Target:Rina,Elisa and Ren. part2/episode93
今日もまた色々とあって、そして夕方4時半を迎えた。6限終了、からの生徒会の仕事の始まる時間である。2週間前までみたいに、雑談ばかりの生徒会がまた始まろうとしていた。……現実問題、二次元の生徒会は雑談ばかりしていられるが、そうもいかないんだよな、割りとガチで。
「……あ」
「どうしました?」
「今日、生徒会長選挙のアレ……」
「あっ……」
会長の不都合により、生徒会長選挙で重要となる会長候補だとか、副会長候補だとかのそういったものが、文化祭に力を注ぎすぎたおかげで全然準備されていなかったのである。本来、文化祭当日に選挙を行うはずだったのだが、それを会長が延期し、まあこれは宇城先生も認めたことなのだが、それ以外に、更に延期するとなれば、あの先生は激おこぷんぷん丸、いやムカ着火ファイヤーだろう。
「ぼっ、僕は関係ないので……」
「ふざけんな」
「いや、あの、あれは会長が……」
「どうせ家帰ってもエロゲするだけの君に、仕事を任せないで何を任せろっていうんだ?」
「……」
言い返せない。クソ、恋のやつ、会長にまで……いや、会長は前に僕の家に来たことあるし、前々からバレてるか。だが、それもそれで嫌だよな。自分の趣味を否定されるなんて、結構嫌なことだ。
「まあ、ボクはその、そういうゲームは持っていないから分からないんだが、そういうゲームの魅力って一体何なんだ?」
「そりゃあ、ゲームの中の女の子は皆『理想』とする女の子なので、そういう子を見つけられ、自分の嫁を決めるため、有る一種の調べる手段……」
「ひっでえ」
「嘘です。ただその、可愛いことイチャイチャしたいだけです」
「三次元じゃダメなのか?」
「いや、僕はどっちでも行ける口なので……」
「そっか。……じゃあ、だな」
会長は途中で言葉を断ち、僕の方へと歩み寄ってきた。
「ちょっ……」
「……ボクは、凛君が好きだ」
「えっ……」
「思いをその、打ち消したりしてるけど、好きだ。本気だ。……嫌なら嫌と言ってくれ。その方が凛君にもプラスになるし、ボクにもプラ……」
会長は「プラス」と言おうとしたんだろう。でも、心のなかに込み上げてくる思いが涙腺を緩ませ、心のダムを決壊させた。
「……何で、泣いてんだろ」
「な、泣かないでくださいよ……。か、会長らしくないですよ!」
「……ボクらしくない、か」
会長はそう吐き捨てるように言うと咳払いをして、身体を伸ばした。外のほうを見れば、辺りは雨、雨、雨……。何処を見ても太陽の光はなく、ざあざあという、あの雨の音が耳に伝わってきた。
「……凛君がよければ、ボクはエリザちゃんが言ってるような、『子作り』とか、そういうのとかもその、きょ、興味が無いわけじゃないから……」
「へっ、平然と言わないでくださいっ!」
「……だ、だけどもしその、もし仮に、仮にボクが凛君とけ、結婚したら、やっぱりその、子孫を残さなきゃいけないというか……使命があるというか……」
見た感じ、あのお父さんはそんなことを会長に命令する人じゃないと思うんだけどなあ。……って、おいおい。何でさっきから『子作り』だの、『子孫』だの、ちょっと話しそれたら、一歩足踏み外したら大変なことになりそうなこと話してんの? ここ生徒会室だよ? 生徒会長候補来るんだよ?
「……あの会長。一応、一応聞いておきます」
「う、うん」
「子作りの意味、分かってますよね?」
「ばっ……」
顔を真っ赤に染め上げ、会長はふいに下を向いた。そして、小声で「うん」と頭を上から下に動かした。と言っても、下を向いて俯いているため、会長が上から下に動かしても、小さく動かしているようにしか見えない。
「結婚しないと子供が出来ないとか、そういうことも……」
「だ、だから知ってるよっ!」
「そういうのに、興味は……」
「だ、だから何度も言わすなあっ!」
やばい。あの女の子、可愛いんですけど? ……まあ、元から会長はちょっとした二重人格的な所(例題をあげるとするなら、神戸港の件)を除けば、本当にいい人だし、成績も優秀だろうから、そういう知識も付いているだろう。
と言っても、僕みたいなエロゲー大好きな人間じゃないので、恋みたいにむっつりスケベではなさそうだ。
「……あとその、好きとかは本気……なんですよね」
「本気だぞ……。あ、あとその、……い……ら」
「え?」
「――初恋、だから」
僕の顔もちょこっとばかし真っ赤になってしまった。その言い方は反則じゃないのか? 顔を真っ赤にし、横を向いてから、顔を何処に向ければいいのか戸惑いつつ、結局上の方を見て、前の方を見て、表情を柔らかくする感じ……。素晴らしい。なんて素晴らしいんだ。
「会長」
「ん?」
「僕の誕生日まで、時間をください」
「そっか。……でも、それってつまり、他にも、ボク以外にも告白した……ああ、エリザちゃんが昨日……」
「まあ、うん。昨日」
「恋ちゃんは?」
「恋は……。まだ、かな。まあ、こんなこと言うのも何なんですが、あれなんです。梨人と、12月12日になったら、誰かに告白しようって。それまでに、好きな人を作っておけって。でも、僕はふざけ半分で彼女なんて作り悪ないんで、本当に、真剣に考えます」
「……じゃあその、最後にキスを、してほしい」
「えっ……?」
「も、もしこれが凛君との最後にキスになるかもしれないのなら、キスを……して欲しい」
会長がそう言いながら僕の方に近づいてくる。そして、一定の距離を保つのかと思いきや、そういう訳では無いようで、更に僕に近づいてくる。
「……12月12日が、待ちきれないんだ。そして、嫌だったとしても、一回だけ、一回だけでいいから、頼む……」
会長は、そういうと上目遣いという、禁断の手を使用してきた。それが僕にとって効果がどれだけあるのか、それを会長は十分知っているはずなのに。……全く、この人は。
「じゃあ、一回、一回だけですよ?」
「お、おう……」
そして、僕は唇を交わそうとした……が。
「――生徒会長候補届け出をしに来ました。失礼いたしま……」
人生は、生きるか死ぬかだ。フラグを立てていたのか、今確認作業を急ぐが、決してフラグのようなものはなかった。静かだったから、足音には気づいたはずだ。……しかも、彼女の制服のリボンの色は2年生の色だ。つまり、後輩。『後輩』に、生徒会のトップが、アレをしようとしてるところを見られたわけだ。
「あ……あ……」
「ちっ、違うんだ、これは!」
「会長さんが……そんな……」
届け出をテーブルの上に置くと、彼女は猛ダッシュで生徒会室を出て行った。
「――終わったな」
僕はそう確信した。
それから、会長からキスを持ちかけられ、結局してしまった。やっぱり、僕は押しに弱い。本当に押しに弱い。押されればなんでも許してしまいそうなくらい、押しに弱い。
***
完全下校時刻、夕方6時を回った。辺りは暗く、外も寒くなってきていたのがわかった。文化祭実行委員会の仕事を終えた恋、それにエリザは、僕と会長が仕事を終わらす何時間も前に帰った。今後、生徒会から、または先生からの呼び出しがない限り、彼女らは長い時間居残るようなことはないだろう。
「……じゃあ、また明日」
「おう」
会長に別れを告げ、僕は帰路についた。
***
「ただい……って、エリザ、お前料理なんかして……」
「あっ、おかえりダーリン!」
あの、エリザさん? 何を企んでいらっしゃるのでしょうかね? あれですか? 僕を殺す気ですか? ……ふざけんな。まだ17で、成人もしてないのに僕を殺すなんて、そんなの理不尽だ! もっと生きたい!
「こ、今回は何作ってんだ?」
「凛の義姉さんから聞いたレシピどおりに、チーズハンバーグを……」
まあ、出処が姉ちゃんなだけマシ……か。こいつが自作で作ろうものなら、僕の命はあと少々で消えてしまうに違いないだろう。そう、余命1時間、余命30分、下手したら余命10分の可能性さえ有る。
カレーのように、出来たらすぐ味見しようにも、量が決まっており、形を崩すわけにもいかないため、中々手がでないのが現状だ。
「待つか」
「あっ、その、こ、この前みたいなマズイご飯じゃ……」
「それを願うよ」
「願う!?」
「だって、信用できねえもん。この前、殺されそうな弁当作られたやつのは」
「うう……」
「いや、結構真面目な話、お前家庭的じゃないからさ、本当学ぶべきだぞ……」
「まっ、学んでるもん!」
「ああ、最近やっとな」
最近、と言っても、エリザが来た事自体が最近なのでわかりにくいか。
「……まあともかく、うまい飯を頼むぞ。……あ、姉ちゃんは?」
「バイトだそうです」
「美来は?」
「彼氏の家に泊まるとか言ってた」
「えっ」
あいつに彼氏いるのか。……まあ、妹に『お前の彼氏誰?』とか問いただしたところでって話だし、あんまり関わるのはやめておくべきか。
「だから、実質私と恋、そしてダーリンだから、は、ハーレムだね」
あのさ、なんなのエリザって。なんでこうやって危険球になりそうでならなさそうなボールも投げてくるの? 僕、これに引っかかったら死んじゃうよ? 結構いい役職に居るのに、一気に転落しちゃうよ?
「……まあ、危険なご飯と思ったら、すぐに恋に作ってもらえばいいか」
「酷いよ、全く」
「すいません」
「その謝り方は謝罪じゃないでしょっ! ……まあ、許すけど」
「……で、恋も呼ぶわけ?」
「でも雨降ってるからね……」
「まあいいっしょいいっしょ。呼んできてよ」
「はあ。……くれぐれも焦がすんじゃねーぞ」
「当然だろ!」
エリザは結構自信満々に言っていたが、僕は中々信用できなかった。
***
夜7時を回っていることを僕は自室の時計で確認した。そして、恋の部屋へと雨の中移動し、恋の部屋へと入った。そこまではよかったのだが……。
「なあっ!?」
「えっ……」
そこには、全裸の恋がいた。生まれたまんまの姿の恋が。それなりの胸もあるし、何か近づいてもいないのにいい匂いが部屋に充満してるし。
「みっ、見るなあっ!」
「見てない見てないっ!」
「……ああもう、下着さえ忘れなければこんな……」
「一緒に風呂入る?」
「嫌に決まってんだろ! 帰れ!」
「あ、夕ごはんは一緒に食べような、恋」
一応言っておいた。来るか来ないかは別問題として、無責任かもしれないが、言っておくだけでもいいだろう。
でも、恋の裸体めちゃくちゃムチムチしてて、出てるとこ出てて、足もそこまで太くないし、色んな所で美貌が輝いていた。恋は性格さえ良ければ、後は丸く収まるのにも関わらず、その美貌をその性格で台無しにしてしまっている。
「恋」
「なっ、なに? ……てか、早く出てけえっ!」
「じゃあ、恋が先にご飯食べろ」
「えっ……」
「僕の家のリビングまで、裸でこい」
「い、嫌だよ!」
「じゃあ、風呂一緒に入ろう」
「死ねえっ!」
「……仕方ねえ。諦める」
「そうだ。最初から諦めればいいんだ」
「だから……タオルを取れええええええっ!」
ちょっとした出来心だった。好奇心だった。ガキみたいな心だった。
「やっ……えっ……」
見てしまった。見てない見てないと僕は心に言い聞かせたが、全てそれは無駄だった。
「なっ……」
一時的に空気が重くなり、静かになる。
「死ねえええええええっ!」
結局、ツンデレの恋の力には勝てないんだと、そう思いつつ、僕は痛みにこらえながら雨の中の部屋と部屋とを渡り、自分の家のリビングまで戻った。
***
夕飯の最中、僕は恋と喋らなかった。というか、喋れなかった。あんな状況を生み出した上、恋には色々とやってしまった。お陰で、恋の機嫌は降下し、僕に対して苛立ちを覚えているはずだ。
その証に、夜10時頃になると、恋の部屋の明かりが消えた。つまり、恋は寝たのである。普通に僕の部屋に来ればいいものを。ツンツンしやがって。
そして、夜11時。ゲームをする気力すら無くなった僕は、エリザと一緒に寝た。……だが、寝付けなかった。何気にエリザからいい匂いがするのだ。今までこんに意識したことはなかったのだが、ふと意識してしまう。……それが男ってことなのかな?
僕は一度心を落ち着かせ、エリザの話に耳をむけた。
「……ダーリン」
「ん?」
「ダーリンの本命は誰なの?」
「何で寝るときも恋愛話なんだよ」
「だって、私が告白したのに『マジ?』とか『ライク?』とか……」
「いや、僕だって彼女とかまだいないし……」
「でも童貞じゃないんでしょ?」
「バカ、それは言わない約束だろ」
「本当なんだ」
「ああ」
「……それなら、気軽に赤ちゃんを作れるね、ダーリン!」
「お前ってやつは……。あ、そうだ」
「ん?」
「エリザって、今高3……なんだよな?」
「うん。ドイツじゃ9月からだからね、新学期が始まるの。だから、一応私は日本の高校生活にならすため、ちょこっと色々手続き踏んでるんだよ」
「ほう」
「だ、だからそれなりの成績は保障出来るんだよ!」
「学年順位どれくらいだったん?」
「毎回10位以内だったよー」
「凄いな」
「ダーリンは学年1位の常連じゃん」
「まあ、昔はお前と同じく10位以内の何処かをうろついてたよ、僕も」
「ナカーマ、だね」
「顔文字連想させるように言わないでくれるかな」
「ごめんごめん。……ところで、ダーリンは何人に告白されたの?」
「ちょっ……」
エリザは、そういいながら僕に身体を任せるように抱きついてきた。
「……意識しちゃう?」
「やめなさい、はしたない」
「嬉しいでしょ?」
「まあ、そりゃあ、な」
「へへへー」
「こらっ、その豊満な胸を押し付けるな!」
「ダーリンの持ってるエロゲって、幼なじみモノに巨乳ばっかだよね」
「なっ……」
「そんなに恋が好きなの?」
「違うよ!」
「でも、会長と一夜を交わしたんでしょ?」
「……」
「図星か」
図星とかそういう以前に、メタな発言からさせてもらうと、本文中に書いてあるから……ってことだし、僕も僕で「過ち」みたいに思ってるし、あんまりそれをいつまでも抉られたくはない。
「寝よう」
「ちょ、ダーリン話逸らすなあっ!」
エリザがそう怒ろうとしていたが、僕は怒られる前に眠りにつこうとした。でも、いいにいおいがしたので僕は中々眠りにつけなかった。
「本当、ダーリンは鈍感だな」
未明に、遠くから誰かの声が聞こえていた。




