるかと聞くと、もちろんと返事があったので、サンドイッチと紅茶を用意してもらった。久々に女子同士の会話を楽しんだ後、彼女は、がんばってね、と言って本部に戻って行った。


書類の最終確認をしていると、あっという間に支度の時間になり、着付けのおばさま達がやってきた。苦しいコルセットを着け、ドレスを着、髪も結い上げて、アクセサリーを着けて、メイクをしてもらうと、あの晩のご令嬢が鏡に映る。あの晩よりも、イロイロなんか盛られてる…


あの、今日、色んなところが前回よりも増してません?といっても若いんだからとまた言われた。


じゃあ、行きますか、と鏡をもう一度見ていると、コンコンとドアから軽い音が響いた。


「ユーリ、迎えに来たよ〜」


とニース教官が入ってきた。


「あ、わざわざすみません。」


そう言ってニース教官の方を向くと、大きく瞬きをする教官がいた。


「ちょっ、えっ!?ユ、ユーリ?」


「はい?」


「えぇええっ、、っ!?ちょっ、?」


目をしどろもどろさせ、何やら狼狽える教官が目の前にいる。


「あ、あの…やっぱり変ですか?なんか、メイクとか濃いですよね?もう一度、やり直してきた方がいいですか?」


「えっ!…いやっ、大丈夫。大丈夫だよ。」


ようやく落ち着きを取り戻してきているがニース教官はまだ挙動不審だ。


「本当ですか?今日は、その失敗出来ないんですよ?」


「大丈夫!そのままで大丈夫だから。ただ、、、」


「ただ?」


「ユーリって、いつもどうやってそのおっパダダだっ!」


「は?」


「いたいっ!痛いよ!ロイ!」


耳を思い切り後ろから引っ張られたニース教官を押しのけ、部屋にロイ将軍が入ってきた。


「すみません。ニースがあまりに遅いので直接来ました…」


将軍こちらを見たまま、止まる。一瞬目が大きくなった気がしたが、すぐに微笑んで言った。


「このピンにしてきて良かった。」


将軍が指差した胸元に光る吸い込まれそうな青の石。今日のドレスの、トーンを下げような色で、わざと合わせたみたい…。ってか前回にも増してかっこいいんですけど…その笑顔は反則っ…!あー、上司がイケメンって…。


「では、行きましょうか?」


「は、はい。」


差し出された手にドキドキしつつも、任務なんだから!と冷静を保とうと努力する。


「今夜はユーリ、ではなくサリアと呼びますが、あなたの事ですからね?」


と念を押された。


変わり者として貴族の間で有名な


サリア・マキュラス。


いざ出陣!





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