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Future  作者: 浅咲夏茶
7th Chapter;5 days of the last. -Until December 12 from cultural festival.
98/127

Target:Rina +α./episode97

「僕、英洙に投票してくれた暁には、この学校を絶対に良くすると誓います。是非、是非僕に清き一票お願いします!」

 校門前で声を張り、部活動をしない帰宅部員に向かって叫ぶ英洙の姿がそこにはあった。『生徒会長候補』というたすきを肩に掛け、恐らく英洙の責任者の二人が後方で旗を振って、応援をしていた。

「会長」

「ん?」

「生徒会長選挙の立候補者って、今日が最終締切日ですよね?」

「ああ」

「でも、会長立候補って英洙だけ……」

「そうみたいだね。ただ、今日の完全下校時間は夕方6時だからね。それまでに届け出を出せば、誰でも選挙に出馬することは可能だ。責任者が1人以上必要だけどね」

 うちの高校の校則では、生徒会長立候補者は、最低1票を獲得できるよう、責任者を1名以上確保しなければならない、というものがある。つまり、責任者が1名以上いない場合は、選挙に出馬できないというわけだ。

 だが、去年は色々と有ったので選挙ではなく、先生からの指名で決まった。

 話せば長くなるが、何故選挙が無くなったのか、ひとつの要因として、今の里奈の前の生徒会長の悪行があって、そうなったというのが挙げられる。

 悪行というと色々有るが、前任者の生徒会長がやった悪行は、非常に卑劣な行為である。虐め、暴力、万引き、親の金の窃盗、拳銃の所持、街中でレイプ。本当に卑劣な生徒会長だった。

 しかし、裏でそんなことをしているくせに、表では様々な女を抱き、今の生徒会長もその抱かれる予定候補の中に入っていた。宇城先生の話によれば、抱いた女の数は100を超えるとか。まあ、喪女の先生に言われたくないのが現実問題ですよね……。

 まあ、そういう生徒会長が言っていることを美化し、裏では卑劣なことをしているおかげで、うちの高校の株は下がる一方。風紀委員会を作ろうとしたものの、会長の権限で阻止され、先生方の説得も虚しく、全てが前任者の生徒会長によって壊された。プライドも、株も、マナーも、学力も、みんな。

 そういう訳で、今年度の生徒会メンバーは選挙ではなく、先生からの指名で決まった。と言っても、生徒会副会長が3学年委員会から、生徒会のその他の二役は学力のいい人を書く学年から1人ずつ貰っているので、実質指名を受けたのは生徒会副会長以外だけだ。つまり、僕以外ってわけだ。

「生徒会長選挙、ボクもやりたかったな……」

「もう1年も前の話、今頃しても無駄ですよ」

「だよね。……さてと。6時までこの部屋で待機しているのもなんだし、ゲームだ」

「ゲーム?」

「ああ。人生ゲー……」

「却下」

「なっ、なんで!?」

「単純に嫌いなので」

「じゃあ何がいいの?」

「エロゲに決まってるじゃないですか」

「……キモ」

「ちょっ!?」

「嘘だよ。でも、パソコンとか……」

「大丈夫です。スマホですればいいんです」

「……じゃあ、凛君」

「ん?」

「今度、ボクのお父様のパソコンを操って、お父様の趣味を調べてみてよ」

「嫌です」

「……むう」

 頬を膨らませるが、僕にはそれほど効果はない。何せ、人のパソコンを勝手に操作するなんて第一犯罪じゃね!? 一応、僕が操作するパソコンは自分のだからまだ良いとして、他人のパソコンを操作するのはよろしく無いんじゃないだろうか。

「じゃあ、凛君のお好みのコスプレしてあげるよ?」

「会長が?」

「あ、あと、プレゼントの金額も倍増……」

「そんなことする必要ないです!」

「……じゃあ、やってくれるんだね?」

「いや、僕がやったら会長のお父さんに怒られるんじゃ……」

「ボクのお父さんは心が広いから大丈夫だよ」

「……そうなんですかねえ」

「そうなんですよ」

「……で、それはそれで置いておくとしてですね」

「ん?」

「結局、何のゲームするんですか?」

「トランプとかはどうよ?」

「いいんじゃないですかね」

「大富豪よりババ抜きジジ抜きのほうが楽しいですよね」

「そうか?」

「別に大富豪が嫌いって訳じゃないですけど」

「でもまあ、大富豪は大人数でするのが殆どだから、二人で大富豪したところでどうにもならないよね。やっぱババ抜きジとかジジ抜き安定か……」

「そうですね」

「じゃあ、始めるか」

「会長、ルール知ってるんですか?」

「――馬鹿にするのもいい加減にしろ、バカ凛君」

「すいません」

「というかまず、大富豪についてさっき言及したんだし、普通は察しろよ」

「男は鈍感なんです」

「女の子の恋心が分からない男の子は可哀想だ」

「会長って意外と乙女なんですよね」

「何で?」

「いや、こう、二人きりの時妙に近づいてくることが有るというか。ほら、昨日も……」

「風邪引いたからだろ、あれは」

「デート……」

「それはデートだから」

「殺されかけそうになった時……」

「確かに近づいたけど、それは確認のため……」

「今」

「ゲームするからだろ」

「……うーん」

 僕は手を組んで悩むような表情を見せた。

「いやいや、いちいち理由をこじつける必要ないよ?」

「負けさせたいんですよ」

「おいこらふざけんな」

「それがサディストとしての思いの強さを表しますから!」

「いちいちそういう馬鹿みたいな発言すんじゃねえよ。副会長キャラはツッコミに回るのが普通だろ。なんで会長ボクがツッコミしてんの?」

「これはラノベであってラノベではない」

「またパロったな! てめーはボクを怒らせた!」

「著作者じゃないでしょ、会長」

「……」

 会長は途端に黙りこんでしまった。僕は髪の毛をくるくるとしていじりつつ、会長の表情を見てため息を付いて話を切り出した。

「エロゲーマーとしての意地を早く見せたいので、準備をお願いします」

「前の方の文章カットしようぜ……」

「それが僕ですから」

「……駄目だこいつ」

「早く?」

「何とかしないと……って、何人のセリフ横取りしてんじゃゴルアッ!」

「すいませんね。てか、早く始めましょうってば」

「はいはい。……じゃあ、ボクがシャッフルするね」

「分かりました」

 会長はそう言うと棚の方に向かった。生徒会室ということで、硬いイメージがあるかも知れないが、うちの高校はそういうわけではない。前任者の生徒会長が色々としてくれたおかげで、一時はこの生徒会室にもそういったものがなかったが、今ではしっかりとある。だから、暇な時にこうやって時間を潰すことが出来る。

 生徒会役員になると、何故かこう、暇な時間は無自覚に生徒会室に来てしまうことが多い。ここで弁当を食べることも多い。屋上が寒いのも一つ理由としてあるけどな。

「り、凛君。ボ、ボクの事をジロジロみるなあ……っ!」

「シャッフルしづらいですか?」

「とと、当然だろっ!」

「何でですか?」

「胸を見られている可能性がゼロじゃないから……」

「たわわではないですが、十分ですよね、Cもあれば」

「いや、結構恋とかエリザが憎い……あ」

 丁度、シャッフルししていた会長は、トランプのカードをテーブルにばらまいてしまった。

「……会長って不満抱えてるんですね」

「わわ、忘れろっ!」

 僕はそう言いつつ、会長のばらかしたトランプのカードを回収した。色々とテーブルに散らかったが、トランプのカードなのでそこまで回収に時間がかかるわけでもなかった。

「……見えちゃいましたよね」

「じゃあ凛君がやれよ……」

「仕方ないですね」

 選手交代のような感じで、会長からトランプを受け取ると、僕は先ほど会長がばらまいた表になっているカード群を裏になるように直し、再度シャッフルを行った。

「はい、いっちょあがり」

「まだ10秒じゃん……」

「何秒使用としてるんですかあなたは……」

「30秒?」

「やめなさい。はよ始めるぞ」

「えー」

「いやいや、やるって決めたじゃんか」

「じゃあしますか……はあ」

 何で会長がため息を付くのか分からなかったが、まあいいや。ともかく、ここでトランプして会長笑わせてやればいいでしょ。ため息疲れたんだから、それが吹き飛ぶくらいに会長をババ抜きで瞬殺してやろうじゃないか。

「それじゃあ、準備しましょうかね」

「お、おう」

 同じ数字のカードが2つ揃ったものを回収し、真ん中においた。

「さてと。……まずはこれかな?」

 先に会長からということにした。特に作戦というわけでもなかったが、後のほうが良かった、というそれだけの理由である。


 

 そして、それから数分で進められたゲームも終焉を迎えようとしていた。

「……会長。勝ちましたね、僕」

「まだ決まっていないぞ」

「こっちがジョーカー、こっちが……えいっ!」

「ちっ」

 僕が数字の書かれたトランプカードを引くと、会長が舌打ちをしてきた。

「うわー」

「よっしゃ勝った」

「その態度めちゃくちゃうぜえ……」

「ドンマイ、会長」

「ボクはそんなに下手だったかな?」

「いや、下手じゃないと思いますよ。ただ、運が無いだけでしょう」

「大体ラストでこんなに時間使うとかアホだよな」

「そうですよね」

「よし、じゃあ今度はジジ抜きだ」

「絶対に勝ってやる」

「ちょ、凛君、こ、怖いって……」

 会長の方を睨んだ時、会長は凄いびっくりした表情でそういった。

「すいません。……んじゃ、今度は上手にシャッフルしてくださいね」

「分かったよ、もう」

 トランプを会長に渡し、会長がシャッフルを始めた。


 ***


「これで終わりだッ!」

 それから1時間。途中、大富豪だとかスピードを混ぜつつも、ラストはやっぱりババ抜きで終えた。そして、そのババ抜きでは僕が負けてしまったが、最終的な結果は僕が会長に圧勝する形で勝った。

「むう」

「よし、会長。奢ってください」

「え? そ、そんなの聞いていな……」

「10万円、誕生日プレゼントに用意しているわけですし、アイス程度良いじゃないですか」

「……これってそのためにしてたの?」

「思いつきですよ」

「……仕方ないなあ。何が食べたいんだよ?」

「だから言ったじゃないですか。アイスです」

「真冬なのにか?」

「いいじゃないですか。ここは北国じゃありませんし」

「確かにそうだけど……」

「あの会長」

「ん?」

「もしも昨日、会長が熱出さずにこうやって遊んでいたら、会長は僕に逆らえませんでしたよね?」

「突然何を聞いてくるかと思えばそんなことか。……まあ、凛君の言ってることは間違っていないな」

「ですよね。……あとそのじゃあ、デートしますか」

「なにそれ」

「誕生日プレゼントデートというかですね……」

「誕生日プレゼントを本人の前で買わせるとか、凛君結構趣味悪いぞ……」

「お、ヲタクで何が悪いっ!?」

「いやいや、そういう意味じゃないよ!? ……まあ、別に10万円圏内ならプレゼントを買ってやらないわけじゃないけどさ、流石に本人の前で買わされるのも……」

「いいんです。……てか、10万とかいう大金いりませんよ。精々1万円で十分です」

「……いいのか?」

「構いません。……あと30分ですか、終わるまで」

「そうだね」

「……エリザと恋はもう帰ってますね」

「そりゃもう文化祭実行委員会の仕事ないんだし、二人共実質は帰宅部だし」

「恋は柔道最近やってないっぽいですけど」

「そうなのか」

「はい。……あの、会長」

「ん?」

「もう一戦、しますか?」

「意味深だな、おい」

「……引くわー」

「えっ」

「嘘だけどさ、ちょっと意味深とかいう女の子はマイナスだよねー……なんて」

「そ、そうか……?」

「というか、会長って結構エロトークに耐性有りますよね」

「今更何を言い出すんだ、凛君。前からボクは……」

 ちょっと笑いつつ、会長は胸の下で腕を組んで自慢するように話してくれたので、僕はその格好を崩すべく、耳元で息を吹きかけた後こういった。

「でも、実戦では耐久有りませんよね」

 そして再度耳元で息を吹きかけ、会長の様子をうかがった。

「ばっ……おまっ、夕方5時から耳元で何を……」

「ほら、やっぱり実戦じゃ……」

「そりゃあ実戦とか、き、君だけだもん……」

「やったの……ですか」

「もうちょっとディープに包めよ!」

「すいません。……しかし、寒くなりましたね」

「そうだな。12月10日だもんな。もう、今年も21日だぞ」

「早いですね、1年って」

「小さいころの頃は長く感じたんだけどねえ……」

「年寄りかよ」

「……泣いていい?」

「いや、なかないで! まあ、僕もそれは思ったことなんで、何となく分かるんですよね。ガキの頃と今って、絶対流れてる時間違うだろってくらい早いですし、あと少しで結婚とか、就職とか、色々と考えなきゃいけないし」

「ボクをお嫁さんにしてくれたら、就職は楽勝だし、お金もいっぱいあげるぞ」

「……街中で子供を誘拐するような真似をするな」

「そ、そんなことしてる覚えはないよ!?」

「そ、そうですか……」

「そ、そうなんです……」

「でも、意外と会長って昔の頃、『しょうらいのゆめは、りっぱなおよめさん!』みたいなこと言ってそうですよね。清楚なお嬢様って感じのお嫁さんとか、さぞかし羨ましいわ、会長の婿さん」

「結婚式では是非とも君を呼んであげよう」

「……まだ婿さん決まってないでしょ」

「わっ、悪いか!」

「まあでも、会長はちょっと二重人格ありますけど、マドレーヌほどじゃないし、きっとモテると思いますよ」

「そっか」

「で、会長は何処の大学進む気ですか?」

「そうだねえ。……まあ、ボクの学力を持って言えば、色々なところにいけるけど。……それは君も同じか、凛君。……学年一位の相手がこんな奴とはちょっと苛立ちを隠せなくなるけど」

「さり気なく酷いこと言うなあ……」

「エロゲバカ」

「悪かったですね! ふんっ! で、会長は結局……」

「決めた」

「え?」

「凛君と同じ大学に入る。そして、今まで以上に凛君と、凛君の回りの色んな人と仲良くして行きたい。友達いっぱい作りたい」

「遅咲きですね、会長は」

「だって、中学校からぼっちだったんだもん。……遅咲きとか、言うなバカ」

「泣きますか?」

「何選択肢っぽくしてんのさ……」

「泣いてもいいんだよ?」

「……いいよ、泣かないから」

「そうですか。……んじゃ、6時まで適当に動画サイト行って待ちますかね」

 シュッと僕はスマホをポケットから取り出した後、アプリを起動し、人気の動画投稿者さんの名称を検索窓に打ち、ヒットした動画を見ていった。


 ***


 それから約1時間後。生徒会長選挙の候補者受付も締め切られた後、僕と会長は学校を出て、共にアイスが売られているところへ来ていた。そう、トゥエンティーワンアイスクリームだ。

「いらっしゃいませ」

「あ、こ、これください」

「はい。……ええと、当店ご来店のカップル様に限りまして、店内での飲食の際、カップルジュースを提供しているのですが……店内で食べられますか?」

 店員さんがそういうと、途端に会長が僕の腕に自分の体を強く押し付けてきた。……やばい。Cカップだからとバカにしていた僕がバカだった。普通にでけえ。しかも、会長が顔を俯かせて下を向かせているのに、顔を真っ赤にしているため、とてつもなく仕草が可愛い……。

「り、里奈。ど、どうする?」

「こ、ここで食べよ……」

「そ、そうか。じゃ、じゃあお願いします」

「かしこまりました」

 店員さんはそう答えると、すぐに手慣れた手つきでアイスを掬い、そして盛り付け、もののわずか15秒程度でアイスを完成させた。その後、ドリンクサービスでメロンクリームソーダを入れてもらい、おぼんにいれてもらって僕らは椅子に座って相当遅いおやつを取ることにした。

「さてと。メールで送っとくかな、恋とエリザと姉ちゃんと美来に」

「結構凛君って女の子が回りにわんさかいるから一杯食べちゃいそうなイメージだけどさ、食べないよね」

「食べましたよね、一度だけ」

「ボッ、ボクを……か?」

「わ、悪いか。でも、あれだけですよ」

「そうか。……へへ。一人だけ、か」

 顔を紅潮させ、互いにアイスクリームを食べ始める。店内には暖房が効いており、すぐにアイスが溶ける様子はないものの、味が落ちるので早く食べたい。……いや、溶けてきたアイスを会長に付けるのもありか。

「美味しい?」

「美味しい」

「あと、これってその……」

 サービスで追加されたメロンクリームソーダに会長は少し戸惑いを示していた。恐らく、戸惑いというよりかはただの恥ずかしいという、そういう思いなんだろうけど、いつも会長らしくガンガン飲んでほしいものだ。

「の、飲もうか」

「そ、そうだよね。何か離婚間際の夫婦……じゃなくて」

「夫婦?」

「ばっ、そっ、そのカップルじゃなくて……」

「離婚間際のカップル?」

「……わ、分かれそうなカップルみたいに思われないようにっていうかさ」

「そういうことか。はあ、何照れてるかと思えばそんなことじゃないか。大したことでもないのに、何照れているんだ、全く」

「……で、でもその、出来るの?」

「何が?」

「す、ストロー二つにコップ一つなんだよ? しかも、さり気なくストローがハート型になってるし……」

「いいじゃんか。……まあ、確かに僕も恥ずかしくないわけじゃないけど、恥ずかしがってちゃ何も出来ないさ。……覚悟を決めて、飲もうよ」

「……う、うん」

 会長が覚悟を決めてくれたおかげで、互いにメロンクリームソーダを飲み進めることが出来た。だが、僕も会長もあまりの恥ずかしさに顔を下にして、俯きながら飲んでしまった。

「……か、顔上げてください、会長」

「で、でも恥ずかしいよそんなの……」

「だ、大丈夫です! 僕が付いてますから!」

「か、顔を見合いながら飲むのなんて恥ずかしいよ……」

「か、覚悟を決めてください!」

「……ああもう!」

 会長は押しに弱いようだ。だから、すぐに僕の言った事を呑んでくれた。

 顔を見合いながら、僕と会長はメロンクリームソーダを飲んでいく。互いに顔が真っ赤になっていったし、何よりこんなことをしているせいで、周囲からの視線がこちらに集中している。……恥ずかしい。めちゃくちゃ恥ずかしい。

「おい、凛」

「誰ですか……って、愁!? それにマドレーヌ……?」

「お前らやっぱり付き合って……」

「せ、正式じゃないぞ。でも、一応今はデートというか……」

「早く誰かに告白してしまえばいいのに」

「お、お前にはわからない悩みがあるんじゃいっ!」

 僕が少しアガったせいで、爺ちゃん言葉を使ってしまったが、まあいい。

「そうか。……なら仕方ないな。よし、マドレーヌ。今日は俺の奢りだ」

「愁さんさんくすー」

「だけど、あとでちゃんと身体で支払ってもらうからな」

「きゃー」

 イチャコラしやがって。……というか、愁の彼女ってマドレーヌだったのか。……しっかしまあ、対極的だよな。僕が仮に会長を彼女にしたとしても、恐らく互いに恥ずかしがり屋だから、色々と大変だと思う。その反面、愁みたいなチキンじゃない、ちゃんとした度胸の有るやつは羨ましい。

『チキン野郎』

『いきなり罵声を浴びすなこら』

 デビルマシンが急に発動し、心のなかで僕はサタンと会話を始めた。

『はー。久しぶりにこの時間に仕事が終わったよ。本当、我の職場は労働時間が酷いものだ。今日も昼飯を食えんかった……』

『いやいや、悪魔は必要ねえだろ、飯』

『確かにそうだが……。ああ、じゃあ寝るわ。里奈と末永く爆発しろ(おしあわせに)

 向こうから切ったよ。……はあ、しっかし悪魔に『チキン野郎』と言われるとはな。自覚していたのは確かに有るが、僕はそこまでチキンだろうか。……どうせチキンですよね、はい。

 それから、会長と少し会話をしたが、あんまり大きな話をすることはなく、僕と会長は食べ終わって外に出た。暖房が効いた店内に居たおかげで、若干の寒さは最初気にならなかったが、すぐに寒さに襲われたおかげで、会長が僕に擦り寄ってきた。

「……か、会長!?」

「寒いから、もうちょっと……」

「あ、あの」

「ん?」

「今日も居候するんですか?」

「それなら助かるが……」

「わかりましたよ。……ああ、一応恋か姉ちゃんが夕飯作ってくれているだろうし、夕飯は除いてですが、ちょっと買い物しましょうか」

「誕生日プレゼントのか?」

「はい。……例えば、ホテルに泊まる代金とかを1万円……」

「ホテルってことはつまりラブ……」

「もしそうだとしたらどうします?」

「……り、凛君だから許す。というか、ついていく」

「誘拐されるぞ、それ」

「凛君にだったらいいし……」

「はあ。……まあ、そんなこと僕はしませんが」

「しないんかい!」

「しないんだい!」

「……じゃ、じゃあ凛君は一体何がほしいんだ?」

「エロゲに決まってるじゃないですか」

「……よし、却下だ」

「じゃ、じゃあラノベ……」

「一冊630円と計算して、10冊で6300円だが、そんなに買う気なのか?」

「はい。エロゲの文庫版を買わないといけないので」

「……まさか凛君、ボクにそれを買わせようとしているわけじゃ無いだろうな?」

「……あの、会長。ここだけの御願いなんですが」

「なんだ?」

「……そのエロゲの小説版、アニメショップ行って買ってきてください。ついでにエロゲも」

「それで約9000円使う気なのかよ……」

「うん」

「じゃ、じゃあ褒美をくれたら行ってあげる」

「……ほ、褒美って何をすれば」

「決まってるじゃん。



 ――メイド喫茶で一日副店長の件、忘れたなんて言わせないよ?」

「……やっ、やっぱりなしに……」

「ダメ。男の子に二言はないよね?」

「うう……」

「よし、んじゃ元町行くか」

「ちょっ……」

「エロゲの件は明日、咲希に頼ませるから。ほら、行くぞ」

「……うええん!」

 少々泣きつつも、僕は会長に連行される形でメイド喫茶に一日副店長をしに向かった。


 ***


 家に帰ると夜の9時半だった。会長の怖さを今日、初めて僕は味わったが、本当に怖い人だと思った。自分もメイドコスをしているのに、僕ばかりイジリ、しかも店員皆が僕をいじるので、僕はどうにもならないのだ。

「でも、エロゲは……」

「大丈夫。ちゃんと買ってきてくれる。……ボクのいうことに二言はない」

「でも、これで僕が女装してメイド喫茶で働いたことバレたら僕……」

「死ぬね。その時は、僕がキミを抱いてあげるよ」

「おい」

「すまない。夜のテンションになってしまった」

 少し笑ってあげて、僕は風呂へと向かった。荷物をリビングに置いて、そのまま。


 ***


 作られていた夕飯は、恋作のものだった。ついさっき、メールで「帰って来んのおせーよ。デートかよ」と書かれていたのが送られてきたので、女って怖いなって思いつつも、僕は恋作の夕飯を口に運んだ。

「うまいな」

「ホント、恋は料理上手くて妬いちゃうよ、もう」

 そんなことを言いつつ、夜も11時を回ってきたので、学校で出された課題を仕上げてから、僕は寝ることにした。会長も共に仕上げたのだが、部屋が足りなかったので、会長はリビングですることになった。リビングでは、エリザと恋も共に課題をしていたので、ある意味女子会的な事をしていた。それは、あいつらの大きな声で分かった。

「……さてと。おやすみ」

 僕はそう呟いてスマホを顔の右横に起き、喉を変にしたくないのでマスクを付け、眠りについた。

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