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Future  作者: 浅咲夏茶
6th Chapter;Band members and culture festival.
87/127

Target:Ren,Rina, Madeleine and Elisa./episode86

「夕飯どうする?」

「デートの時でも夕飯とか、お前は何なんだよ全く」

「いや、家に帰ったらエリザちゃんとか、それこそ居候するマドレーヌとか、もしかしたら会長さんだって……。まあ、会長さん来たら大丈夫か」

「そうだよ。てか、寒いよな。……手、繋ぐか」

「さり気なく繋げっつの」

「照れるな照れるな」

「……うるせえっ」

 少々ツンツンしながらも、恋はすぐに手を差し伸べてきた。力強いいつもの恋とは反対の、デレてる恋は、本当にクソ可愛い。うん、本当。

「さてと。まあ、こんな事しても首寒いんだけどな、僕」

「何さそれ。……まあ、察すことができればわかるけどさ」

 お節介バカ、とかさっき言っていたけども、本当に恋はお節介バカである。デートの時でも他人の事を考えるなど、そういう風なお節介バカだ。まあ、『お節介野郎』と言わないのは恋が女だからであり、男だったら普通に野郎とか言い合える関係なんだろうな。

 ただやっぱり、幼馴染だとしても異性ということもあるので、中々こう、手をつなぐとかこういう事をしたことはなかったのだが、本当こうやって手をつなぐことが出来るのは意外というか、珍しいというか、僕だって照れてしまっているのは確かなので、昼間にこんなデートしたら恐らく恋にまた馬鹿にされるネタにされているに違いない。

 まあ、そんなことされたらこちらも黙っちゃおかないけどな。やり返してやればいいだけの話だし、別にそんなにネタにされる程度で泣いたりする人間じゃないぞ、僕は。

「恋」

「ん?」

「何処行きたい?」

「……決めてねえのか」

「悪いな。……まあ、取り敢えずお金は3000円程度用意してある」

「この前使ったからだよな。分かるぞ」

「くっ……把握しやがって……」

「本当、凛は私が居ないとダメだな、全く」

「僕は小遣い帳とか、そういうのつけてないしな……」

「そんなことしてたら両親の貯蓄食べていくだけで、すぐに終わると思うよ」

「何が?」

「今みたいな生活。それに、私だってお父さんもお母さんも居ないし、一応貯蓄あるから少しは足しに出来るかもしれないけどさ、やっぱり凛の親御さんの貯蓄が消え、私の両親の貯蓄も消えたら、もう立ち直れないくらいになるかもしれないんだよ?」

「だから小遣いをちゃんと把握しているってことか」

「そういうこと。それに、凛には立派な男になってほしいから、弁当も」

「お前本当、インスタント系は絶対許さないよな」

「わ、悪いか……」

「悪くねえよ。どうせそれも僕のためにしてるんだろ?」

「うん」

「なら問題ねえじゃん。……さてと。デートプラン決めてないんだけど」

「はよ」

「急かすなよ」

「凛が話題を持ちかけてきたんだから、お前のせいじゃね?」

「悪いな」

 3000円で何が出来るのかって話なのだが、やっぱり夕飯食べるくらいしか出来ないよな。ラーメンとか、牛丼とか、そういうものなら500円以内で食べられるのだが、高級ディナーとかさ、デートだからって奮発しちゃうとかえって逆効果になりかねないし。……難しい。

「恋は夕飯何がいいの?」

「うーん。……普通のでいいよ。でも、こってりしたやつとかお肉系はNG」

「なにそれ」

「一応、私も女の子だし……」

「別にニキビも有るわけじゃないんだし、そんなに……」

「昼飯で有ったからいいじゃんか!」

「まあ、確かにそれはそうだけど……」

「だから、お肉はNG。……そうだね、適当にスパゲッティとかいいかも」

「マジか」

「別に凛が作って欲しいってなら、デート終わってから家で作ってあげるけど」

「スパゲッティをか?」

「うん。でも、帰る時間によるね。例え猛スピードでやろうにも、それなりの時間かかるし、凛がデートで使う時間によるね」

「金を使わせたくないだけだろ、それ……」

「違うよ。まあ、確かにデートだからって奮発する気持ちはわからなくないけどさ、だからって普通そんな大人みたいに兼ねかかる場所行く?」

「僕のプラン全否定ですか」

「いやまず、出来なくね? 3000円じゃ……」

「じゃあ、夕飯は恋が作れよ。じゃあ、遊覧船……」

「却下。3000円じゃ一人しか乗れない」

「ちっ」

「なんだそれ」

「うーん。じゃあ、どうすればいいんだよ?」

「デートは明日に持ち越しでいいじゃん」

「外出た意味ねえな、おい!」

「ツッコミ有りがとう」

「そりゃどうも」

「……じゃあ、動物園行くか」

「電車で?」

「ああ」

「んじゃあ、私もお金持ってくね。何千円いる?」

「5000円あればいいだろ」

「……割り勘とか絶対あり得ないからな?」

「へ?」

「まあいいや。取り敢えずまだ5時過ぎだし、適当にパン買ってくか」

「何故にパン?」

「スパゲッティ食べる時、ちょこっとプラスでパンあると美味しいだろ」

「え?」

「いやだから、パンにスパゲッティ挟む感じで……」

「ああ、あれね。僕は焼きそばの方がいいと思うけど、それはお前の好きだな」

「そ。んじゃ、適当にスーパー寄っていきますか」

「スーパーよりコンビニでいいんじゃね?」

「本当お前はバカだな。……学力では上のくせに、何故分からない。パンといえば、普通『できたてベーカリー』だろうが!」

「……成程な」

「まあ、その前にちょちょいと銀行寄っていけば良い話で」

「じゃあそれで行こうか」

「だね」

 互いに了承し合い、僕らは銀行に向かって歩いて行った。


 ***


「さてと。取り敢えずお金を5000円……って、こらっ」

 抱きついてみた。……デカイなこいつ。やっぱりデカイぞ。いつもサラシつけて誤魔化してるくせに、最近サラシ外して大きさを強調しやがって。全く、こんな事したら姉ちゃんも美来も怒るだろうな。あとエリザはむすっとするだろうし、会長はスルーか? マドレーヌは……どうだろ。

「大きいな」

「死ね」

「悪い」

「わりとマジで死ね」

「……すいません、本当すいません」

「仕方ない、許す。……まあその、揉まれて悪い気はしないんだけどさ」

「えっ?」

 訊き返してみた。聞こえたんだけど、2回言って欲しかったというか。ああ、こんなこと考えてる僕って本当に変態だな。変態すぎて相当キモい。

「何でもない」

 やっぱり言わないか。そんなの。


 その後、近くのスーパーで買い物を済ませ、僕と恋は家に戻った。


 ***


「ただいま」

 恋の家に帰宅した。僕も部屋に戻らなくてはいけないので、恋の部屋を経由して僕自身の部屋まで戻った。二度手間する必要性は有ったのか議論をする必要はない。こうでもしなくちゃ、万が一会長が僕の家にいて、マドレーヌが恋の家にいて、二人があってやばいことになったら、事態の収束を付けられないだろう。


 そしてもう一度恋の部屋を経由して戻ってきた。

 恋の家のリビングにはマドレーヌの姿があった。マドレーヌは、ソファで寝ていた。暖房を付けていたのだが、これまたお嬢様らしく設定温度は24度。しかも部屋がめちゃくちゃ快適な温度になってやがるし、テレビはつけっぱなしだわ、テーブルの上にスマホを置きっぱなしだわ、本当このお嬢様は凄いもんだ。

「スパゲティ作るから、凛はエリザと遊んでな」

「エリザを子供扱いするんじゃねえよ」

「でも、ESSとかいう親衛隊あるし」

「それはそうだけどさ」

「あいつらってエリザちゃんのそういう所を好きになったんじゃないかな?」

「ある意味それロリコンってことだよね」

「そうかな? 合法じゃないの?」

 まあ、確かにエリザの誕生日は11月22日だし、合法であるのは間違いじゃないか。

「合法だな。……で、遊んでるとかいう話は一体どうしろと?」

「まあ、とりあえず色々と話してろ」

「……寝てるんだけど」

「は?」

「エリザ居た。でも、寝てる」

「マジか。……今日って葉紅さんバイト?」

「バイト」

「じゃあ、私が何人分作ればいいんだ?」

「マドレーヌ、僕、恋、エリザ、美来……5人分だな」

「5人分か。……仕方ないな、作るか」

「胸揉んであげようか?」

「何故揉む必要が有る?」

「肩凝ってそうだから」

「だからそれはエリザにしてこいっつの」

「じゃ、エリザを呼んでくるか」

「勝手にどうぞ」

 恋は、先に風呂を沸かそうとしてリビングにあるやつを操作して、恋は慣れた手つきですぐにスパゲティを作り始めた。まあ、僕も恋の家でごはんを食べるのは久しぶりだし、本当は皆で食べたいのだが、マドレーヌと会長を会わせていいのか否か。……まあ、会長の姿は今のところ見受けられないんだけどね。

『ボクを邪魔者扱いするなんて酷いぞ』

『会長!?』

『どうした。……まあ、一応ボクは凛君の部屋に居るぞ』

『マジですか』

『マジでっせ。嘘なんかじゃないでっせ』

『証拠は?』

『ちょい待ち』

 会長はそう言うと、すぐにデビルマシンを落とし、行動に移った。


 恐らく1分程度だろうか。それくらい経過して、会長から『オーケー』と伝えられ、僕はその会長の声に答える形で「どうぞ」と言った。

 すると次の瞬間、恋の部屋のドアが開く音がした。

「やあ」

「……マジで居たんですか、会長」

「悪いな。トイレに行っていた」

「何で貴方は、人の家に勝手に上がり込んでトイレ借りてるんですか」

「本当は私が色々と君に奉仕してあげようと思ったんだけど、生憎そうもいかないようだったからね。それに、トイレに行きたくなるのは人間の本能だぞ?」

「……そうですけどね」

 反対できない。だって本能だもんな、トイレに行きたくなることは。まあ、シモイとか言われるからあんまり強い言及は避けるけれども、本能を避けるのは無理に等しいのだ。前に会長の家でやってしまった件に関しても、あれは本能の赴くままだったので、ある意味仕方ないのか……な? でも、責任はとらないとそれはそれでまずいしな……。

『だからその件に関してはもういいっつの。ボクだって、その、感じてたのは事実だし……えとその……』

『それ以上言うな!』

 一応ストッパーを入れておいた。こうでもしなくちゃ、後々に響くだろう。

『ごめん』

『別に悪い訳じゃないんです。……会長とマドレーヌって一緒に居て問題……』

『無くはないと思う。でも、ちゃんとボクもマドレーヌと会話するのは久しぶりだから、嫌じゃないし、問題が大有りだとしても、ボクはマドレーヌと一緒に一日過ごしてみたい」

『そうですか。……じゃあ、恋の部屋でも使ってください』

『そして凛君は恋とエリザを抱くわけか』

『意味深なこと言わないでください、全く。……まあその、流石に僕の部屋に女の子二人泊めるのは無理があると思うんです』

『エロゲーあるから?』

『まあそれもそうですね。一応恋も持っていないことは無くないんですが、流石に男が女の部屋に泊まるのは結構アウアウな感じじゃないですか』

『ああ』

『だからその、恋の部屋に泊まって欲しいんです』

『分かったよ』

 会長はすんなりと受け入れてくれた。

『ただ、もしかすると部屋の住人が断るかもしれないので、一応断っておいてください』

『はーい』

 もしかしたらの話だが、結局恋と僕とエリザが僕の部屋で寝る事になると思う。ただもう一つの分け方として、恋が『自分の部屋だから』ってことで、自室で寝ることになる可能性もゼロじゃないのだ。というわけで、今恋は『選択肢』を2つ出されているわけである。……僕も度胸のない人間だから、中々人の部屋を借りてもらおうという、変な努力しか出来ないのだが、それはそれで成長の一課程として考えてほしいものだ。

「恋」

「ん?」

 僕は口を開け、恋に聞いた。そして丁度その時、会長が恋の部屋から出て、そして階段を降りてリビングへ向かってきた。続けてエリザも起きてきたらしく、会長に続けてエリザもリビングに来た。

「お前今日、僕と寝るか? それとも部屋で寝るか?」

「な……っ!」

「へ、へ、変な意味は無いぞっ!?」

「わ、分かっているけど……。で、で、何? 究極の選択肢か何か?」

「そうなる。別に変に拘束力はないけどさ、会長とマドレーヌが一緒の部屋に泊まることになると、変な事態が起きかねないかなと思って」

「……女同士の嫉妬は怖いからね」

「恋も誰かに嫉妬したことあるのか?」

「あるある。勉強関連はしょっちゅう凛に嫉妬してるよ?」

「Really?」

「いちいち英語で聞くなよっ! ……まあ、嫉妬してるのは確かだぞ」

「だからお前は学年25位っていう順位を叩きだしたのか」

「まあね。……バカにしてるだろ」

「いや……」

「ちっ」

 軽く舌打ちを受けた。ただまだ僕は本題について答えを聞いていない。

「なあ、恋」

「ん?」

「お前、結局どうするつもりだ?」

「寝る時でしょ?」

「ああ」

「……うーん」

 普通に悩んでる恋。悩んでる姿も可愛いな、おい。なんだろう。エプロンつけてるからかな? めちゃくちゃ心に響いて悶そうなんですけど!?

 まあ、文章にすればこんな感じだ。

 ① マドレーヌと会長の関係を気にしながら寝る。

 ② 凛(僕)とイチャラブすることを考えながら寝る。

 ③ エリザと一線を越えながら凛にバレないように寝る。

 ……選べなくね? これ、安価スレ立てたほうがいいんじゃね? ……って、そういやこういうの聞こえてるんだよな、会長に。

『おう』

『まるっきり聞こえてるじゃねえかっ!』

『まあ、ボクはそういう秘密は守る主義だから大丈夫だ。問題ないぞ』

『問題大有りじゃんか!』

『まあまあ、落ち着けって』

 会長はちょっと僕の反応に戸惑っていたが、すぐに戸惑いもなくなり、恋の返答を待った。だが、恋は返答よりも夕飯作りに熱中しだしたので、結局僕が文章で恋に聞くことにした。

「じゃあ、この中から選べよ?」

「何? さっきの続きの話?」

「ああ。選択肢を3つ考えてみたから、お前ならどうするか考えて欲しい。じゃあ、もうさっさと3択出させてもらうよ」

「ばっちこい」

 料理作りながらも恋は会話をしてくれた。手馴れてるんだな、ホント。

「① マドレーヌと会長の関係を気にしながら寝る。

 ② 凛(僕)とイチャラブすることを考えながら寝る。

 ③ エリザと一線を越えながら凛にバレないように寝る。


 さあ選べ!」

「……あのさ」

「ん?」

「自分で自分の名前『凛』って言っちゃうのはどうかと思うよ?」

「だって、お前いっつも僕のこと凛って言うじゃん」

「だからって……」

「いいのいいの。さ、選べ」

「え。……じゃあ、②で」

「お前そんなに僕のこと好きなの?」

「なっ……」

「冗談冗だ……」

 冗談だ、と僕は断じてこれが本気でないことを強調したのだが、恋には伝わらなかった。作業効率も悪くなるからやめて欲しかったのだろうけど、してしまうのが男の本能。サディストの本能ってもんだ。

「……えいっ!」

 200mlのカップに沸騰したお湯を入れると、恋はそれを僕の方に向かって掛けてきた。

「熱っ!?」

 この時の恋の笑顔を僕は忘れることは出来なかった。「何気に大笑いしていやがるな、このやろー」って感じだったからだ。


 ***


 恋のお父さんは、元々神戸の三宮にイタリア料理店を構えていたのだが、突然の事故死で閉店に追い込まれ、結局恋のお父さんの築き上げた店舗も潰されることになった。だから、恋にはそれなりのお金がある。でも、恋はそれを使う気にはなれないらしく、僕のお父さんやお母さんからお金をもらっていた。今思えばひどい話だが、それでも僕の両親は恋を可愛がっていた。

 だが今、僕の両親も恋の両親も死んでしまっていて、恋はため息ばっかついていたのだろう。一人の時、一体恋がどんな感じなのかは分からない。だけど、悲しんでいたことは想像できる。

「……スパゲティ、美味いや」

 そんなことを思いながら、僕は恋の作ってくれたスパゲティを口に運んだ。マドレーヌと会長が夕食を共に食うのを見るのは始めてだ。夜会の際に、彼女らが食べていたのかは分からないので、それを含めればこれが2回目になるかもしれない。


 スパゲティの味は、まだ僕が保育園生の頃に食べた味に似ていた。記憶が無くなる少し前、その時食べた味に。


 ***


「スパゲティ、美味かったぞ」

「あざーす。……で、結局エリザを一人にさせていいの?」

 ギロリとエリザはこちらを見てきた。

 時刻は夜10時前。風呂に入った後、僕とエリザ、それに恋は僕の家に渡ってきていた。厳密には僕の部屋なわけだけど。

 会長の言う話では、『土曜から日曜の24時間で』的なことを言っていたので、恐らく徹夜することになるのだろう。だから、こんな早い時間から寝るのである。

「ダーリン寒いよおっ!」

 エリザが僕に抱きついてきた。……これじゃいつもと同じじゃねえか。

「なあ恋……」

「いいんじゃないかな、こうやって寝るのも」

「馬鹿か。人の体の上に乗っかられているのに誰が寝れるってんだ」

「お前が寝れる」

「寝れないって言ってんだろうがっ!」

「はいはい。……さ、寝ようか」

「ちっ」

 恋は一切話を聞いてくれなかった。一方のエリザはすぐに眠りについた。3秒で寝れるとか、そんな能力はないのだろうけど疲れたのかな?

「……さてと。明日はデートだね、凛」

 僕は恋の言葉を無視した。寝たかったためだ。

「起きてる?」

「寝てる」

「起きてるじゃん」

「悪い」

「凛とのデート、楽しければいいな、なんて……はは」

「期待しすぎるなよ」

「はーい」

 そんな会話を交わした後、少し早いながら僕と恋、そしてエリザは眠りについた。まだ恋の部屋の明かりはついていたけれどな。

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