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Future  作者: 浅咲夏茶
6th Chapter;Band members and culture festival.
81/127

Target:Ren,Elisa and Rina./episode80

 文化祭が近いというのに、今日は7時間授業の日だった。テスト間近の時とかは、前々日に7時間授業、前日は3時間授業からの午前放課ということが多い。というか、7時間授業という名称が出るのはその時くらいだ。だから、文化祭間近に7時間授業というのは結構珍しいものなのだ。

 といっても、5、6、7時間目の授業は文化祭の準備だった。だから、考えてみれば今日は午前放課と同じような感じなのだ。と言っても、昼飯を食べる時間は12時を回っているから、午前放課とは言い難いかもしれないけど。


 ***


 夕方4時半。6、7時間目に文化祭実行委員会の会議があったので、恋もエリザも今日は遅れることはなかった。だから定時で、そして皆で一緒に演奏ができることになった。

「じゃあまず一発、My ever and after this. から。一回合わせれば良い話だから、一発で行けるように頑張らないとな。二曲目が有るわけだし」

「二曲目?」

「ああ、悪いな恋。二曲目があるんだ」

 会長はそういうと、持っていた『Chaos;Re』の楽譜と歌詞の書かれたA4サイズの紙を恋に渡した。恋は、自分が文化祭実行委員会の委員長であるからこその悩みを抱えていた。それは、『練習時間が異常に少ない』ということだ。

 僕も、会長も、一応エリザもそうだ。僕らは魔力が使える。だから、仮に覚えられていなくても、最悪魔力を使えば乗り越えることが出来る。だが、恋の場合は違う。恋は魔力を使えない。だから、実力でするしか無いのだ。

 恋の家にはちゃんとしたキーボードが無いわけじゃない。だけれど、家に帰ればもう夜なわけで、練習する時間は無いのが現状だ。朝ごはんだって恋が作ってるし、昼ごはんだって恋が作ってる。そうなれば、当然ながら早起きしなければならない。

 ただ、早起きするためにはそれ相応の時間に寝る必要が有る。遅寝早起きをしても、結局は免疫が下がり、最終的に自身の身体に病原体を入れてしまうだけの話で、マイナス面の方が大きい。

「……なあ、恋」

「なに?」

「……お前、練習大丈夫か?」

「大丈夫なわけ無いじゃん。……最悪、土曜から徹夜すればいけるかもしれないけど、これを今日入れてあと4日で仕上げようものなら、それはもう無理なミッションだと私は思うな……」

「じゃあさ、朝ごはんと昼ごはん、会長に作ってもらえばいいんじゃないか?」

 僕がそう言うと、当然ながら会長は反応を示した。

「なっ、なんで私が朝ごはんを!?」

 その反応を見て、恋は胸の下で腕を組んだ。

「まあでも、会長の作るご飯美味しかったけどなあ。あのオムライス、また食べたいかなあ。……でも、そうすれば朝の時間帯は練習に使えるってことだよね?」

「ああ。どうせお前は、文化祭終わるまで毎朝朝練が始まる時刻くらいに学校に行くんだろ?」

「書類系統を完璧にして、本番に備えないと。……でも、私の家にも、凛の家にも練習する場所は……」

「だったら会長の家に泊まればいい。……ね、会長?」

 会長は少し間をおいた後、諦めたような顔をして「わかりました」と言った。

「じゃあ、今日の夜からだな。……会長、服とかって予備あります?」

「無いわけじゃない。ただ、私の部屋に有る衣類は基本的に女物だから、凛君が着るためにはちょっとサイズがあわないと思う。だから、執事服を……いや、この際いっその事、本番での事も踏まえて、恋は執事服、エリザはメイド服でいいじゃん。……んで私は巫女服、凛は……」

 そういえば昨日、僕が本番できる衣装だけ会長は決めてくれていなかったな。

「……一応制服でいいと思います」

「そうですか。でも、会長の家の中でも制服着ているっていうのはちょっと……」

「それじゃあジャージでいいじゃんか」

「……じゃあジャージで構いません」

「でも、執事服……いや、いっその事全裸で過ごしたら? 首輪つけて」

「嫌です。絶対に嫌です。断固反対です、そんな羞恥プレイなんて」

「むしろ凛君はする側だよね、される側じゃなくて」

「そうですよ」

「……えっと、それで何日だっけ?」

「4~7日だから、実質3日か?」

「なにさその『実質』って」

「いや、日曜日は学校に朝早く行くけど、一応日付変わってるから……」

「まあ、こまけえこたあいいんだよ」

「お、ねらーか?」

「元々ぼっちだったからそうなるんだってば。私だって、なりたくてぼっちしてたわけじゃない。……はいはい、黒歴史をえぐるのはもう終わりだ」

「じゃあ、練習ですか」

「ああ。練習だ。プラクティスタイムだ!」

「いちいち英語使う必要ねえだろ」

 一応ツッコミを入れておいたのだが、会長はそのツッコミに触れてくれなかった。……正直一番悲しいのって、場の雰囲気を帰るためにツッコミを入れて滑るのだ。そして今、その状況が、その悲しいのが僕を襲っているのだ。

 でも、そんなことで悲しんでいるばかりじゃ練習が弾むわけ無いし、ここで挫けずに頑張っていかなくちゃ、悲しい結果になってしまう。やっぱり、本番で練習不足が原因で失敗して笑われたり、空気が重くなったりすると、結構大変だ。だから、ここで地盤を固めてしっかり練習しておくのが一番だ。

 そしてそれから、19時半まで、僕らは今日も練習を続けた。


 ***


 家に今日は帰らない、と姉ちゃんに電話をした時、結構色々と聞かれた。「何処に泊まるのか」とか色々とね。ただ、「会長の家」とか、「理事長の家」とか言った瞬間に姉ちゃんの眼の色が変わった。声の色が変わった。


 そして結局、僕とエリザ、それに恋のみが会長の家に泊まるはずだった当初の計画が見直され、僕の姉ちゃんも参戦することになった。美来は、「どうせ家に誰も居ないんなら友達と過ごすわ」とだけ言い残し、僕の家には誰一人として居なくなってしまった。変わりに、会長の家にはいつもよりすごい賑やかなメンツが揃った。まあ、ここから愁と梨人を追加するのも一案だろうけど、そんなことしたらぎゅうぎゅうになるだろうし、知らない男が入ってきたら流石の会長のお父さんも怒っちゃうんじゃないだろうか。


 ***


 夕飯を食べ終わり、姉ちゃん以外の皆はバンドの練習のために楽器などが置いてある部屋に向かった。会長は、行く時に咲希さんも一緒に連れて行った。恐らく、咲希さんは打ち込み担当なんだろう。本番でも是非打ち込みをしてほしいものだが、お嬢様であることがバレるのを嫌う会長からしたら、そんなの以ての外なのかもしれない。

「しっかし、夜の9時にバンド練習するなんて初めてです」

「いや、凛君みたいなゲーマーは、こうやって夜になればなるほど目が覚め

てくるんじゃないのか?」

「強ち間違ってはいませんけど……」

「だろう? でも、凛君は愁とは違っていて、ゲームで徹夜なんてことは無いんだろう?」

「基本的には。でも、前にやったことあります。愁と僕と梨人で、3人でネトゲ24時間でどこまで進めるか、的なやつを、夏休みの盆に。ただ、実質24時間じゃなかったですね。朝の8時から、翌日の夜3時くらいまででした。いやあ、あの時コーヒー飲み過ぎて、次の日お腹壊したの今でも覚えてます」

「君は実にバカだ。ああ、君は実にバカだ」

「……悪かったですね。ただ、一応僕もあれ以来徹夜するときは極力コーヒーを飲むのはやめてます。というか、徹夜できなくなっちゃいました。長起しても、大体29時くらい……」

「29時って朝の5時だよね!?」

「まあそうだけど……」

「それもう徹夜でよくね?」

「いや、冬だったからまだ日は昇って……いたかな?」

「夏ならもう日が昇ってるだろ、その時間帯は」

「でも、その日は12時半くらいまで寝てたかな……」

「一応寝たんだな。……てか、こんな雑談で時間取るくらいなら、早め早めに終わらせようよ。取り敢えず、今日は夜10時半までバンド練習な。先生たちが一概に悪いとはいえないけどさ、やっぱり時間欲しいよな、もっと。なんで文化祭まであと1週間も無いのに7時間なんてしたんだよ」

「でも、確か明日って午前放課……」

「そうなの?」

「いや、明日も7時間だけど、実質明日は午前は文化祭練習、午後も文化祭練習だから、通常の授業なんてないよ。……決まったな」

「つまり、明日は1から7限まで……」

「いつからそう錯覚していたんだね、会長?」

「えっ?」

「朝の6時前に学校の校門は開くし、それに明日は生徒会の仕事もある。だから、朝6時位に学校に入って、それから夜7時半までぶっ通しの13時間半、バンド練習が出来るぞ。そんなにバンド練習する気力は無いけど……」

「駄目じゃん」

「……だから、どうやって持たせるかなんですよね」

「じゃあ、お菓子を持って行こう」

「え?」

「一応私はお嬢様キャラだからね。ケーキくらいすぐに用意してあげられるけど、どうする? ケーキ食べる?」

「でも、置いておく場所……あ」

「生徒会室に有るだろーが」

「有りましたね、生徒会室に冷蔵庫と冷凍庫が……」

「小さいけどな。私の部屋に有るものと同じやつだ。私のお父様が寄贈してくれたものだ」

「そうだったのか」

「おう。……って、こんな話ばかりしてんじゃねえよってんだ。早くバンド練習するぞ……って、さっきから恋とエリザの声が聞こえないと思ったら、お前ら寝てんのかよ!?」

「そりゃ、二人共疲れてるんですよ。まあ、恋に練習させられないのは残念ですが、こうなってしまった以上、僕と会長、それにイブリースの3人だけでも練習しましょう。その方がいいです」

「そうか。……じゃあ、ボーカル寝ちゃってるけど、練習スタートだ」

 会長がそういった。そして僕とイブリースはChaos;Reの演奏を始めた。


 ***


 気がつけば、当初予定していた練習時刻を1時間も過ぎていた。咲希さんが途中でコーヒーを差し入れてくれたおかげで眠気はなくなり、寝ていた二人も途中で、だいたい10時半ごろに起きたおかげで、最後には皆でサビだけ合わせられた。サビだけでも合わせられたのなら、それだけで十分じゃないのだろうか。

 恋が腕を伸ばしながら「うう、疲れた」と言ってあくびをしたので、僕はこちらがそっちより90分長く練習して疲れてるんだ、という意味を込めて言ってあげた。

「眠っていたくせに」

「悪いな。仕事で疲れたんだ」

「じゃあ早く会長の部屋で寝ろ。それはエリザもだぞ」

 続いて、恋の方からエリザの方に顔を向ける。

「昨日は4時間くらいしか寝てないんだから、今日はもう寝たいー」

「はよ寝ろ。こっちはコーヒー飲んでいて眠くないんだ」

「ダーリンキツイこと言わないでよ、もう」

「きつくはないと思うけどな」

「嘘だー」

 エリザも恋も、再び眠気が襲ってきたようで、エリザに関してはすぐに僕の身体に首をコクンとして、顔を肩の上においてきたので、「これは不味いな」と察した。だから僕は、一旦イブリースを魔法陣の中に戻し、先に会長の部屋に衿沙を連れて行くことにした。一方の恋も、会長に「眠かったら寝ていいんだよ? やっぱり文化祭実行委員長は辛いか……」と話しかけられていた。ただ、恋もその質問に答えられないくらい疲労困憊、眠気も溜まっていたようで、そのまますぐに会長の方に倒れてしまった。

「ダメだな、こりゃ」

「ですね」

 僕と会長は、互いにアイコンタクトでそう言い合うと、恋とエリザを会長の部屋のベッドの上に横にさせ、上からベッドを被せてあげた。

「……咲希さん、もしかしてコーヒーに入ってるカフェイン2倍にとかしてないですよね?」

「してないんじゃないかな?」

「……でも、何かいつもコーヒー飲む時よりも眠気が妙に無いというか……」

「そうか。……でもまあ、もう夜の11時半だぞ。一応凛君の言うとおり、朝の6時くらいからバンド練習をするのだとすれば、そろそろ寝ないと明日支度できなくなるぞ。それに、睡眠取っておかないと集中力無くなっちゃうし」

「だから妙にやる気が起きないんですか、徹夜明けは」

「……凛君。今君はボクをバカにしたな?」

「いえ、僕は会長をバカにしてないで……」

「嘘つけ。……まあ、こんなことでバカな論争始めるくらいなら、お互いに寝て、それで明日に備えるべきだし、凛君も寝よう」

「でも、あのベッド足りないんじゃ……」

「じゃあ、一つ聞くよ?」

「またそういう質問……。今度は何ですか?」

「じゃあ、2択で聞く。凛君は、ボクと『一緒の布団』で寝たい? それとも、ボクと『一緒ではない布団』で寝たい? ……どっち?」

「前者一択に決まってるじゃないですか、会長っ!」

「こらっ、やめろ、この破廉恥野郎っ!」

「まんざらでもないくせにー、このこのー」

「だからやめっ……」

 僕は会長に抱きついた。やっぱり遠くから見ると『おねショタ』に見えちゃう感じなのかな? そういう事は自分で確認できないから、結構困る。


 でも、会長が意外と抱きついても強引に振り払おうとしなかったのには僕も驚いた。やっぱりこれも、会長が僕を特別扱いしてくれているからなんだろうか?


 僕は、何故か咳払いをし、そのまま眠りについた。

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