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Future  作者: 浅咲夏茶
6th Chapter;Band members and culture festival.
85/127

Target:Ren,Madeleine and Android./episode84

 夕方4時半。呼び出された場所へ僕は向かい、到着した。少し早かったりしたかもしれないが、まあそんなことは関係ない。しかしながら、何故この神戸の街に神なんていう奴が降臨するのだろう。

「……凛」

 僕の名を知っているアンドロイドが現れた。そのアンドロイドは、前に見た紅月クレイアそっくりのアンドロイドだった。

「――紅月。お前、一体何がしたい?」

「私は主人の命令に従うアンドロイドです。機巧アンドロイドは、主人の命令に反する行動を取ることは出来ません。従って、主人の命令に従い、貴方を処刑します」

 処刑。僕が何をしたっていう話だが、まあそんなことはどうでもいい。ともかく、何故この紅月クレイアというアンドロイドがここに僕を呼び出したのか、僕はそれが聞きたい。

「何故、お前はここに僕を呼び出した?」

「主人の命令にない内容の事柄を、私の口から話すことは出来ません」

「話せ。……そして、恋はどこに居る?」

「それも伝えることは出来ません。何度もいいますが、主人の命令に従わないアンドロイドはおかしいのです」

 僕は、そう言われた後、ふ、と堪らずそう表情をくずし、咳払いをし、紅月クレイアの方を見て言った。

「……じゃあ、お前には自由がねえってことか」

「はい?」

「お前には、翼はないのか?」

「自由の翼、ですか?」

「ああ」

「そんなの有るわけ無いでしょう。私は望んで生まれてきた身では有りません。ですから、まず生まれた時から自由という概念は存在しないのです」

「……アンドロイドだから、お前には自由がないと言いたいのか?」

「その通りです」

「筋が通ってねえな」

「はい?」

 紅月クレイアは顔をかしげた。

「お前は、主人を困らせたことは有るか?」

「無いに決まっています。困らせる機巧は、ただの産業廃棄物です」

「そうか。……ふっ、笑わせてくれる」

「凛、何を言いたいのですか?」

「悪魔と機巧じゃそれなりに違う所はあるかも知れん。だが、一つだけ言わせてほしい。




 ――お前、わがまま言ったことねえだろ」

 僕は紅月クレイアの方をじっと見た。紅月クレイアは、僕に言われた事を呑み込むと、一度咳払いした。図星だと思い、「どうなんだ?」と僕は強く聞いてみたが、紅月クレイアは僕の言ったことへの返しはしなかった。

 僕はそれを確認した後、続けて紅月クレイアに向かって言った。

「僕にはな、悪魔達がいる。ニュクス、サタン、イブリース、その他諸々な。……だけどよ、彼奴等に聞いてみろ。『楽しいか?』って。もしかしたら楽しくないかもしれないけどよ、僕は僕なりに彼奴等の『ワガママ』を聞いてやってるつもりだ。特にニュクスなんてその中でも本当に聞いている方だ。

 別に、ワガママを言うことは悪いことじゃない。ただただ、主人に仕えることだけが、それだけが機巧としての役目だと、お前は思うのか?」

 紅月クレイアの方を僕は見てみた。クレイアは、一切動じることはなかったが、やはり何かを隠そうとしているらしく、ため息を付いていた。

 だが、やはり紅月クレイアは僕に対しての返答をくれることはなく、僕はさっきに続いて、今回もまた続けて言った。

「カラオケ行ったり、遊んだり、プレゼントをやったり。バンドを通して、有る一つの目標を目指して頑張ったり。……お前は、そんな経験したことあるか?」

「……」

「じゃあ聞く。経験してみたいか?」

 僕は問う。確かにそれが僕にとってマイナスかも知れなくても、相手にとって、紅月クレイアにとってプラスになるのなら、僕は別に構わない。悲しんでいる悪魔も、女神も、人間も、そしてアンドロイドも、笑顔に出来るのは僕だけだとかいう、変な厨二病的な何かが、僕の脳内を染色していった。

 だけど、そう強く思うことで、自分の意志を覆されない強い志のようなものが出来た。これだけは覆されそうになっても抵抗してやろう、そう思うものが。

 攻略っていうのは、人を笑顔にする一つの手段であるということを、僕は今再確認した。

「……たい」

「もう一度言ってみろ。聞こえない」

「経験……してみたい」

「そうか。……お前の主人は、それを許すか?」

「許さない。主人は私を許すことはない」

「それは何故だ? お前がアンドロイドだからか?」

「それも一つある。ただ、私の事を奴隷同然のように扱っている事も……」

「奴隷か。……まあ、アンドロイドをイコールで考えるような奴だとはまさか思わなかったが、そういう奴だったのか、東條マドレーヌという女は。

 なあ、マドレーヌ。聞いてるんだろ? 早く恋を連れてこっちへこいよ」

 挑発を行う。しかし、マドレーヌの声は聞こえなかった。聞こえるのは、神戸港を出てくる船の汽笛だけ。空もオレンジ色に染まり始め、綺麗な夕陽が瀬戸内海の方を照らす。

「東條マドレーヌ。出てこい」

「男っていうのは惨めよ、全く」

 声が聞こえた。マドレーヌの声。だが、初めてマドレーヌにあった時の声とは大違いだった。でも、その声が作っているものだということ、そして足音を立てて近づいてくる女のシルエットが、前に見たマドレーヌと同じだったことが重なり、僕はすぐにそれがマドレーヌであるということを確認できた。

「いきなりなんだ。お前も、親から遺伝を受け継いでいるわけか」

「遺伝? ……馬鹿じゃないの。こっちはね、イライラしてんの。わかる?」

「分かるわけねえだろ」

「そう。……なら、闘いましょうか」

「何故だ? 無駄な争いだ」

「そう。……そうだよね。魔力結界を無効にできるもん、こっちは。そりゃ、貴方みたいなチキンハートな人間は、その場で立ち尽くすことしか出来ないわよね。……本当、死んでくれないかな、チキンな男」

「は?」

「……分かってないんだ。鈍感だね、本当」

「悪いな、鈍感で」

「それもそうだよねえ。だって、恋の本当の気持ちに気づいていいないんでもんね、お前は」

「……え?」

「出てこいよ、恋」

 マドレーヌは笑顔でそういった。悪い顔だ。全く、ふざけやがって。恋に何をしたんだ、あいつは。

「……分かりました、お、お、お嬢さ……」

 首輪、そして手錠をかけられ、顔には殴られた箇所が多数見受けられた。

「お前何をした」

「……主人公ヅラ? 死ねよ」

「人を殴っといて、お前は何故そんな笑顔でいられる?」

「楽しいもん、人殴るの。ね、クレイア?」

 クレイアは、「はい、主人様」と、言いたそうではないような感じでそう口ずさんだ。嫌々ながら言っていた。言わせているのか、あの悪魔おんなは。

「人の姉を口説き、海外から来た幼馴染を口説き、そして捨てるんだ」

「な、何を言って……」

「選べよ。自分が犬になるか、恋が犬になるか」

 犬。つまり、奴隷という意味であろう。

 僕は恋を助けたい。助けたくなかったらこんなところに来ていなかったさ。それに、あんなに傷ついている幼馴染を見て、普通放っておけるか? ……無理だ。少なくとも普段から弁当作ってもらったり、こちらからは定期テストの時期になると、それに応じて勉強を教えたりしている。

 そして何よりも、12年来の幼馴染だ。腐れ縁のな。

「究極の選択肢じゃないだけマシだな、ホント」

「……金縛りくらい、クレイアに命令すればすぐに浴びせられるんだけどね」

「金縛り? ……誰がお前に金縛りなんて受けるもんか」

「そう。……お前は、幼馴染を見捨てるのか」

「そんなこと言ってるわけじゃないが……」

「見捨ててんじゃんか。12年来の幼馴染らしいな、お前ら」

「ああ、そうだよ。僕が記憶喪失する前から、恋とは幼馴染だった。悪いか」

「いや。悪くない。……じゃあさ、やってみてよ。恋を犯してみてよ?」

「で、出来るわけねえだろ……」

「へえ。じゃあ、この女が殺されようとしても、お前は犯さないの?」

 殺す? 一体この女は何を言って……。まさか、こいつ恋を殺す気なのか?

「……殺すなんて話聞いてねえぞ」

「嘘だッ! 今お前は聞いた。聞いた、聞いたッ! 絶対に私の口から聞いたッ! ……分かった。じゃあ、犯さないんなら、この女は殺すよ」

「何故だ」

「ん?」

「何故恋を殺す必要が有る?」

「決まってんじゃん。おめえが悪いんだ」

 マドレーヌはその瞬間、とてつもないおかしな笑いをして、紅月クレイアからナイフを強引に引き受けると、そのまま恋の方に向かって行った。

「お前が里奈と性交渉するから悪いんだよ」

「え……」

「私さ、マジで西條家嫌いなんだよね。うちのクソババアがお前に攻略されたみたいですけど? まあ、あのババアも底辺に堕ちたもんよ、本当」

「……」

「んでさ、西條家に関わってるお前を殺したいんだけど、やっぱり人が悲しむのって、本当に大切な人を殺されそうになった時に初めて悲しむと思うんだよね」

「その大切な人ってのが、恋ってことか?」

「そうだよ。……それとも、他の奴が良かった?」

「ふざけんな。……何が他が良かっただ。僕は少なくともそんな人間じゃない。……マドレーヌがこんな人間だとは、僕も思わなかった」

「そうかそうか。それは光栄だよ……ははは」

 大笑いするマドレーヌ。紅月クレイアは、その主人に怯えるように目を閉じていた。もしかして、怖いのだろうか。流血が。鮮血の溢れ出る結末が。

「さあ、ここで彼女を犯すか、それとも殺せと私に命令するか。答えよ」

 僕は考えた。大笑いをする二重人格のマドレーヌという人間をどうやって攻略すればいいのか。口説くという手も一手かも知れない。……しかし、それはどうなんだ? もしも、恋とかエリザと会話したりでもしたら、殺されるんじゃないか? 勿論、会長と接した瞬間に刺されることも可能性としてはゼロではない。

 そうなれば、バンド、つまり文化祭という舞台での演奏は中止、無しとなってしまいかねない。……口説くという手段は無しか。

 じゃあ、犯す……のか? 嫌だ。そんなの嫌だ。もう、会長の時みたいに過ちを犯す訳にはいかない。あの時はまだ部屋の中だったから良かったかもしれないが、ここは公然の場だ。しかも、神戸大橋という観光スポットでもある。ここでこうやって二重人格の奴と会話している事自体、通報沙汰なわけだけど、ここに通報する奴はいない。

「さあ、早く決断しろ。運命は変えられない」

「変えてやるよ。運命くらい。……マドレーヌ」

「なんだ?」

「僕は思想相愛じゃない人を犯すことは出来ない。他人に急かされ、誘導されて犯すことも出来ない。なんとでも言えばいい。僕はチキン、度胸のない人間だよ。魔族を倒すことも出来ない、攻略でしか、魔族を笑顔にすることでしか、魔族を自分のものにすることが出来ない、チキンハートだ」

「そうだな。じゃあ、運命を変えられるなんて言う、そんな好都合な話をお前には実現できないだろうな」

「出来るさ」

「あ?」

「……恋への『絶対命令権』を要求する」

「これまた厨二的な内容だな。はは。……で、絶対命令権とはなんだ?」

「お前の奴隷、恋を少しの時間だけ僕に貸せ」

「……心構え出来たんだな」

「ああ。心構えくらいなら、僕にだってすぐ出来る」

「言ってくれるじゃねえか。……じゃあ、幼馴染を犯せ。それを条件に貸してやる」

「いいだろう」

「乗り気になったか。……んじゃあ、恋。行け」

 恋は、えっ、と顔をかしげ、動揺した。マドレーヌが聞かない奴隷にムチを入れようとしたが、僕はそれを止めに入った。これから犯す対象にそんなことをされては困るからな。

「待て待て。話が違うじゃないか。貸してくれる約束じゃないのか?」

「悪いな。口利きの悪い奴隷で」

「済まないな、僕の幼馴染がそういう奴で」

「本当だよ、全く。……さ、カメラを回すから犯せ」

「それは話が違わないか?」

「……仕方ないな。なら、一歩譲ってやろう。ビデオはなしだ」

「ああ、その方が助かる」

 僕は、ふとそう言った後、デビルマシンを密かに使い、フレンドである会長に相談を持ちかけた。

『会長』

『なんだ、凛君?』

『恋を魔法少女にしたい時、どうやって魔法少女にするんですか?』

『簡単だよ。ここは日本だからね、神は『アマテラス』だ。そして、言うんだ。''アマテラスの神よ、この少女に魔力を授けてくれたまえ……,,とね。

 ただ、ボクがキミを魔法少年にした時のように、彼女から何かを感じているのなら、それは相当な力を持った魔法少女になるに違いないし、出ていなければそれなりの力しか無いことになる』

『でも、大丈夫です』

『そうか。……まあ、健闘を祈る』

『わかりました』

 僕はそう言って、会長との会話を終わらせた。そして、次に恋に魔力を注入し始めた。

「アマテラスの神よ、この少女に魔力を授けてくれたまえ……っ!」

 好都合すぎるのは分かってた。こんなことしたら、忽ち恋はびっくりしてしまうのだろうってな。驚くのも分かってた。けど、こうするしか無かった。相手は二重人格。僕は度胸のない人間だから、自ら立ち向かっていくことなんて出来ない。でも、人を楽しませること、笑わせることなら出来る。

 苦しんでる恋より、楽しんでる方の恋が好きだしな、僕は。

「何言ってんだお前は」

「早く言え。『魔力開放』って言え!」

「い、言えばいいの!?」

「そうだよ。早く言え!」

「ま、魔力……開放っ!」

 緑色の光とともに、恋が魔法を使用したことがわかった。そして、僕は恋から溢れる何かを感じた。これはなんだろうか。心が熱くなるような、そういう何かが。……これは一体なんだ?

『――フレンド承認お願いします@恋』

 デビルマシンに、そういった内容のメールが届いた。僕は、それを見ただけで嬉しかった。恋が魔法少女になったんだ。それだけで、嬉しかった。

『承認』

 そう心のなかで言って、声には出さずに口ずさんだ。

「――バカだな、本当」

「悪いな」

「だがまあ、これもある意味想定内だ。……やれ、クレイア」

「主人様……」

「出来ないのか? お前は、主人の命令に従わないつもりなのか?」

「従います……主人様」

「ああ、その調子だ。……さあ、あのクズ共を倒してしまえ。魔力なんて封じてしまえ。この世から彼らを抹消しろ。それがお前の使命であり、主人の命令だ」

「で、で、す……」

「やれ。殺れと言ったら殺れ」

「…や……」

「あ?」

「嫌……です」

「ふざけるんじゃない。……口答えするんじゃない。もしかしてお前は、産業廃棄物になりたいのか? ……いいだろう。捨ててやる」

「しゅ、主人様、それだけは……」

「なら、分かるだろう?」

「……え?」

「あいつらを、殺れ」

「……い」

「聞こえない。もう一度答えを言え」

「はい」

「ああ、お前はそれでいい。それで産業廃棄物ではなくなった」

「……ありがとう、御座います、主人……様!」

 涙目になっているクレイア。僕は、それを指示しているマドレーヌに腹が立った。苛立った。二重人格の上に、他人のワガママなど一切受け付けない下衆の極み。そんな奴に、僕は殺されるわけには行かなかった。

「……恋。殺るぞ」

「え?」

「機巧が仕えているのはマドレーヌだ。……攻略する」

「え?」

「お前はそこで待ってろ。じっとしてろ。僕がお前を守る。


 だから、僕を信じてくれ。


 何処にも行くな。


 そこにいろ。


 変な真似をするんじゃねえ。お節介バカが」


 僕は、そう言った後、魔法陣からサタンとニュクスを召喚した。

「……この闘いは、デッドオアアライブだな、全く」

「格好つけんじゃねえよ、厨二病の……クソガキが!」

「……やれ魔王サタン。一発だけかましたら今日は終わりだ。


 ――デッド・オア・アライブッ!」

 サタンが眼帯を付け、ヘッドホンを付け、闘う準備をし終えた上で言った。

「我の一撃を受けよッ!」

 目をくらませるような光線が、サタンによって放たれたのを始めとして、僕とマドレーヌとの全面戦争は始まった。

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