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Future  作者: 浅咲夏茶
6th Chapter;Band members and culture festival.
84/127

Target:Rina,Elisa,Saki and Ren./episode83

「じゃーん!」

「会長、結構テンション高いですね……」

「まあな、私はそれが取り柄だからな。高くないと逆におかしいだろう?」

「……おかしくはないと思います、はい」

「そうか」

 会長のテンションが高い理由を挙げるとするのならば、その理由は幾多にものぼる。だが、いつも会長はテンション高いわけで、それは今日に限ったことではない。そりゃあ、会長にだってテンションの低い時はあるけれど、基本的にテンション高い人なので、むしろテンション低かったりすると「えっ」と思って、『何か風邪引いたのか』だとか、それこそ『明日雨がふるんじゃないか』だとか、そういうことを思ってしまうくらいだ。

 

 だが、今日はそんなことを疑う必要はない。会長がテンションを上げている理由はそんなものではないからな。会長がテンションを上げている理由、それは……。

「いやあ、しかし、家からこうやってメイド服だとか執事服を持ってくる日が来るなんて、私としてはもうね……」

「会長は、巫女服着たこと無いんですか?」

「……無いよ。だって、この巫女服新調したものだもん」

 会長はそう言うと巫女服を取り出した。そして、次から次へと衣装を取り出していく。

「エリザはメイド、恋は執事、イブリースは魔法少女、そして私は巫女さん、んでもって凛君は一体何の衣装にするかな……」

「決めておく約束でしたよね、それ」

「ああ」

「何で決めていないんですかねえ?」

「悪いな。そういうわけで、君の衣装は自分で買ってくれ」

「……最低だ」

「嘘だバーカ。ちゃんと用意してあるっての」

「えっ」

「ほらよ」

「こ、これは……」

 会長が差し出した物は、僕が想像していたものの遥か斜め上を行くものだった。そう、それが一体何を示しているのかというと……。

「僕、こういうコスプレ系嫌いなんですけど……」

「そうか?」

 メイド服。……僕は確か一着所持していたが、いつの間にか消えていた。恐らく、姉ちゃんやら恋やらが借りて行ったのを僕に返さなかったか、それか僕の箪笥から強引に引き出していったか、どちらかだ。何れにせよ、僕に許可なしで取っていったのは確かだろう。何かを書いたのか、と問いただされればそれには僕は答えられないが、恐らく強引に引き出したか、それか僕から借りたものを返さなかったかのどちらかであろう。

「……いいです。メイド服着るくらいなら、僕は制服のままで居たほうがマシだと思います」

「そうか。制服……。悪くないな。流石に『魔法少年』の姿で演奏するのは嫌か」

「そりゃ嫌に決まってるでしょ。唯でさえ、あんなに厨二的な衣装だというのに、何故それをバンドで着る必要があるんですか?」

「いや、Chaos;Reは一応厨二的な作品だし……」

「確かにそれはそうですけど……」

「まあいい。ほら皆、一回着てみてくれ。サイズの確認を急いでくれ」

「はーい」

 僕らは会長に言われ、皆配られたものを着始めた。イブリースはただただ魔力を開放するだけでいいので、変に着るものはなかったのだが。そして僕も、制服のままでいいということになり、結局何も無かったかのようになった。

 一方、女性陣3人は、エリザと会長は楽しそうに着ているのに対し、恋は楽しそうに着てはいなかった。

「胸が入らないよう……」

「えっ」

 恋は、渡された執事服に大きな欠点を見つけた。何故ならその執事服は当然ながら『男性用』なため、胸には余裕が無かったのだ。だから、恋みたいにそれなりのデカパイの人からすれば、執事服は結構楽に切れるものではないんだろう。

「恋。お前サラシは……」

「家。置いてきちゃったよ」

「マジかよ……。しゃーねーな、お前はエロを狙っていけ」

「は?」

「Yシャツのボタンを外せ」

「へへ、変態っ!」

「違うわ。まあその、上から4つ程度でいいから外しておけ。……僕が言うのも何だけど、一応お前それなりの胸あるんだし、演奏する時それでいいんじゃないの?」

「でも寒い……」

「谷間見えてるし、票来るぞ」

「おいこら。票ってなんだ、票って」

「票? そりゃあ『人気投票』の『票』だろ。やっぱり、ESSの面子はエリザに入れるんだと思うけど、お前にもそれなりの票来ると思うぞ。あとは顔を紅潮させて、恥ずかしそうにしていると尚いいだろう」

「……あのなあ」

 恋はそういいながらも、やっぱり入らない自分の胸をどうにかしようと考えていた。だが、その方法は一向に見当たらなかった。

「うう、サラシか……」

「だから別に閉じる必要ねえだろ」

「むう」

「まあでも、僕は好きだぞ。胸出てる衣装のほうが」

「……巫女服とメイド服全否定かお前は」

「いや、そういう訳じゃねえけどさ、それでもやっぱりさ、おっぱいは正義というかですね、あの恋さん……」

「そうか。そうか。……じゃあ、いいか、これでも」

「そうだ。いいんだぞ、それでも。……ただ、お前が『嫌』というなら僕の意見に押しつぶされることなく、自分の意志を貫い他方がいいと思うけどさ」

「それが『優等生』の言い分か。やっぱり見習うべきところがあるな……」

「僕を見習った所でって話だが」

「そうかな?」

「そうだろ。……まあ、入らなきゃ入らないでいい。本番じゃないんだし、早く練習して完成度を上げたほうがいいだろう、常識的に考えて」

「そりゃそうだね。……でも、やっぱり入らないのは嫌だな」

「だからもうそこ触れるな」

「はいはい。……じゃあ会長、練習しましょうか」

 会長に恋がそう声をかけた時、コクリと会長は首を上から下にかしげた。


 ***


 15時50分。午後の練習が終わった。衣装も本番そのままに、打ち込み担当の咲希さんを会長が連れて、本当本番同様な感じでバンド演奏練習が行われた。

「成功したね」

「まだ早いけどな、それを言うのは。本番は日曜だけど」

「ああそうだな。日曜、だな。……しっかしまあ、僕の誕生日まであと一週間なんだな」

「そっか。今日、12月5日か。金曜日だもんね」

「そうだ。……しかしさ、色々とあるもんなんだな、バンドって。意外と練習時間有ったおかげで色々と上達できたし」

「それは凛君の心がチキンハートってわけでもなく、すぐキレるハートでもなく、本当普通の心だったからでしょ」

「過大評価し過ぎじゃないかな?」

「でも、凛君は本当凄いよ。……嫉妬しちゃうや」

「そんなこと言われても、僕には何も出来ないよ?」

「確かにね」

「……さてと。で、その、3曲目は?」

「ああ、それはまだ出来ていないんだ」

「え?」

 会長は、別に罪悪感のあるような顔ではなく、何かを企んでいるかのような顔だった。だがしかし、会長は罪悪感の有るときの顔のほうがいい顔してる気がする。テンション高い会長は、今じゃ違和感無いように感じるけれど、本当以前は違和感ありまくりだったから、今と昔じゃ本当変わったなあ、って僕も思う。生徒会の仲間として1年過ごしてきたからだろうか。

「3曲目は、24時間で完成させたい」

「え?」

「……24時間で、完成させたい」

「あの、会長何を言っているんですか?」

 僕は会長の言っている言葉の意味がわからなかった。24時間で曲を完成させる気なのか、会長は。それは本気で言っているのか? それともネタか?

「会長」

「はい?」

「……本当に、24時間で曲を作るつもりなんですか?」

「うん。でも、大体の形は私が作ってある。でも、歌詞は入っていないし、曲名も決まってない。だけど、そういう風に曲を作ることで、絶対思い出に残ると思うんだ。……でもさすがに、24時間で曲から作るのは無理だから、原型は私が咲希と相談して作っておいた。だから、それだけはごめんね」

「いや、別に謝る必要はないですよ、会長」

「ごめんね、凛君」

「いいんです。というかまず、24時間でしようと言い出した本人が『24時間じゃ無理』とか言っちゃダメです。そんなの、僕が認めません」

「そうか、凛君。……じゃあその、君はもし目の前に絶望が有った時、それを乗り越えられるのか?」

「まあ、乗り越えられなかったとしても、一度は立ち向かうと思います」

「そうか。……それが、凛っていう男の子の信念か」

「信念とはちょっと違うかもしれませんけど、大体そんな感じですかね」

 僕ははは、と笑みを加えておいた。

「あの、それで会長?」

「なんだ?」

「さっきから恋の姿がないように思えるんですが……」

「え?」

 見渡す会長。それに続いてエリザも見渡す。僕も見渡して再確認した。だけれど、周りを見渡したところで、状況変化は訪れなかった。何も変化がなかったのだ。何処にも恋は居なかった。トイレに行ったとしても、そんなに長く居るものなのだろうか。片付け終わってからまだ2分しか経過していないけれど、体育館出てすぐのところにトイレは有るわけだし、すぐに戻ってくるはずなんだが……。

 その時、僕のスマホを振動させるメールが届いた。

『宛先:凛

 件名:恋は預かった

 差出人:神


 恋は預かった。返して欲しければ、神戸大橋下に午後4時半までに来い。一人で来い。公共交通機関を利用せず、魔力を利用して来い。以上』

 

 は?

 神? God?

 いや、なんで神なんかが僕にメールをくれるんだ? というか、神なら人を誘拐しないだろ。もしかして、恋が神のタイプの女の子だったとか、そういうくだらない理由なのかな? ……ないか。

「なあ、会長。そしてエリザ」

「なんだ?」

「神から脅迫メールが届いた。恋が拉致された。……一人で来いって書かれているから、僕は一人で行ってくる。エリザ、お前は今日会長の家で待機していろ。会長、エリザを頼む。そして、咲希さん、お願いします」

「分かった」

 咲希さんに続き、エリザと会長も「はい」とか「おう」とか言ってグッジョブ!と親指を立てたり、コクリコクリと首を上下に振ったりした。

「魔力、開放ッ!」

 体育館の中で魔力を開放する時が来るなんて考えたこともなかったけれど、僕は魔力を開放した。そして、イブリースを僕は魔法陣の中に戻した。

「それじゃあ、凛。頑張れ」

「ああ」

「死ぬなよ」

「そっちこそ、死なないでください」

「死なねえよ。お前のほうが心配なんだよ。これが死亡フラグだったらどうするんだよ」

「大丈夫です。僕は死にません。……これでも、攻略した悪魔の数は指を折る必要がありますから」

「それもそうだな」

 僕と会長はそういう話を交わした後、右手同士でハンドタッチをした。。

「ダーリンが他の女の子のことを助けるのは、少し嫉妬しちゃうけど、でもいい。相手は恋だもんね。……恋のこと、助けてきてね。絶対に、私みたいな末路を迎えちゃダメ。……だから」

「わかってる」

「じゃあ、私とはキスを……御願い」

「なんだよこの演出は……。しかたねえな。やりゃいいんだろ、前に会長の家に行った時みたいに」

「うん」

「はあ。……欧米じゃ、スキンシップだもんな。変な意味はねえもんな」

「そうだよ」

「じゃあ……」 

 少し躊躇いながらも、僕はエリザと軽くキスを交わして、そのままエリザと会長を見送った。そして、それと同時に助けねばならない恋の事を思った。

「恋、待ってろ!」

 そう強く思った。だが、同時に僕はマイナス面も考えてしまった。

 僕は恋をどう思っているんだ? 幼馴染? エリザ同様、ワンランク上の幼馴染? 知らない。そんなのあいつに聞くしか無い。けど、僕自身あいつを助けたところでどうにかなるものなのか?

「――でも、あいつを助けない限りには、幼馴染としての威厳がなくなる」

 独り言をそう呟いた僕は、右手を胸に当て、某調査兵団の真似のポーズをしながら、空へと向かって言った。「まあ、本当は空なんてなくて、体育館の中だから天井なんだけれど。

「……クソ。なんであんな奴と幼馴染なんだよっ! ……幼馴染じゃなきゃ助けなくてもいいのに」

 言ってたな、エリザが。『私みたいな末路にすんな』って。あれってつまりあれだよな。『レイプなんて結末迎えさせちゃダメだ』って事だよな……。でも、恋は柔道で培った力があるはずだ。小さい頃からある意味僕や梨人、愁から受けるセクハラ的なものから逃れるために身につけた護身術的なものなはずだし、それを使えば相手なんてワンパンなはずだろ。なのに、なのに何故あいつは……。

「――今頃、恋は僕を呼んでいるのだろうか。それとも、自分で闘っているのだろうか。……っ!」

 むしゃくしゃした僕は、右手で髪の毛をイジリ、その後咳払いをして足早に体育館を出て、僕は生徒玄関を出て、そして空へと飛び立ち、神戸大橋の橋の下まで一目散に飛んでいった。メールの差出人である、神に導かれるように……。

 小説執筆している時、やっぱり眠くなるから、今日は顔を洗ってみた。10回くらい洗ったら、めちゃくちゃ目が覚めた。……ただ、冬ゆえに、暖房の効いていない洗面所で洗ったがゆえに、顔に冷風がとげのように刺さってきた。

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