表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Future  作者: 浅咲夏茶
7th Chapter;5 days of the last. -Until December 12 from cultural festival.
97/127

Target:Rina,Elisa,Ren,Shu,Rito and Nyx./episode96

「……なあ、凛?」

「どうした、愁?」

「……俺は彼女持ってるから変に妬いたりしねえがよ、何でお前、会長さんとエリザ様を両手に抱えてるんだ?」

「両手に抱えてるというか、両手に花って言うべきだろ」

「まあ、そりゃそうだけど……」

 12月10日水曜日。いつもどおり登校していたのだが、今日は少し違うことがあった。それは、会長が僕の左腕に抱きついてきていることだ。エリザに関しては、今まで文化祭実行委員会の仕事などで早く行く時などの例外を除き、基本的に腕を組みながら登校していたことが多かった。だから、ESSからみれば、僕は『ブラックリスト』行きの妬いてしまう対象、執行対象、その他諸々の対象になっていたんだ。僕の罪はないのに……な。

 まあでも、男というのは本当に悲しい生き物だ。女からの誘惑に負け、しっかりと指導を入れられないのだからな。……そう、それはエリザと僕の関係にも通用する。ああ、会長と僕との関係にも通用するか。恋は……。

「へっくしょんっ!」

「どうした、恋?」

「風邪引いた……うう」

「お前、最近風邪引きすぎなんだよ。熱は?」

「平熱だ。……うう、やっぱり昨日マフラー無しで懐炉なしで登校したのが間違いだったかな……」

「アホ」

「なっ……」

 殴りかけようとした恋を、僕は止めに入ることはしなかった。先駆者がいたのだ。

「殴るな」

「り、梨人!?」

「いやあ、おめえらと登校するのは久しぶりだわ」

 確かにそうだな。

「おい梨人。噂によればお前、色々と検定を受けてるらしいけど……」

「ああ、受けてる受けてる。……なんつうかその、俺は愁みたいに特別何か才能があるわけでも、ハマっていることが有るわけでもねえしさ……」

「それ僕も同じだわ」

「彼女持ちでもないし」

「それ僕……」

「何かお前にそう言われるといらって来るんだよな……何故か」

「はは、僕がそんな印象を梨人に与えるとは……」

「いや、お前だっていっつも女とイチャラブしてるように見える……」

「誤解だ馬鹿野郎っ!」

「悪い」

 特にハイテンションというわけでもなかったが、いつものノリツッコミで朝の登校をした。12月ももう二桁の日にちになったのか。時の流れはほんとうに早いものだ。そして、僕の誕生日まで残り2日か。ああ、誕生日プレゼント欲しいなあ……。

「で、僕への誕生日プレゼントは?」

「お前は唐突に何を聞いてくるかと思えばそんなことか」

「悪いな。待ちきれないんだ」

「意味深だな」

「ふざけんな」

「悪い。……まあ、予算は1万円ってとこかな?」

「じゃあそれ、ギフトカードにしてくれ。後でゲームで課金……」

「よし、プレゼントはなしだ」

「ちっ」

「嘘だバーカ。まあいいや。ともかく、ギフトカードでいいんだな?」

「お、おう」

「お前、機種は?」

「いやいや、ギフトカードで課金って来たら『Itunesカード』しかなくね?」

「ああ、そっか。Androidはクレジットカードが基本だもんな」

「そうだ」

「んじゃ、ギフトカード1万円分を、プレゼントとして送るよ」

「家近いんだから直接渡せよ……」

「しかたねえな。お前がそんなにまで俺を……」

「変な意味で受け取るな」

「ふっ。……でもさあ、俺も今頃こんなに一所懸命勉強して検定受けて資格とっても、結局は意味ないよな。まあでも、出席日数は大丈夫だしいっか」

「別に大丈夫だろ。つうか、僕だって前は学年20位程度だったんだし、努力すれば伸びるぞ、学力ってのは」

「……自慢にしか聞こえねえ」

「わ、悪い」

「悪くねえよ。天才とバカは紙一重って言うからな。発想は似てるんだよ。俺だってお前みたいなことを思った。検定の勉強しててな。だが、お前が言うとちょっとイライラするんだよ。やり場のない感情が浮かび上がってくるんだよ」

「悪いな。ああ、気分を害したのなら言ってくれ」

「大丈夫だ、問題ない。朝から悲しいことをするのは嫌なんでね」

「そうか。……なら、早く学校行くか。恋風邪引いたらしいし、両手にいるこいつらをどうにかしないと駄目だし」

「だな。じゃあ、行きますかね」

 そう言って、皆で行くのかと思ったのだが、そうじゃなかった。

「あ、悪い! 俺ゲーム研究会に用事があるんで……」

「そうだった! 俺も検定の合格のやつ確認日今日じゃん!」

 ご都合主義的な何かを感じたのだが、ラノベだから大丈夫だ、問題はないさ。

「……結局、主人公の周りに女の子が居るのはラノベじゃ宿命なんだね」

「突然何言い出すんですか、会長!」

「いや、メタ発言は控えろと言われたんでね。大きくまとめていったのさ」

「一つの創作品に関して言うのが悪いっていいましたけど、ラノベ全体をどうこういうのは結構アレな……」

「あれ?」

「メタっていうか……」

「『Meta2f』って、Metaって書いてあるけど、これ『メタ』って読めるよね」

「メタ発言いただけましたっ!」

 僕が少しテンション高めにツッコんだ。……が。

「・・・」

 え?

 何、この空気。え?

「あの、皆さん……」

 必死にこの場を収めようとするのだが、そんなことお構いなしに女性陣は審議に入った。

「審議だ」

「ああ、これは審議が必要だな」

「ですな」

 酷い。あまりにも酷すぎる。これは罠だったというのか。

 まあ、昨日罠に引っかかろうとして、結局それが罠じゃなかったからっていい気分になっていたなんて、微塵もないよ? そんなこと微塵もないよ?

 けど、いくらそれがあったからって審議ってそんな……。

「審議の結果、凛君のお笑いの才能はゼロでした」

「なっ……」

「てなわけで、凛君へのプレゼントの上限額もゼロ円で」

「何も買えませんよね、それ!?」

「まあ、ボ……ゴホッ、私に色々としてくれた褒美もあるので、それなりにあげるけど」

「やったー!」

「何がいい?」

「休みをください」

「じゃあ、ニートになれ」

「え……」

「引きこもれ」

「えっ?」

「嘘だ」

「そ、そうですか。……まあ、僕は強制的にニートやらされたら、渋々決意してニートやると思いますが」

「ニートを立派な職業みたいに言うなっ!」

「悪かったですねえ……」

「はは。……で、凛君」

「何ですか?」

「突然過ぎるかもしれないんだが、今日の夕方は開いているかな?」

「あ、はっ、はい」

「バイトの経験は?」

「あ、あります」

「ほう。……じゃあ、決まりだ」

「え?」

「今日の夕方から、凛君はメイドとして一日店員に命じる」

「なっ……って、それどういう……」

「私のお父様の経営するメイド喫茶が元町に有るんだが、そこの店長さんがもう少しで出産するんだ。めでたい話だろ?」

「ですね」

「で、それでだ。店長さんが居ないということは、店が持たなくなる可能性があるということだ」

「それは無いんじゃ……」

「そうかも知れんが、店を持たせたいだろ?」

「ちょっと理由こじつけすぎじゃ……」

「はい、と答えなさい」

「ちょ、酷くない?」

「仕方ないんだ。そうでもしなくちゃ、私の面子が持たない」

「いやいや、そんなんで会長の面子って出来てるんですか!?」

「ああ」

 マジかよ、と心のなかで思いつつ、いつもの会長の感じがするので別に心配はしなかった。これくらい話しやすいほうがいいや。特別、風邪引いた時みたいに話しにくくなるよりかは、こうやって気軽に話せる関係の方がいい。

「で、その店長の代理は私なんだが」

「まさか、副店長を……」

「違う違う! 別にそういう訳じゃないんだ。……いや、それであってるか。まあ、副店長は居るんだが、彼女が夕方から他のバイトを始めたらしくてな。その影響で……」

「それってまさか……」

「凛君。君が……」

「副店長、ですね?」

「Yes」

「断ります」

「だが……」

「僕には副店長なんていう役職を全うできるほどの力はないです」

「でも、店の責任者は私なんだぞ?」

「いやいや、それ以前にメイド喫茶でバイトとか、完全に女装……」

「だから、凛君はその声さえ変えればいけるんだって」

「はあ……」

 男が『可愛い』とか言われても嬉しくないように、僕は『女らしい』と言われるのは本当に気に食わない。姉ちゃんが言ってくれたのも一理あるのだが、それを会長とかに伝えたせいで、更に悪化の一途を辿っているように思う。

「じゃあ、わかった」

「え?」

「バイトしてくれたら、私が10万用意するから好きなモノをプレゼントとして買ってやる。ただ、その『モノ』は一つだけど」

「……分かりました。やります」

「おお!」

「でも、約束は……」

「大丈夫だ。問題ないぞ。私に任せろ」

「会長、忘れたら……」

「ああ、なんでもいいぞ。罰を与えてくれて構わない。だが、私はそんなおっちょこちょいな真似はしないがな」

「ですよね。……あ、エリザは何かくれる?」

 エリザの方を向いて僕はそう聞いた。次に聞くターゲットはエリザだ。

「……ダーリンは何がほしいの?」

「僕はギフトカード1万円がほしい」

「そんな大金無理だよー。……じゃあ、子作り権は?」

「やめなさい。破廉恥な」

「男の子が破廉恥って言っても効果ないよ?」

「ちょっ……」

 今まで以上に抱きついてきやがって。しかも、その爆乳を人の手にくっつけ、そして、上を見上げて上目遣いをしてきやがって。……可愛いじゃねえか。いや、前からエリザは可愛いけどさ。もう、アイドルとか目指して良いレベルだ。

「はあ、ホント破廉恥だよね」

「恋ももっと言ってやってくれよ……」

「でも、凛嬉しがってんじゃん」

「……は?」

「何か、『破廉恥』とか言って自分の下心隠そうとしてますけど、バレてるよ?」

「バレテーラ?」

「バレテーラ」

「……バレてないな」

「いや、絶対そういうふうに考えてたよね? つか、最初の間は何?」

 口笛を吹く。そして、恋との会話を断った上で、再度エリザに会話を持ちかけプレゼントの件を聞いてみた。

「で、どうなの?」

「そんな大金用意できないから、誕生日プレゼントはその、肩もみとかでいい?」

「ああ、全然いいぞ。というか正直、平和な時間さえ貰えれば僕はそれでいい」

「凄い考えだね、それ」

「そうかな?」

 ラノベの主人公なんて、平和な日常を送れないんだよ。宿命なんだよ。

 平和が一番、それは誰だって思う。でも、何処かで争いは起こる。それが人間だし、争いのない時代なんて無いのが現状だ。人は誰もが共存し、闘うのだからな。

『綺麗にまとめますね、ご主人様』

 丁度僕がそうやって脳内で考えていた時、デビルマシンからニュクスの声が聞こえてきたので、シカトするのもどうかと思い、僕は答えた。

『うるせえよ』

『これは名言として保存しておきましょうか』

『やめなさい』

『はは。……で、ご主人様』

『ん?』

『悪魔たちからのプレゼントは何がいいですか?』

『何を用意してくれるんだ?』

『平和な空間程度は、サタンの能力を使えば楽に出来ますし』

『いや、別に僕はそういうわけでしてるわけじゃねえし……』

『そうですか。じゃあ、プレゼントはなしでいいですね』

『別に構わない。……あとその、今の好感度を教えて欲しい』

『攻略するんですか?』

『違うわ。……ただあれだ。僕だって、こいつらと一緒に過ごす誕生日なんか、これが初めてだし、もしかしたら最後かもしれないし、楽しんでおきたいだろ? だから、好感度の高い方から色々と……』

『嘘ですよね』

『えっ?』

『――分かってます。ご主人様がやりたいことなんて』

『悪魔にはおみとおしなのか』

『そりゃ心のなかで私達は住んでますからね。ご主人様の心が壊れたら、それはもう、私達の心の壊れたことと思ってください』

『そうだったのか』

『そうだったようです』

『へえ。……じゃあ、その』

『なんですか?』

『僕がやりたいことを言ってみろ』

『それは……』

 ニュクスは、少し間を置いてから言った。

『――ご主人様と一番好感度の高い方を自らの彼女、行く行くは嫁にする』

『ああ、正解だ』

『そして、その日がディセンバートゥエルヴ、12月12日ですね』

『いちいち英語で一旦言う必要は有ったのか?』

『有ったんでしょう?』

『何で疑問形なんだ』

『すいません。……それじゃあ、私達は寝ます』

『いや、何で複数形なんだよ!?』

『皆、夜の出動のために夜型生活してるんです。なので、昼間のバトルは極力避けていただければと思うんですが……』

『今更言われても、前に昼に闘ったことあるじゃねえか!』

『それはそれ、これはこれです』

『「うちはうち、よそはよそ」みたいに言うなっ!』

『「ふくはうち、おにはそと」みたいに言うなっ!』

『全然意味違うじゃねえか!』

『ソーリー』

『だから英語でいう必要は皆無……』

 切られた。

 ニュクスとの会話が絶たれた。あいつめ……後で怒鳴りつけてやる!

「……険しい表情して、どうかしたのか?」

「何でもないです、会長。さあ、行きましょう」

「そうだね」

 そう言って、僕は三人とともに学校へと向かった。


 ***


『ご主人様と恋様、エリザ様、会長様との好感度を計測いたしましたのでお知らせいたします。

 相愛度はご主人様と女性陣との思いの強さを示し、友好度はご主人様の接している時の思いや印象が悪いかいいかを表します。デレ度は、デート時に計測したものが()内の表記のもの、通常時のが左の表記のものです。

 ご主人様には後でメールで伝えておくので、先に皆様にお伝えいたします』


■ 恋様 

 相愛度:85% 友好度:84% デレ度:48%(94%)

《解説》

 流石は12年来の幼馴染っ! 彼女はもっとアピールをするべきだ。いつまでツンツンしてるんだ! あと2日だぞ!? デレろバカっ!

 お前は誰よりもご主人様の事を知っているんだろ? それなのに、何でそんなにツンツンして自分の思いを伝えられずに居るんだ! そんなことしていたら、失恋すっぞ!


■ エリザ様

 相愛度:89% 友好度:92% デレ度:96%(112%)

《解説》

 脅威の友好度……やはりご主人様は豊乳好きなのか!? 豊乳好きなのか!?

 おいエリザ! 何自分の思いを犠牲にしてるんだ! 無駄な争いを避けたいからか!? そうじゃないだろ! お前は何しに日本に来た!? 神戸に来た!? ご主人様に思いを伝えなくても、お前はそれでもいいのか!?

 おっぱいは正義だろ! 私だって羨ましいんだぞ!


■ 会長様

 相愛度:82% 友好度:97% デレ度:55%(84%)

《解説》

 アピールが足りないっ! もっとアピールをするんだ、会長! それでも生徒会の代表か!? 生徒会長の面子はそれで保てるのか!? もっと、もっと積極的に攻めろ! 胸が足りなきゃパッドでも使えっ! 

 取り敢えず、もっともっと積極的になれ、バカ会長!


『以上で、計測結果発表を終わります』

 ニュクスのメールはそれで終わった。まあ、誰かに話そうとしていたのだろうけど、そのまま、原文のまま送ってきたのは何か意図的な何かがあったからかな。まあ、それは皆考えが異なる。ただ、僕はそう思うがな。


 ***


 メールを読み進めていった時、ある文字列が僕の目に入ってきた。

『――私の気持ちは、受け取ってくれませんよね、ご主人様……』

「えっ?」

 僕がメールを確認した時、最後の一文にそうやって書かれていた。

「これって……」

 恐らく、ご主人様って言っているということは僕の悪魔、そして計測を頼んだのはニュクス。つまり……。

『ニュクス、お前まさか……』

『この恋は、届きませんよね――』

『ちょっ、超展開すぎだろまず……』

『悪魔が、主人に恋したら、何かいけないことは有りますか?』

『ねえよ』

『じゃあ、受け取っていただけますか?』

『無理だ。でも、これからも悪魔と主人だ、僕らは』

『そう……ですか』

 少し、ニュクスが可哀想になってきたので、一応『可愛いぞ』と言ってやって、何とかその場を乗り切った。夜の女神はこうやってイジるほうがいい。でも、これで一人失恋させたんだよな、僕は。


 12月12日、2人が失恋……するんだよな。


「なんで僕は、梨人とあんなこと……」

 破棄しようにも、そんなことをしたらあいつの思いを踏みにじるわけだし、それこそこれを提案した理由って、僕を誰かとくっつけさせるため、恋愛させるためなんだろう。だから、それに応えなきゃダメだろ、僕はなんてバカなんだ。


 そして、今日も時間ときは流れていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ