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Future  作者: 浅咲夏茶
6th Chapter;Band members and culture festival.
86/127

Target:Madeleine,Ren and Android./episode85

「……しかしまあ、お前もつくづく酷いことしてくれるもんだな」

「お前が挑発したんだろう、マドレーヌ」

「馬鹿か。私はお前を挑発した覚えはない。……ふっ、このバトル30秒でケリを付けたかったけど、やはりもう少し楽しむべきだわ。……クレイア、取り敢えず待機しなさい」

「ですが……」

「倒すのは後よ。まずはあのクソの体力を減らすわ。その後に麻痺らせて殺す」

「殺す? ……はは、またまたご冗談を」

「あ?」

 マドレーヌの目はマジだった。冗談という顔じゃない。本気らしい。そして、僕がマドレーヌの方をじっと見ていると、マドレーヌはクレイアから剣を強引にもらい、そのまま足音を立てながら先ほどまで居た自分の定位置に戻った。そして、剣を立てて言った。

「クレイア。やれ」

「え?」

「……『殺れ』と言っている」

「ですが主人様、先ほどのご命令……」

「気が変わった。本当に、あの『凛』という男は質が悪い」

「殺れといっても一体どうやって……」

「動力炉を突くようにだ」

「動力炉を……突く?」

 一体何を言っているのか分からなかったけど、僕はすぐに身の危険を感じた。一応、召喚しておいたニュクスに前方を、イブリースに後方を守ってもらうよう指示し、サタンには左方、そして僕は右方を守る体勢を整えた。

「……あの男の心臓をつつけ」

「はい、主人様……」

 剣を持ち、とてつもないスピードと脚力で、僕のすぐ目の前まで飛んできた。そして、目の前で剣を振りかざした。だが、クレイアの振りかざした剣は僕ら4人に避けられ、それを逆手に取ったニュクスがクレイアに、光技を食らわせてくれていた。

 ただ、水属性の悪魔を出していなかったのだけは非常に後悔である。ただ、それ以外のことはなんということもなく、イブリースとサタンの活躍の場が無かったのが現状である。

 前回サタンは活躍しているしそれはそれでいいのかな?

「何をしている、紅月クレイア」

「……あんたに……言わへなくれも……」

「呂律が回ってねえぞ」

 僕が指摘するも、やはり連峰のような高いプライドのクレイアにはそんなこと通用することもなかった。そういうもんなんだ。闘いって。だから嫌いなんだ。誰か一人を敗北に導く、それで人は幸せになれるか。

 これは裁判じゃない。でも、ここで攻略に持っていくのはもう時間が遅すぎる。何せもうバトル始まっちゃってるしな。

 ……待てよ?それはマドレーヌには通用するが、紅月クレイアには通用するのか? もししないのであれば、攻略のほうがいいだろう。口説くのは置いておくことにして。

「……紅月」

「なん……あっ!?」

 唐突ながら、僕は紅月の胸を揉んだ。一歩間違えば警察沙汰であるが、ここでこうやって一か八か足を踏み入れることも重要なんじゃないか、と僕は考えたのである。ただ、これをすることは結構度胸がいるわけで、僕にだって守りたい事はあるから、それをズタズタにされる訳にはいかない。

「紅月」

「何ですか」

「……可愛いな」

「えへ……へへ……」

 攻略開始というわけだが、意外とすんなり行けるもんだな。

「何をしている、クレイア。殺らないのか?」

「……分かった気がする」

 紅月クレイアは始めにそう言い、自分の胸を揉まれているのにもかかわらず、ため息をつくことも、つんつんした態度をとることもなかった。

「……私、今日から凛様をご主人様にします」

「え?」

「……私が最初に笑顔を見せたのは、貴方ですから」

 え、何?

 落ちたの?

 デレたの?

 僕はまだ状況の把握が出来ていなかった。今まで敵対していた相手が、こんなにもすんなり落ちるものなのか? ……まあ、確かにチョロいヒロインというジャンルは居なくはない。居なくはないよ? けどさ、こんなに簡単に落ちられても僕は困るんだよ。うん。

 もしかして、胸揉んだのが大きかったのか? ……それこそ、胸が契約をするときの判子的な感じだとか、そういうこと?

「あの、笑顔を最初にって一体……」

「薄々気づいてるんじゃないですか、主人様」

「……僕の言ったことが、届いた感じか?」

「主人様が私を口説くためにあんなことを言ったのであれば、私はそれはそれで許しますし、説教という観点からみても、あれだけ強く語りかけてくれたのは貴方が初めてでした……」

「そうか。それは良かった」

「マドレーヌさんは、酷い人でした。でも、約束してくれますか? 私を叱ってくれますか? 笑顔を、時々見せてもいいですか?」

「構わねえよ」

「でも、私は悪魔じゃなくてアンドロイド……」

「それくらい会長に聞けばいいんじゃねえかな。まあ、お前が欲しいというなら部屋くらいくれてやる。な、恋」

 流石に僕の部屋で過ごされるのも、これまた僕の平和な日常を阻害するだけに他ならず、僕はやっぱり人を頼った。今回は恋をだ。

「私!?」

「やっぱり驚くよなー」

「分かってんならちょっと考えてから言えっつの」

「悪い悪い。まあ、後で戦勝デートするから、もうちょっとそこで見ていろ」

「で、で、で……」

「デートがどうかしたのか? ……まあ、僕もお前との二人きりとか久しぶりだしな。たまにはお前もちょっとヒロインっぽくしてもらわないと」

「メタ発言すんじゃねえよ。バトル中だろ」

「……悪いな。あとは彼奴を自滅に追い込めばこっちの勝利よ」

 僕はそう言って、一度深呼吸をして剣を再度構え直す。

「サタン、イブリース、戻れ! ……ラストはお前とだ。ニュクス」

「いや、ここはやっぱり私じゃなくてクレイアさん使うべきじゃ……」

「クレイアを向こうに貰われては困る。折角こっちの方に来てもらったんだ。本人の意志だ。そんなんを、あんな抑えつけ女に渡して堪るかって話だ」

 僕の言い方も少々考えなければいけないと思うけれど、やっぱりそれくらい強く言わないとダメだ、と僕なりの解釈を加えておく。

「さあ、ニュクス。殺るぞ」

「殺すんですか?」

「いや。殺しはしない。一応攻略して最後は落としたいんだが、まあそうもいかないし、ここは現実を呑んで、殺るしか無いか……」

「結局殺るんじゃないですか」

「殺しはしねえよ。一歩手前で……止めとくだけだ」

 剣を魔法陣から取り出した僕は、それを右手に持った。その後もう一度剣を取り出し、2つ目の剣は左手に構えた。そして、僕は目を紅に染めながら、髪の色も黒がかりした色から、炎主体の紅の髪の色へと変貌を遂げた。

 そして、今までのバトルをしてきた空中から僕は降りて、地上に戻り、そこで足音を立てながらマドレーヌの方に近づいていった。

「……僕はこういうことしか出来ねえんだ。他の作品を真似ることとか、そういう事はしたくないんだ。けど、そうなっちゃうのは何故なんだろうな」

「あ……あ……」

「大丈夫だ。お前を殺しはしない。……ただ、社会的に生きれないようにしてやるけどな」

 僕は左右に剣を構えて前へ、前へと進む。一方のマドレーヌは、後方へ、後方へと下がり、丁度ベンチの辺りにぶつかって、痛そうにしながら止まった。

「大丈夫!?」

 さり気なく優しさを出す。マドレーヌの背中を初めて擦ってみたのだが、やっぱりこいつも丸っこいな。外見では胸の戦闘力はそこそこみたいだけれど、会長譲りというか何というか、一応実の姉と妹だから、結構似ている。胸のサイズとか身長とかはどうか知らないけどな。

「……御免なさい」

「あ?」

「犬とか、そういうつもりはなかったんです。ごめん……なさい」

「怒ってるわけじゃねえんだよ。こっちは、お前を指導してやってるだけ。確かに二重人格の人はこの世に千といるよ。僕が二重人格の人全員を攻略できるはずがないし、マドレーヌだったから攻略ができた」

「何……だ?」

「だからさ、話には無かったけど、これからお前――



 ――僕の犬になれよ」

「せめて猫で……」

「それはどっちでもいい。ともかく、これからは僕がついていてやっから、二重人格直すぞ」

「……凛。うわ、うわああああああああっ」

 ……泣き出しちゃったよ。

「はいはい、胸貸してやるから好きなだけ泣け。……ちょっと制服汚れるかもしれないけど、良かったわ、一応予備買っておいて。取り敢えずクリーニングに出せばいい話しだしな」

「……汚い?」

「猫を汚いなんて言っていたら、家の中じゃ飼っておけねえ。それに、今寒いんだし、汚かろうが家に入れておくべきだろ。温かいしな」

「じゃあ、その、私をお前の家に居候させてくれるのか?」

「それとこれとは話しが別かも知れんが……。まあ、お前が会長と過ごすのだけは勘弁、というのなら別に構わないよ。ただ、居候するときは、毎月ちゃんと払えよ、家賃」

「馬鹿かお前は」

「飼い主に向かってバカとは失敬な」

「テストも付けるよ?」

「話のキャッチボールできてなくね?」

「みたいだね。……でも、一応私も帰らないとメイドさん心配するし。……あ、じゃあ、その、この件はこれで一件落着でいい?」

「いいよ。じゃあ、最後にメアドだけ交換しよう」

「なんで?」

「お前が二重人格になった時、それを阻止しないといけないからだ」

「……そっか。でも、考えてみたら男の子とメアド交換なんて……」

「まあ、一応僕、これでも姉ちゃんに『女っぽい』って言われるし、女として見てりゃ話しやすいと思うよ。……まあ、最近じゃそれにも逆らいたくなってるのは事実だけど、イジられて嫌な気分じゃないし、なんつうかそう言われることで自分が男っぽくなる事に重要な事が分かったりするし、意外と嫌じゃないんだよ」

「ほう。……んじゃ、えと、今日だけ……お願いします」

「はいよ。……んじゃ、先に家に帰るか。恋とのデートはそれからだな」

「え?」

「話し聞いておけよ。まあ、エリザが帰ってるだろ、きっと」

 丁度その時、僕のデビルマシンから声が聞こえてきた。

『帰ってるよ。ボクも一緒だけど』

 会長の声だった。ただ、心で会話しているので恐らくここにマドレーヌが居ることは伝わっているだろう。……ほら、やっぱり僕の家じゃなくて簾の家に居候させたほうがいいって。絶対、そっちのほうがいいって。

「ただ、男の家に女が上がりこむのもおかしいし、恋の家にいれば大丈夫。安泰だ。少なくとも、僕の男友達は来ない」

「凛の部屋占拠するだけだもんね、彼奴等」

「彼奴等とはお前、失敬だぞ」

「友達同士に失敬なんてなくね」

「礼儀は必要だぞ、友達の間でも」

「まあ確かにそうなんだけど……」

「んじゃ、取り敢えずデートの予定入ってるし、早く戻って、早くこいつを連れて行きますか」

「何その『彼女借りますよ』的な言い方」

「少なくとも、僕はそんなやつじゃない」

「会長とやったくせに」

「う、う……。あ、あ、後で仕返すかんなっ!」

「うるうるしてる目が可愛いと思います」

「ば、馬鹿にするなああああっ!」

 僕はちょっとキレ気味だったが、これくらいでキレてちゃ僕の名が廃るってもんだ。だから、これ以上キレないように心を落ち着かせ、僕はマドレーヌを家まで送った。当然、恋も一緒に来た。そりゃあ、デートするお相手が傷ついた状態の女だったら嫌だからな。


 ***

 

 会長とマドレーヌがバッタリ合わないように祈りつつ、僕は恋を連れて家を出た。何故、女というのはここまで支度に時間を取るのか僕には理解できなかったが、やっぱり身だしなみをきちんとしたいんだろうな。後は……。

「お、おまたせ」

「終わったか恋……って」

「どうした?」

 言えないよな、普通。『胸のとこだけ盛り上がってますけど』とか言えないよな。……どうしろってんだよ、ったく。ただまあ、何処をデートするかだとか、そんなこと考えてないし。まあでも、そんなん会長の時同様、行き当たりばっかりでもいいかもな。あくまでこいつは『幼馴染』だ。デートって言っても、前に色々とこじつけたことをやり忘れたから今やるだけで、特に他に深い意味は無いし。


 夕方5時少し前。夕焼けも夜に包み込まれ、辺りが暗くなり始めた頃、寒さを感じた恋はマフラーを付け、耳あてを付け、色々と防寒してくれたのだが、やっぱり僕の分はないらしいです。まあ、そうだよな。くれるはずがないよな。常識的に考えたら、そうじゃなきゃ嫌だ、というか。やっぱり、例え人の家の家具類の配置とか分かっていても、そこまでくると逆に嫌だ。ちょっと『キモい』とか、そういう風に思ってしまう。


 あとは……恋が甘えてきてくれればいいんだけどな。エリザみたいにとは言わないけど、いつもいつもつんつんされてると、デレを早く見てみたいという気持ちが高ぶる一方なのである。だから、早く甘えて欲しい。

「なあ、恋」

「ん?」

「デートなんだし、もっと甘えていいぞ」

「あ、甘えるとかそんな……」

「無理にする必要はないぞ」

「でもじゃあ、手を……えへへ」

 可愛いじゃねえか! クッソ! クッソ!


 少々萌えながらも、僕はこのデートのスタートを楽しみながら切っていた。

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