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Future  作者: 浅咲夏茶
6th Chapter;Band members and culture festival.
79/127

Target:Rina,Ren and Elisa./episode78

 昼休み、恋に迫られて僕は答えた。「可愛い」と。

 静かな空気が生徒会室を覆い、お互いに何も言えずに顔を紅潮させ、互いにそっぽを向いてしまった。


 ***


 今日も恋は文化祭実行委員会としての活動により、遅れてくると告げていた。だからまた、今日も一人欠けた状態でのバンド練習スタートとなった。

「凛君!」

「な、何ですか、会長?」

「一曲完成させたから、二曲目行くよ。これもオリジナル。昨日、私が家で作ってたんだ。一晩掛けてね。……いやあ、徹夜するんじゃなかった。今超眠いわ」

「そりゃあ徹夜したら翌日眠くなるの当然でしょう……」

「だから、今日は夕方6時で終わりにするよ。……恋に言っておいてね?」

「はいはい。……で、なんでエリザが猫耳を着けて、メイド服を着ているんですか?」

「本番の衣装だからだよ」

「……え? なんだって?」

「お前は難聴かコラ」

「すいません。調子に乗りました。……でも、エリザがネコミミメイド?」

 『エリザの猫耳メイド姿が凄い似合ってる件』っていうスレッドを立ててやろうかと思うくらい可愛い。ずっと愛でていたいような、そんな猫耳メイド姿。……ヤバイな。鼻血でそうだわ。家でもずっとメイド服で居てもらおうかな。……エリザなら聞いてくれそうだよな……って、僕は何を。

「じゃあ、イブリースはどんな服……」

「魔法少女に決まってんだろ!」

「それをエリザにして、メイドを恋に……」

「君は実にバカだと思うな。……恋には『執事服』があってると思わないか?」

「確かに」

「だろう? 赤耳眼鏡、黒髪をちょっと結んでもらって、執事服着てもらって。そんな感じでいいだろ。正直、メイド服みたいに露出も少ないし」

 確かに執事服って露出少ないイメージだよな。対してメイド服は露出度が高いイメージだ。あと、猫耳メイドともなると、やっぱり尻尾が……。

「あの会長」

「なんだ?」

「猫耳メイドにするのなら、尻尾は……」

「悪いな。尻尾は家にあるんだが、安全上の都合でやめておいた」

「でもエリザは歌をうたう……」

「……じゃあ、尻尾でいいじゃん」

「ですよね」

「じゃあ明日持ってくるよ。……イブリースは魔法少女でいいね」

 イブリースの方を会長が向く。続けて僕もそちらを向くと、イブリースは丁度、こくんと頭を縦に下げていた。

「会長はどんな服を着るつもりですか?」

「巫女服だよ。流石に、黒ドレスはね」

「親に止められたんですか?」

「そうだ。親に止められた」

「……ドンマイ、会長」

 僕は会長の肩に手をおき、そう言った。

「まあでも、写真には取っておいたから。見てみる?」

「ええ、是非」

「これだよ」

 会長は自身のスマホを取り出して僕に見せてくれた。

「巫女服に眼帯……アリですね」

「だろう? ……見た感想はどうだ?」

「可愛いです。後なんか、以外に眼帯似合いますよね、会長」

「だろう?」

 会長は胸を張って「はは」と笑みを浮かべて笑った。

「……さてと。そろそろ練習しないと。というか、掛けてくださいよ早く」

「はいはい。スマホから再生していいか?」

「構いません」

「じゃあ……」

 会長は、そういうとスマホを操作して音楽を流し始めた。


 ……


 聞いた感じの感想を述べたいと思う。何というか、英語多いな、うん。

「どうだ?」

「英語多くないですか?」

 丁度会長に聞かれたので、思ったことを僕はそのまま話した。

「そうかな? でも基本的に日本語だからな」

「だとしても、日本語が英語に聞こえるようにしないでくださいよ。なんで英語大きめで録音してるんですか。普通、日本語大きめで録音するのが常識ってもんでしょう会長」

「ごめんね。……あと、この曲はテンポ早いけど大丈夫?」

「大丈夫だと思います。……それより、会長のドラムついていけるんですか?」

「ついていけるように練習するのが私だ。……まあ、ギターソロ入ってるし、My ever and after this より大変だと思うけどね」

「そりゃあギターソロとか大変でしょ」

「……ガンバ」

「はい」

 今度は僕が肩を叩かれた。

「さて。恋が来るまで、『Chaos;Re』を演奏しますか」

「そうですね」

 そうして僕らは、会長のスマホから流れるChaos;Reの曲を聞きながら、配られた楽譜、そして歌詞を見ながらどんな演奏にするか思い浮かべていた。

 まあ、配られた楽譜を見るだけで一つ思うことが有った。『これすごい厨二な歌詞じゃね?』って。 


 ***


 結局、今日の練習に恋は来なかった。でも、恋だって先に帰った訳じゃないし、僕は自分の教室にエリザとともに戻った。手に会長からもらった楽譜と歌詞の書かれたA4サイズの用紙を持って。

『はーい、今日はこれで終わりまーす。お疲れ様でしたー』

 恋の声が聞こえた。そして、部屋の中から色んな学年の文化祭実行委員会に所属していると思われる生徒が出てくるのがわかった。それを確認したらもう、中には少ししか居ないはずなので、僕はすぐに教室に入った。

「凛。もう終わったの?」

「ああ。会長が徹夜したから今日はこれ以上練習出来ないって言って……」

 会話の途中だった。僕の後ろに居たエリザが色んな女子から囲まれて、その女子生徒たちをマスコミと捉えれば、もうエリザがアイドルなんじゃないかと思ってしまうくらい多くの人がエリザを囲っていた。

 女子の声を聞き、男子も駆けつけた。中には、『エリザ様』と崇める者や、男子の中には僕の方を見てぎろっと睨む者までいた。

「これが……ESSなのか?」

 僕は目を疑うようなその光景に、手も足も出なかった。まあ、とりわけ出すようなシーンでもないと思ったのこともあるのだがな。

「流石にあのままじゃエリザちゃんが……」

「だな。……ちょっとお前は僕の帰りの準備をしておいてくれ。ちょっとエリザ助ける」

「う、うん」

 僕は恋にそう言うと、そのまま人混みの中をかき分けていき、エリザの左手を引っ張った。

「こっちへ来い、エリザ!」

「だ、ダーリ……っ!?」

 エリザが僕の身体に密着した。驚いたエリザは、とっさに僕の身体に抱きついた。勿論、怖いかったようで目も閉じていた。

 当然、回りにいた奴らからは嫉妬を買うわけで……。

「ダーリン、怖かったよぉ……」

「だ、大丈夫か!?」

「うええええええん!」

「……よしよし。……ん?」

 あれ? エリザさん、まさか今ノーブラ? なんか胸の部分のてっぺんあたりが出っ張っている印象を受けるんですがこれは一体……。

「皆、行くよ!」

「えっ……」

 変なことを考えていると、ESSのメンバーが僕に向かって来た。

「ちょ……」

「お前がエリザ様を汚したのか……」

「は? ……は?」

「エリザ様、言ってあげてください! ガツンと言わないと、この低層な男はエリザ様を……!」

 エリザは凄い戸惑っていたが、すぐにその戸惑いはなくなり、ESSのメンバーに向かっていった。

「私のダーリンを……汚すな!」

「はっ、はいいいいっ!」

「帰れ」

「え、エリザ様?」

「帰れ。帰れ。帰れええええっ!」

 エリザがきつく言うと、ESSのメンバーたちは足早に教室を後にした。

「……ダーリン、なでなでー」

「……は?」

「あ、頭ナデナデしてほしい……な」

「っ……!」

 なんで恋もエリザも上目づかいしてくるんだ……。可愛すぎだろ。

「……撫でればいいのか?」

「うんっ!」

「……はいよ」

 間をおき、僕はため息を付いてからエリザの頭をなでた。エリザは、僕の胸の中に顔を埋めて、ふりふりと顔を左右に振ったりした。

「犬みたいだな」

「せめて猫って言えよ……」

「猫耳メイドでバンドするってのもすごい話だよな、本当」

「でもさ、ダーリン好きでしょ?」

「猫耳メイド?」

「うん」

 エリザがそう僕の質問に答えた時、とんとんと僕は恋に肩を叩かれた。

「……やっぱり変態さんでしたか」

 満面の笑みを浮かべる恋は、とても怖かった。本当、恋はツンデレである以上にヤンデレも似合う気がしてならない。……恋が満面の笑みでナイフ持って今の言葉言ったら、恐らく僕はこの世から排除されていたに違いないだろう。

「……エリザちゃんの純白をけがしやがって」

「け、けがしてないから!」

「聞いたよ。搾乳してるらしいね、エリザのその……」

「……は?」

「愁から聞いたよ」

「それはデマだ」

「じゃあ証明してよ」

「え」

「……証明してよ」

「どんな風に証明すればいいんだよ?」

「そ、それは……」

「でも、本当に『搾乳』なんかしてないよ。それは愁の流した嘘情報だ」

「……エリザちゃん、本当?」

 恋は、エリザの方を向いてじっと見た。エリザは、こくっと頭を上から下に下げるだけだったが、それで『嘘』ということが証明された。

「信じて……くれるか?」

「凛がエリザを奴隷みたいにして扱っているかもしれないから100%信用出来る訳じゃないけど……」

「扱ってないから!」

「まあでもこれくらいで切れるような関係じゃないし、いいんじゃないかな」

「はいはい。……じゃあ帰るか」

「まだ6時過ぎたばかりなのに」

 最近夜8時すぎに帰ったり、早くても7時半前後に帰ったりって生活が続いていたから、夕方6時に帰ることが出来るのは本当に久しぶりだった。

「きっと姉ちゃんまだ晩御飯作ってる途中だろうから、寄り道していこうぜ」

「何処に寄り道するの?」

「適当に本屋にでも立ち寄ればいいじゃん」

「だね」

 そんなことを言うと、僕とエリザと恋は教室の電気を消灯した後で学校を後にした。


 ***


「肉まんウマー」

「冬のアイスは最高だね!」

「……お前ら」

 恋は、バッグからマフラーを取り出し、それを首に巻いて肉まんを食べていた。対してエリザは、コンビニに売っていたカップアイスクリームを木のスプーンを使って食べていた。だが、僕に抱きついてきていたので、エリザが震えていたのは丸わかりだった。

「震えるくらいなら食べるなよ、エリザ」

「ふふ、震えてなんかないよ?」

「嘘つくな」

「……すいません、嘘つきました」

 エリザはそう謝ったのだが、すぐにアイスをスプーンで掬い、また口に運んだ。

「うめー」

「こっちは肉まんとアイスを買わなくちゃいけなかったせいで金が……」

 僕がそうため息を付いていると、恋が僕の右肩を叩いて笑顔で言った。

「お前が『僕はピザまんで』とか言うから便乗して買っちゃったんだろ。でも、たかが500円、600円程度じゃないか。それ以上の小遣い貰ってるくせに」

「……両親の貯めたお金で生きていくは結構大変なんだよ」

「そのうち、私も葉紅さんのお金では生きていけなくなるのかな?」

「かもしれない。……ただ、姉ちゃんだって僕のため、美来のため、エリザのため、そしてお前のために、両親の貯蓄を絶やさないために、必死に働いてるんだ。だからさ、出来る限り協力しよう……な?」

「あのさ、凛」

「ん?」

「凛は、高校卒業したら働くの?」

「姉ちゃんがバイトだけで食っていけないって言い出したら働く。ただ、あと1年すれば、留年さえしなければ、就職難に勝てれば、姉ちゃんは就職できる。働ける。……そうすれば、決まった額のお金だって、貯蓄だって増やせる」

「結構現実的な考えだね」

「そりゃあ親が死んだんだからって、子である僕がお金を使いまくるのは如何なものかって思うだろ? 生憎、僕は漢字検定とか、英語検定とか、そういうのは準2級までしか持ってないんだ。だから……」

「それ、十分活用できると思うよ?」

「でも2級でも1級でもないし……」

「普通に活用できるから。私なんてまだ『3級』なんだから……」

「それでも履歴書に記載できるじゃん」

「まあ……ね」

 どこかで言っていた。『学力は使うもの』と。確かに使うものであるというのは、僕にも分かった。学力もないのにバイトせずに家でゲームして、馬鹿みたいなことしてるよりも、学力がなくても蓄え、バイトしなくとも、それ相応の青春を謳歌出来るわけだから、青春を楽しみ、勝手にラブコメ作って、そして馬鹿みたいなことしたほうが、よっぽどいいと思う。交友関係があるんだから、その交友関係を活かさないで何を活かすのかという話だ。

「だから、あんまりこれからは変に考えないで買うのはやめてくれ」

「お、おう」

「……なあ、恋」

「ん?」

「お前って、今朝色々と僕のいえのリビングの配列とか詳しかったけど、もしかして僕の所持金とかも把握してる系?」

「……さ、さあ?」

 震えているということは、つまり正解ということか。

「把握してるんだな?」

「……」

「答えろ」

「は、はい……」

「じゃあ、銀行に預金しているお金を除く僕の小遣いがどれくらい有るか、恋は知っているんだろう? 大体でいいから言ってみてくれ」

「うーんと、確か……3200円くらいだっけ?」

「それくらいだったのか。……結構少ないな」

「どうせまたお年玉……あ」

 もう両親はいない。お年玉なんて、幼馴染ということで梨人の両親から貰うくらいか。いや、もしかすると会長のお父さんとかからもらえる可能性もある。

「まあ、これ以上過去をえぐるのはやめよう」

「そうだね」

 静かな冬の夜、僕と恋とエリザは足音のみをたてながら、家まで帰って行った。寒かったので、アイスが溶ける心配もなく、皆思い思いにコンビニで買ったお菓子も食べ進めていった。

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