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Future  作者: 浅咲夏茶
6th Chapter;Band members and culture festival.
82/127

Target:Elisa and Ren./episode81

 翌朝。僕は叩き起こされた。

「ダーリン、朝だよ! ……えいっ!」

「なっ……」

 意外なことにエリザに叩き起こされた。いつもなら僕を起こしてくれる恋、そして突然叩き起してくる会長は起きておらず、まだまだ爆睡中だった。

「……なあエリザ。今、何時だ?」

「5時だよ! ……いやあ、イヤホンを耳につけたまま寝たのが正解だったね」

 確かに、目覚まし時計を持っていない時、スマホの目覚ましで起きようとしても、中々起きれないのが現状だ。だから、耳にイヤホンを入れるのは間違いではないだろう。しかし、それはどうなんだろうか。前に何処かで聞いた気がする。『耳にイヤホンを入れると鼓膜を刺激しすぎて、最悪難聴になる』と。

 聴力は、視力とは違い、直すことは不可能だ。矯正することは出来たとしても、完全にもとに戻すことは不可能である。対して、視力はもとに戻すことが可能だ。それなりの費用をかける必要が有るが、すぐに治すことが出来る。

「……なあ、エリザ」

「ん?」

「お前、いっつもテレビの音量どれくらいで聞いてる?」

「うーん、大体20くらいかなー」

「まだ平常だな。よかった」

「だ、ダーリンどうしたの!?」

「……いや、お前の聴力が下がってたらどうしようかって思って」

「イヤホン付けてたから?」

「ああ」

「でも、いつもはイヤホンつけないんだよ? ただ、今日はダーリンの隣で寝れなかったから付けて、癒やしてただけなんだよ。……バカ」

 エリザはそう言うと、そのまま僕の方にダイビングしてきた。当然、その豊乳が僕の心臓と脳を刺激し、僕の鼓動は早まる一途をたどる。

「……おおお、おいエリザ。何をしている!?」

「ダーリン、もっと甘えていいんだよ?」

「ああ、甘えるって言ってもお前、どんな風に……」

「本当の事言うと、私がダーリンに甘えたいんだ。左右には恋と会長さんが居るし、やっぱり上しか私の居れる場所は無いよね……?」

「そそ、そうかもしれないけど……でもちょっと自重を……」

「あったかー」

「なっ……」

 エリザは僕の言うことなど耳も向けてくれなかった。エリザは、そのまま倒れてきて、僕の首の後に手を回し、締め付けるわけではなかったものの、凄い近くの距離で密着することになった。……何気にめっちゃいい匂いするんですけど!? ……しかも普通にデカパイ当てられてるんですけど!?

 まあ、思春期である僕のことを思えば、男なら分かるはずだ。今、とんでもない状況にいる。それは、ひとつの視点から捉えれば、『とてつもなく素晴らしい状況』であり、もうひとつの視点から捉えれば、『とてつもなく危険な状況』である。

 ……嬉しいよ。確かにエリザが上に乗ってきてるのは嬉しいし、いっつも抱きつかれてる時、嫌々ながら離そうとしているけれど、心中では嬉しいし、正直な所、抱きついていてほしいってのは一つ有るよ? 

 でも今は、そういう状況を味わってもいいのかもしれないけれど、『危険』な状況だ。なにせ、隣に会長と恋が居るしな。それに、確かここには姉ちゃんも来ている。となれば、姉ちゃんにバレたらただじゃ済まないだろう。 馬鹿にされるだけで済むのかもしれないけどさ。

「エリザ」

「ん?」

「そろそろどいてくれ。嫌じゃないけど、僕も男だし……」

「前に言ったじゃんか」

「え?」

「『ダーリンの子供は私が産む』って。……大好きなんだよ?」

「うぐっ……」

 顔が近い。顔が近いぞ、エリザ! 地味に口ずさんだ言葉とともに、僕の鼻にエリザの吐息が当たってるし。そして、人差し指でツンツンと僕の頬を上に上げてきているのが、これまた可愛い。

「……既成事実、つくろうよ?」

 逃げちゃダメだ。それはわかってる。でも、今ここでまた過ちを犯すつもりなのか、凛。……またこの部屋で過ちを犯すつもりなのか? 先回は会長だった。ただ、なんとか会長のお陰で変な方向に話が進んでいくことはなくなった。でも、エリザは避妊だとか一切考えていないと思われる。

「……気持ちは嬉しいが、やめておく」

「いいじゃんいいじゃん」

「ダメなもんはダメだ! ……ほら、皆を起こすぞ」

「ダーリンのいじわる」

「意地悪じゃない」

「……私の事、嫌い?」

「嫌いじゃねえよ」

「好き?」

「……ライクだけどな」

「ダーリンの本命は誰なんだよ、もう」

「僕の本命は、まだ決めることは出来ない。……お前も、恋も、会長も、皆魅力的だ。そりゃ知ってる。わかってる。でも、だからこそ一人に決めるためには時間がいる。それがデートだとかさ、そういうことをしなきゃ分からないよ……」

「そうか。……でも、きっと私と結婚してくれるよね」

「……はい?」

「赤ちゃんを作ったら、もう結婚はすぐそこに……!」

「まずエリザはその『結婚=子供作る』って考えを捨てちまえ」

「えっ? ……こ、子供作らないと結婚できないんじゃないの?」

「結婚出来るよ?」

「でも、ダーリンは子供要らないの?」

「いや、要らないと言ったら嘘になるし、まあその、子作りをしたくないわけじゃないけど……」

 僕は『子作り』なんていう単語、エロゲーでしか聞いたことがなかったら、言ったのはこれが初めてだった気がする。……なんだろうな、なんかエリザに言わされた気がしてならないんだよな。……うーん。

「……私と子作りするの嫌?」

「これなんてエロゲですか?」

「Meta2f」

「これエロゲじゃねえだろ」

「まあね。でも、エロゲ同然の話じゃん」

「まあ確かに否定はしないけどさ……」

「じゃあもう一回聞くよ? 


 


 ――子作り、私とするの嫌?」


 エリザが、さっきよりも更に僕の顔の近くに顔を近づけた。あと1センチもすれば唇同士がくっつくであろう、それくらいの距離だった。

「……か、考えさせて」

「む、仕方ないな」

「意外と潔く言ってくれたな、エリザが」

「ダーリンは私をなんだと思っていたのさ!?」

「え? 僕に既成事実を作ってと迫ってくる幼馴染」

「嫁にしろって迫ってるんだけどね」

「……え? なんだって?」

「な、難聴のふりすんな! こんだけ近ければ……き、聞こえたでしょ?」

「聞こえたぞ。これはなんだ? 『まだチョメチョメしてないからOK』みたいに答えればいいのか?」

「……勝手にしてよ」

「はいはい。勝手にしますよーだ」

 ちょっと挑発的に言うと、エリザが突如として、僕の唇に唇を重ねてきた。本当に突然だったから、僕は一瞬心臓が飛びそうになったし、目の前に居る女の子に対して、相当なまでにデレてしまった。呂律が回らなくなりそうだったのだ。不意打ちだったからかもしれないが、それだけやばかった。

「……挑発、すんな」

 ダメだ。こいつ可愛すぎる。

「……どうしたの、ダーリン?」

「お前、不意打ちすぎんぞ」

「悪かったかな?」

「悪いに決まってんだろ。……だけど、こういうのも僕は嫌いじゃないぞ。迫られるのも、そこまで嫌いじゃない」

「意外とダーリンって振り回されるの好きなの?」

「ラノベ主人公は、結局そうやって調教されるんだよ。適当に日々を過ごしたところで、結局女ヒロインに振り回され、最終的にそれが嫌々としていたのが、いつの間にか定番になって、もう嫌々なんて気持ちがなくなる……ってね」

「そんなに話が都合よく進むもんですかね?」

「少なくともラブコメは基本的にそういう感じだろ」

「そうなんですか。……じゃあ、ダーリン」

「なんだ?」

「き、キスした後すぐで悪いんだけど、その、せ、青春ラブコメを作ろうっ!」

「……え?」

「だ、だからその、青春ラブコメをつくろう!」

「……どういうことだよ?」

「ぶ、文化祭も来るし、文化祭といえばラブコメの定番だし……」

「たしかに間違いじゃないけど、だからって青春ラブコメを作るっていうのはどうかと……」

「ダーリンは、恋心抱いている人いないんだから、アプローチ掛けても問題ないよね?」

「お前はもしも僕が誰かに恋心抱いていたところで、結局寝取るんだろ」

「なっ……。へへ、変な想像すんじゃねーばーかっ」

「し、してねえし……」

「どうだか」

 エリザは、そう言うとそっぽを向いてしまった。ただ、顔がまだ近くにあっていたので、僕は右手でエリザの頭をなでてやった。すると、エリザは表情を緩ませ、「えへへ」と笑顔を見せると、今度は隣に寝ていた恋の耳に息を吹きかけて起こした。

「ひゃあうっ!?」

「朝5時だよ、恋」

「なな!? って凛、アンタ朝から……」

「それは大きな誤解……」

「問答無用! お前をエリザから離さないと気がすまないんだ」

「なあ、エリザ。何か言ってやって……」

 僕はエリザに助言を求めた。僕の補助を求めた。しかし、僕の抵抗むなしく、エリザは更に危険な言葉の爆弾を投下した。

「ダーリン、激しかったんだ……」

「こらああああっ!」

 僕はエリザが嘘を言ったことに対していらだちを隠せず、そう言った。しかし、本当に危険な人物はエリザじゃない。そう……恋だ。

「死ねええええっ!」

 まだ眠気があったので、一発恋からケリを入れてもらうことで、ある意味眠気が回復してプラス効果だった。他はマイナスだけどな、全部。

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