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Future  作者: 浅咲夏茶
6th Chapter;Band members and culture festival.
75/127

Target:Nyx,Elisa and Ren./episode74

「――凛、昨日はありがとうね」


 翌朝5時半。今日もまた、いつもより少し早く起きてしまった。まあ、デートしたから疲れたのは疲れたんだけれども、実際のところはそう疲れたわけでもないようで、あんまり眠気も無かった。魔力が回復させたのかな?

 隣に寝ているエリザは、僕のことをぎゅっと掴んできていた。まるで僕を抱枕のように、彼女は僕を抱いていた。

 恋は何処に居るのか考えてみるが、外は暗く、少々ながら僕の家の台所に光が、明かりが見えたので、恐らくそこに居るんではないか、と僕は推測した。

『ニュクス』

『なんですか、ご主人様』

『さっきの幻覚のようなものは、お前の言ったことか?』

『察してください、ご主人様』

『お前ってことか。……楽しかったか?』

『楽しかったです。……でも、私は有る一種の『シンデレラ』でしたので、昨日23時59分59秒に、女神の姿に戻ってしまいました……。えへへ』

『いちいち笑わんでいいわ』

『ご、ごめんなさい』

『まあいい。……んじゃ、またな。ちょっと付かれたわけではないんだが、この時間から起きていてもな。特に弁当作るわけでもないし。……恋のところのにでもいってくるか』

『行きますか、ご主人様』

『まあ、それでも今、背中に爆乳が当たって、しかも抱きつかれてるからな』

『力強くされてたら、起きてる証拠だと思いますけど』

『違うだろ。動いたらだろ』

『そうかもしれませんね』

『ああ。……んじゃ、ちょっと確かめてみるか』

 と、そんなところで心中会話を終わらせ、脳内をエリザの方に切り替える。

「しっかしまあ、本当にこいつの髪の毛と言ったら可愛いものだ」

 サラサラしているわけじゃなくて、欧米人のようなパーマっていう感じがいいんだ。……まあ、そんなこと言うとまた恋が嫉妬してしまうか。

「うう……」

 ちょっと頭をなでてみる。可愛い。本当、こいつめちゃくちゃかわいい。前にこの『エリザ』とかい超絶爆乳美少女に、『ラブホ行こう』と誘われたことがあったが、何故僕はあの時、断ってしまったのだろうか。今になって、あの時のことを後悔している僕が居た。……後悔してからじゃ遅いんだよなあ。

「――眠いな」

 とか言ってるくせに、実は眠くないんだよなあ。実に矛盾している。

「さて。……そろそろここを抜けださないと」

「まだ時間はあるじゃん」

「やっぱり起きていたか」

「うん。……髪の毛触って何『可愛い』とか独り言してんのさ、バカダーリンは」

 そう言うと、エリザは僕の頬をつねってきた。

「やめろ。つねるな。……まあ、お世辞じゃないから。本心だから、あれは」

「そっか。……その方が嬉しいな」

「だろうな。僕だって嬉しいし」

「何が?」

「『格好良い』とか言われるの。お世辞だとしても、誤解はしないけど、そう思ってくれただけで十分僕は嬉しい。そういう印象を与えられたってことだけで、何処か満足できるんだ。……僕って自己満足人間なんだな」

「そ、そんなことはないと思うよ?」

「そうか?」

「うん。……大体、ダーリンは主人公的な口調じゃないじゃん」

「つまりそれって自己満足……」

「――やばい、私も何か訳分からなくなってきた」

「そう? まあでも、何が言いたかったのか言ってみろ」

「えっとね、あれだよ。『ダーリンは主人公のくせに『俺』って言わない」

「別に『俺』って言う奴だけが物語の主軸ってのはおかしいだろ。現に、『僕』っていう一人称の奴が物語の主軸ってのは多い。それに、『俺』を一人称で使っているやつを主人公にしている作品は、ライトノベルに多い。一般小説に関して言えば、殆どの主人公は『僕』と語っている。男主人公ならな」

「まあ、女の子だったら『ボクっ娘』ってなるもんね」

「そうだぞ。……でも正直、僕は『ボクっ娘』結構好きなんだよね」

 心中に思ったことを、僕は嬉しそうに、笑顔で話してしまった。……バカだ。僕は実にバカだ。何をしているんだ僕は。……早く事態の収拾をつけないとだめだろ……。でも、僕にはそんな能力ないし……。

「じゃ、じゃあダーリン」

「なんだ?」

「も、もしも私が『ボク』って一人称名乗りだしたら、どう思う?」

 エリザが……ボクっ娘、だと?

 やばいな、それは。完全にドストライクじゃねえか。

 上からジロジロ見させていただくと、『パーマ掛かった茶髪のような金髪』を始め、その日本人離れした瞳、そしてバイリンガル、さらに爆乳で、体重も51kgと胸の大きさから考えると超軽いし、足も長く、モデルスタイルだ。

 エリザが悲しむからあんまり考えたくはないんだが、正直、レイプされたのはそういう『エロス』なところのせいじゃないのか、と僕は思った。だがそれは、僕がレイプ犯に同情しているわけではなく、何故エリザがそんな被害にあってしまったのか、その原因を考えた結果というまでだ。

「おーい、話し聞いてますかー?」

「わ、悪い! ……いいんじゃないか?」

「おお。じゃあ、早速……」

 エリザが、めちゃくちゃ笑顔で僕の方を向いて言ってきた。

「ボク、エリザだよー」

「……」

 あれ。

 意外と似合う。

 あのこれ、会長よりイケる感じじゃね? ……でも、こいつあんまり金持っていないし、僕がほとんどの金を出してやってる感じだから、考えてみれば、僕はこいつにパシられているわけだ。ああ、パシられてる。

「ダーリン!」

「ちょ、抱きつくなっ、胸が当たるだろ!?」

「興奮しちゃう?」

「こんなんじゃ興奮しねえわ」

「朝の生理現象は起こっているくせに」

「――それは男として仕方ないんです」

「そっか。……それなら、もっとダーリンに温まって欲しいから、ボクがダーリンの抱き枕になるね。……いいよ、きて」

 さっきからこの子、下半身に来ること言いすぎじゃないか? ……狙ってる? まさかこの子、狙ってる? ……いやいや、そんなことあるの……ッ十分あり得るじゃないか。こいつなら、エリザなら。

「……どうしたの?」

「なんでもねえ。……でも、『抱き枕』になるんだよな?」

「うん。生身の抱きまくらだよ」

「え?」

「い、今、一応ボクは、裸だよ?」

「……なっ」

 確かに、今思い返してみると、さっきから服同士がこすれるあの感触がない。……ってことは、さっきから僕の背中にあたっている胸は、つまり乳首があたっているということにイコールで繋がる……ということか?

「エロいな」

「なっ……。ダーリン、何言っているのさ!」

「わ、悪いっ」

 動揺しながら謝る僕。だが、その後ろで……。

「――ねえ、ダーリン」

「ん?」

「れ、恋が……」

「えっ」

 くるりと180度回転して、僕は部屋のドアの方を見てみたのだが、そこにはおたまを持った恋の姿があった。あの、恋さん、マジで怖い……。

「ねえ、凛」

「なな、なんだ、恋……?」

「裸で女の子と寝てる凛に、1つだけ聞きたいんだけど……」

「な、なんだよ?」

「朝ごはんを食べるか食べないか、選択して」

「は?」

「まあ、何故私がおたまを持っているのか察してくれれば、すぐに凛もわかると思うけど……ね。ほら、答えてよ」

「な、何を言って……」

「朝ごはんを食べたら、昼飯はあげないし、昼飯を食べるなら、朝ごはんは食べないってことでよろしく。……じゃあ、選べ」

「ひ、酷くね? それ絶対に選ばないとダメ?」

「うん」

 とか言ってるくせに、本当は昼飯用の食材も確保しているんだろうな、恋は。

「恋、どうせ用意してるんだろ?」

「昼飯? エリザと私の分だけ用意してあるけど……」

「じゃあ、エリザから貰うわ」

 僕はエリザの方を向く。

「いいよな?」

「いいけど……」

「じゃあそういうわけで」

 笑顔でまた恋の方に振り向く。

「なっ……」

 ツンデレの恋さんがシュンとしていらっしゃるようだが……。新属性だな。『ツンシュン』。いいかもな。

「んじゃ、朝飯お願いします」

「…る……や……わよ」

「ん?」

「ひ、昼飯やるわよっ! ばあああああああか!」

 恋はそういうと、ドアを力強く閉め、リビングへと走っていった。

「んじゃ、朝飯だ。流石に全裸じゃ不味いし、パジャマに着替えてから……」

「ワイシャツでいいかな?」

「パンツ穿け」

「変態」

「う、うるさいなっ、ボクの勝手だろっ!」

「……そうか。そうか。……でも、ちゃんとパンツを穿け。頼む」

「興奮しちゃうんだ」

「変なふうに捉えるな。……でもまあ、お前はそういうとこ直さないと本当、将来やばいと思うけど……」

「大丈夫だよ。ダーリンに裸エプロンで尽くすから」

「……本当、お前がそういうこと言う度に恋に殺されそうになるボクのことも考えて欲しいもんだよ、全く」

「ご、ごめんね?」

「そう思ってくれてくれれば結構だ。……んじゃ、朝飯食べるか。ああお前、僕にじゃれつくなよ? これ以上僕は恋に殺される筋合いはないし」

「だよね」

「お前のせいだけどな」

「ぼ、ボクがそんな悪いコトをしたんだとすれば、な、なんでも……」

「ん?」

「な、なんでもする……から」

「そ。んじゃ、ボクっ娘をやめろ」

「なんで?」

「お前が学校で浮いてきちゃうと悪いから。……そういう訳で、ボクっ娘はお終いだ。また今度、休みの日にでもお前に裸エプロンやってもら……」

 と、完全に言ってしまった僕だったが、一応咳払いをしておく。

「……変態」

「悪いな。だが僕は、裸ワイシャツも好きだぞ」

「だから『Yシャツ程度……』みたいに言っていたんだ?」

「そう……じゃねえよっ! まあその、本当お前は羞恥心が無さすぎる」

「いや、私は別に羞恥心がないわけじゃないよ? ……ただ、ダーリンの前だから、凛っていう大好きな男の子の前だから、私はその……」

「あの、前にも聞いたんだけど……」

「なに?」

「『大好き』っていうのの『好き』っていうのはラブ、ライク、どっち?」

「前に答えたじゃん。『ラブ』の方だって」

「で、でもその……」

「まあ、ダーリンが早く私と契約をして、愛の結晶を……」

「何でお前はすぐに、『僕の子供さえ産めばいい』みたいな発想に……」

「そ、そんな発想じゃない。……けど、それだけ私はダーリンが好きなんだ」

「でも僕は、お前がレイプされてる時でも助けに行けなかった……」

「そんなの、私が携帯を持っていなかったから悪かったんだよ」

「違う! そんなんじゃない! ……携帯くらい買ってやれる、そんなお金が欲しかった。そんなお金、僕にはなかった。……それにあの時、僕は自分の家で喋っていた。情けないよな。僕……」

「情けないわけ無いじゃんか。ダーリンが、なんでそんなこと言うんだよ。第一、一番酷いのはダーリンじゃない。悲しむならわかちあおうよ。……幼馴染だろ?」

「わかってる。……けど、レイプされたことが、お前に『好き』って、『ラブ』の方で言われたってことと絡まって、心を締め付ける。僕の本心じゃない、何処かに導こうとしてくれているんだ。……情けない人間だ、僕は」

「――だから、喜びも悲しみも、わけ合えばいいじゃんか」

 そういうと、エリザは笑顔で僕の頭を撫でてきた。それだけで、何かこう、エリザから『母親』的なオーラが溢れているのがわかった。そのオーラは、とても大きく、そして心が切なくなるようなオーラで、光もなく、ニオイもなく、心に訴えかけてくるだけの、ただそれだけのオーラがエリザから出ていた。

「……なあ、エリザ」

「ん?」

「何でお前は、僕に手を出してこないんだ?」

「嫌だもん」

「えっ……?」

 エリザはそう言うと、僕の頭を撫でながらも笑顔を浮かばせていた顔を少し真面目な顔にしたりして、表情の変化を見せた。その上でエリザは、すっとベッドの毛布から抜け出し、ハンガーに掛かっていたワイシャツを着て、箪笥からパンツを取り出して、軽装に着替えた。

 そして僕も毛布から抜け出し、咳払いをして部屋のドアを閉めた。

「――私は虐められていたんだ。友達に」

「なんでだ?」

「……嫉妬だよ」

 エリザはまだ早い時間でありながらも、制服に着替えた。僕はまだパジャマで居ることにした。エリザも何か言いたそうだったからな。

「――嫉妬って怖いんだよ? 最初はただのイジメだった。でも、途中からトイレに連れられていって放尿は勿論、顔は蹴られてアザは出来るわ、それこそ大人のおもちゃを持ち込まれ、私に対して使われ、散々な目にあった」

「お前にそんな過去が……」

「私だって怒ったさ。そりゃあ、一応日本人じゃないから、キレるとそんな早く収拾が付かないけどさ、逆にイジメられるんだよ、私が。しかも、私の友達だって被害にあった。……女子トイレの個室で、手首に紐を結ばれて、その紐を個室の壁に固定されて、そこで失禁してたの見たら、逆らえないじゃんか。……笑顔だった。あの友達はね」

 エリザは泣いていた。自分の過去を語ることが、ここまで悲しいことだということは、僕にだって話を聞いていれば分かった。

「――それ以来、私は人に対して怒ることができなくなった」

「トラウマ、ということか」

「まあ、そうだね。……ダーリンが10歳までの記憶が無いように、私もその『イジメられた』記憶を無くしたいと思ってる。……でも、そんなことしたらダーリンとの思い出が消えちゃうじゃんか。でも、忘れたい。そこだけ」

「……無理なんだよな、それは」

「だよね。……知ってた」

 部屋の中は重い空気に押し潰され、僕もエリザも黙りこんでしまった。

「さ、朝ごはん食べに行きますか。恋が待ってるよ」

「だな」

 そう会話を交わすと、僕とエリザは互いに背を向けあい、着替えてからリビングへと向かった。

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