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Future  作者: 浅咲夏茶
7th Chapter;5 days of the last. -Until December 12 from cultural festival.
95/127

Target:Elisa, Ren and Rina./episode94

 12月9日火曜日。朝、起きると当然のようにエリザが寝ていた。そして、エリザを起こし、リビングに降りてまず始めに驚いたのは、朝から豪華なメニューがテーブルの上に陳列されていたことだった。

「えっ……」

 思わず僕はそう口に出してしまった。全てが美味そうで、全て食べたくなるような、そういうメニューばかりだ。

 丁度エプロン姿……というわけではなかったが、もう制服に着替えていた恋がいたので、一応聞いてみた。

「やけに今日は豪華だな」

「いやあ、奮発……。あ、正直言うとですね……」

「どうした?」

「いや、なっ、何も……」

「何か隠してるだろ、お前」

「かっ、隠してなんかないし……」

「嘘つけ」

「わっ、悪かったなあっ!?」

「ああ、実に悪かったな」

「まあその、あれだよ。会長さんが今……」

「来てんのか」

「お、おう。……で、何か今シャワーを……」

「うは、オーケー、把握」

「『w』は要らねえのかよ! って、まさかお前……っ!」

「行ってきまーす」

「おいこら、流石にそれはダメだ……」

 恋が僕の手を掴もうと走ってくるものの、僕はその走りを見事にかまし、掴まれそうになった手を一度前の方に持って行き、そしてドアに手をかけ、恋の脅威から逃れることに成功した。

『お前後で殺されるぞ!』

「なんでだよ」

『なんでもだ! だからやめとけっつの!』

「そんな、会長が僕のことを殺しにかかってくるわけねえだろ。あの会長が、だぞ?」

『それでもだよっ!』

「全く、お前は一体何が言いたいんだか」

 戸の向こうから聞こえてくる恋の声に、少々苛立ちを覚えながらも、僕は少しの間恋の言い分を聞いていた。だが、会長が何故怒り、何故僕を殺しにかかるくらいの感情を持つことをするのか、それを考えられなかった僕は、そのまま強行突破を決断し、風呂場のドアを開けた。

「会長、来るなら来るってメールで言ってくださいよ、もう」

「凛君は結局来るんだな……」

「え?」

「幼馴染から止められても、私のところに来るんだな。……まあいい。その度胸、心に感じた。……あと、朝からシャワー使っていて悪かったな」

「いや、別に構いませんよ。ああ、どうせ恋が風呂場は掃除してくれているので……」

「凛君って意外と恋に頼ってるんだな」

「頼っている、というより、任せているって方が有ってるかもしれないですね。まあ、あいつは小さい頃に親亡くしたので、それだけ親から教えてもらうはずのことでさえ、ただただ教えてもらえばいい事でさえ、あいつは人に聞かなくちゃできないので、掃除とかは僕の姉ちゃんが叩き込んだんですよ。で、結果的に……」

「超家事的な女の子になったわけか」

「そうですね」

「……ところで、だ」

「どうしたんですか、会長?」

「……突然かもしれないんだが、今日一日居候することになった」

 マドレーヌみたいなことをする気なのか、このお嬢様会長は。

「まあ、居候位いいですよ。夜は、何処で寝るきなのかによりますけどね」

「当然凛君の部屋だ」

「却下します」

「前に一緒に……」

「前は僕以外に男が居たけど、今回は男がいない……」


「――『男』がいればいいんだな?」


 ……これ、まさか会長の変なスイッチを入れた感じじゃないだろうな?

「そりゃ、異性が同性より多い時は話しづらいですからね」

「……分かったよ。着替える。ちょっと待ってろ」

 会長はそういった後、すぐに風呂場を出て、タオルも巻かずに脱衣所へと戻ってきた。

「か、会長、タオルくらい着けてくださいよっ!」

「誰だよ、人にこういう真似させてるのは」

「……わ、悪かったですね」

「ああ、実に悪いぞ」

 恋に言ったな、それさっき。


 僕は会長の方を見ないように反対の方向を向き、心を落ち着かせ、素数を心のなかで声に出さずに数えだした。1、3、5、7、11、13……。

「よし、これで大丈夫だろ」

「えっ……」

 振り返り、会長の方を向くと、以前見た執事姿の会長の姿より、遥かに格好良くなっている会長が居た。……格好良いじゃん、この子。なんなの、マジ。

「……そんな制服よく持ち込みましたね」

「……もっ、持ち込んだ訳じゃないんだ」

「え?」

「その……」

 続けようとした時、一旦間を入れてから会長は、僕の耳元でささやくようにして伝えてきた。


「――悪魔になった」


 僕は、驚きを隠すことが出来ずに、「えっ」とか、「マジかよ」とか、そういうことしか言い返せなかった。

 そして、少し落ち着かせた後、僕は会長に聞いてみた。

「……会長。結局、悪魔ってことは誰かのモノなんですよね?」

「……まあ、な」

「その所有者は誰ですか?」

「本来なら同性の主人が良かったんだが……キミだ」

「えっ」

「御主人様は、その、凛君だ……。ほ、ほら、いいぞ。首輪もその、用意しておいたからその、ご自由にというわけじゃないんだけど……」

「いやいや、何ですか『ご自由に』って。というかまず、会長が仮に僕の悪魔だったとしても、僕は首輪なんか着けてあげませんよ。公然の前で付けるなんて、着けた奴と一緒に歩くなんて、僕は嫌だからな」

 きっぱりと僕はそう告げた。

「じゃあ、首輪は無しですか」

「まず会長は犬じゃないし」

「見下したりしないんだね……」

「そりゃあ、元々年齢は会長のほうが低くても、会長は憧れるような所多いですし」

「例えば?」

「その巨額のマネーとか」

「それは無理だ。お前には絶対に無理だ」

「稼げないかもしれませんが、もう一つ裏の方法があるじゃないですか」

「何?」

「結婚ですよ。……まあ、金のために結婚なんてしませんが」

 僕はそう付け足しておいて、足音を立てつつ、会長の側に向かい、肩を叩いた。

「その『悪魔』という状態をとくために、必要なことは一体なんですか?」

「き、キスとか……」

「えっ」

「とと、とにかくその、私の口から言うのもアレだけど、く、口説けっ!」

「え」

「ウソでもいいから、口説け!」

「今ですか?」

「今でしょ!」

「ふる」

「ひっでえ」

 まあ、もう流行語なんて発表されてるし、1年前の流行語なんて寒いわな。

「……口説くことはちょっと無理です。なので、キスでいいですか?」

「キス、か」

「魚じゃないですよね?」

「そりゃそうだろ!」

「……じゃあ、放課後待っててください」

「でも、仕事……」

「終えてからでも十分時間有るだろ。まあ、会長が言っていたように二度目のデートになるんでしょうけどね、それは」

「一回目は無計画すぎたけどね」

「そりゃあ、会長が突然……」

「突然じゃないと思うけど」

「はあ……。まあその、僕の悪魔である会長は、僕の魔法陣の中に……」

「そそ、そうは行かないんだっ!」

「え?」

 僕が首を傾げると、会長は俯いて語ってくれた。

「今、ボクは人間であって、悪魔なんだ。だから、魔法陣の中に入ろうとしても、入ることが出来ない。だから、それは無理なんだ。いつもより多くの魔力がいま出てるから、結構ボクの身体は火照ってるんだぞ……」

「そ、そうですか」

「確か38℃くらい……」

「休んでくださいよっ!」

「だ、だけど仕事……」

「そんなの僕がしますから! ……ていうか、そんな体温ならデートは延期ですよ、会長。……はあ、とにかくその格好でもいいので、僕の部屋で寝ていてください。今日は僕、3限で早退してきますので」

「バカ! 人の心配なんかすんな!」

「会長は休んでてください。……万が一、学校で倒れられたらどうしろっていうんですか。それに、トイレの中で倒れたりでもしたら……」

「とっ、友だちがいないからってそういう事言うな、バカ」

「……分かりました。じゃあ、ニュクスに作らせます」

「そ、それならボクだって魔力使って……」

「疲れてるのにムリしないでください」

 僕は抵抗する会長をしっかりと抱え込み、そのまま脱衣所を出て、僕の部屋に連れて行ってベッドに寝かせておいた。そしてニュクスを召喚し、昼飯に『おかゆ』と定休して欲しいことなどを伝え、僕はそのままリビングに戻った。

「会長が風邪引いてるから、お前らも気をつけろ」

「うっ、うん……」

 驚いて反応を見せた恋がそう言っていたが、恐らく僕も突然言われたらそういう顔と言葉を発しただろう。

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