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Future  作者: 浅咲夏茶
5th Chapter;Unpleasant memories of heroines.
56/127

Target:Shu,Rina and Ren./episode55

「ちっす」

「なんだここは? ……つか、人の部屋占拠すんな」

「いいだろう?」

 僕の部屋のテレビに据置型のゲーム機を繋いで、コントローラー片手に、右には炭酸飲料、というどうみても『ニート』って感じの姿でこちらに『負けを認めろ』的に言ってくる愁。……人の部屋に入って占拠するなんて言語道断だ。

「早く帰れ」

「……お前のエロゲを借りに来たんだ」

「いや、別にエロゲとか僕の部屋にはないけど……」

 ――迂闊だった。今、僕の後ろに会長が居るということを考えていなかった。エロいトークとかはあんまり得意じゃない会長は、ちょこっと苦笑いを浮かべた上で、「ふーん」と言って後に続けて僕にこんなことを言ってきた。

「――そのエロゲは何処に有るのかな?」

 答えは知っている。恋の部屋だ。……だが、向かいの恋の部屋にはカーテンが掛かっていて、どうも部屋の中の様子が見えそうにない。

「会長。ちょっと、探してきていいですか?」

「何処にあるのか、と聞いている。しっかりと答えろ」

「……恋の部屋に」

「れ、恋の部屋だと!? ……り、凛! 貴様、なんで恋の部屋にそんな……」

「元々は『エリザが来るからエロゲを管理して』って言った。そこから、エロゲはあいつの部屋の方に有る。……つか、あいつもエロゲしてるけどな」

「エロゲーをしながらイチャコラしてんじゃないだろうな?」

「無いだろ、それは。何せ、僕と恋は『幼馴染』の関係以上にはなれないんだ。……まあ、あいつに彼氏なんて出来たこと無いから、出来たとしたらきっと僕は褒めるだろうけどね」

「その前に、僕の彼女を紹介してください」

 愁が本心のような建前のような本心を言った。しかも、上目遣いで。……だが、僕は愁の上目遣いになんて反応を示さなかった。そりゃあ、幼馴染だもん。反応を示すのも面倒だ。もう少し、女顔だったらまだ良かったかもしれないが、顔が男っぽいからな。……でも、そういう所は意外と僕も羨ましいと思う。僕の場合、顔が女っぽいだけで『女々しい』と言われるのだから。

「却下。お前の彼女って誰だよ?」

「二次元の彼女に決まっているだろ。ほら、早くエロゲを」

「そういう意味かよ。……あの、会長?」

「なんだ?」

 僕は会長に、愁に対しての事を聞いてみた。

「ああいう二次元ヲタクはどう思います?」

「……正直、『エロゲ』って連呼している男の子はちょっと……ね。その面、凛君みたいに『エロゲ』ってあんまり言わない方は凄いよね。でも、そりゃあ人間に欲がないのはおかしいから、エロゲをするな、とは言わないさ。けど、日常で『エロゲ』なんて連呼していたりするのはどうかと思うな」

 そんなこと言ったら、僕だって『攻略』だとか『デート』だとか、それこそ自意識過剰な妄想だって。色んな面で、変な方向の才能を発揮している。

「……会長さん」

「なんか傷つけたみたいだから、慰めてあげようか?」

「お、お願いしていいんですか!?」

「……私は、凛君に『面倒見が良い』と言われているんだ」

「ちっ、また凛の話か……。あいつ、なんていい思いばっかり……」

「嫉妬、か?」

「ち、違いますよ!」

「男が嫉妬なんて、それは醜いだけだぞ。……愁君。君にはわからないかもしれないけど、女同士の付き合いってのは結構大変なものなんだ。いっつもじゃれあってる奴と、仲間はずれにされる奴。大きくイメチェンすれば、一瞬にして地獄に落ちる奴と、落ちない奴が生まれる。……それに、女同士の嫉妬は怖いぞ。それこそ、昼ドラみたいな展開になることも予想される」

「……ということは、凛は最終的にナイフで刺されて死ぬってことですね!」

 手を叩き、「なるほど!」と分かったような顔していやがる愁。……めちゃくちゃイラつく。なんだ、この状況。今まで味方だった会長が、愁の見方になってしまったせいで、会長も愁が手を叩くと同時にニヤけた。

「僕は昼ドラ展開なんか望んでねえよ!」

「とか言って、エリザと恋を口説いた奴」

「口説いてねえから!」

「……もしかして、会長も口説かれちゃった系?」

「いや、別に口説いた訳ではないけど、まあなんというか……」

「え?」

 僕が少々回答に戸惑っていると、会長はニヤけた顔で僕の方見て、愁に僕が『昨日色々やった』という事を伝えた。しかも、コソコソとしているので、そういう大きい内容は分かっても、小さい内容、つまり喋ったことは全然伝わってこない。……伝言ゲームしている訳じゃないから当然だが。

「――凛、見損なったぞ」

「いや、えと……」

「でも、凛がそれでいいなら俺も……」

「そんなことしたら、僕は会長を助けに行きます」

「な、なんでさ! お前ばっかり得するんじゃねえ!」

「得? ……ああ、そうか。お前にはそういう風にうつっているのか」

「ど、どうした?」

「……正直、『主人公』って辛いもんだぞ?」

「なんで突然メタなことを言うんだ」

「お前が『僕ばかり得してる』とかいうこと言うからだ。……得だけじゃない。損だっていっぱいしているぞ。その上に、こうやってストーリーがある」

「お前、未だに『厨二』の血が濃く残っているよな」

「僕はもう中二病なんて卒業したんだ」

「昔は色々有ったよなあ。『我が名はダークフレイムマスター!』だとか」

「それアウトじゃね?」

「『新世界の神、リン・シファネット・ディティオールの力は相当なものなのだ! 低俗な庶民が、何故我には向かおうという思考回路が生まれるのかのう?」

「……やめてくれ。僕の黒い歴史を抉り取らないでくれ」

「そこに痺れるだろ?」

「どういう意味だ?」

「だから、黒い歴史を抉り取られて、そこで感じちゃう、っていう」

「言葉責めとか興味ないんで。……ああ、ドMは帰って、どうぞ」

「……酷いよ」

「お前だって酷いだろうが」

 口論になりかけた時、会長が止めに入った。

「まあまあ。……じゃあ、恋ちゃんの家に侵入して、エロゲを貰ってこい」

「一応、恋の『部屋』にあることはわかるけど、何処の棚にあるかは……」

「はあ、早く行けよ」

「か、会長、ちょ……」

 追い出す形で、会長が僕を部屋から出そうとする。

「ま、窓側から行きます!」

「早く行け!」

「は、はい!」

 最後はもう、急かされて結局行くことになった。僕は躊躇っていたが、決して恋の部屋に行くのが恥ずかしかっただとか、そういう意味じゃない。ただただ、行くのが嫌だったんだ。自分の部屋で寛ぎたい。そういう思いが強かったんだ。


 ***


「なっ……」

「えっ……」

 目の前には美少年が居た。……声は恋だから、恐らく恋なのだろうけど。でも、その目の前に居る美少年は恋のようには見えない。

「みみみ、見るなあっ!」

「お、お前それって……」

「み、見るなあっ! ああ、あっちむけえっ!」

「ご、ごめ……っ」

 窓の方を向く。そしてカーテンを閉じて、深呼吸をする。

 目の前にいたあの美少年は恋だった。その声はどう考えても恋だ。……まさか、僕が前に執事服でエロゲ買わせたせいで、そういう趣味になってしまったのだろうか。……考えられなくもないな。

 少し経ってちらりと後ろの方を向くと、今度は女の恋が居た。

「……れ、恋」

「な、なに……?」

「さっきのあの男装した恋は結構可愛かったなあ、って思うんだけど」

「格好良い、の間違いじゃないないの?」

「そうかもな。……てかさ、なんで男装なんて自分から?」

「文化祭で私達のクラスは『男装執事&女装メイド喫茶』になったからさ、服装とかを色々と確認しておかないといけないかなあ、って思って」

「……なあ、一ついいか?」

「ん?」

「僕さ、その事に関して一切聞いていないんだけど……」

「エリザちゃんから一言も?」

「ああ」

「そりゃあ、ドンマイというしか無いよね。……まあでも、まだ文化祭まで2週間有るわけだし、全然大丈夫でしょ。……あ、そうだ!」

「え?」

 手をポンと叩いた後、恋は棚から衣服を取り出した。それも、相当露出の多い服をだ。……まさか、これを僕が着なきゃいけないとか、そういうことじゃ……。

「恋さん? 冬にこんな露出の多い服って一体……」

「ああ、そっか。凛は『メイド服』の方が好みだよね。ごめんごめん」

「そういう事じゃない!」

「……でも、結局は着なきゃ駄目じゃん」

「くっ……」

「あ、別に私は無理に着せようとしているわけじゃないんだよ? ……その、前に私が地味な服を選んだ時も、着こなしがめちゃくちゃ上手くって、何か嫉妬しちゃいそうで……。私より可愛いもんだから、ぎゅうってしたくなったんだよねえ、あの時。……それに、身体が女の子になっていたんだし、『合法』って訳じゃん?」

「確かにそうだが……」

「まあ、今私が抱きついたら変なコト考えちゃいそうだから、やめるわ」

「どっちが?」

「凛に決まってんじゃんか」

「僕はそんな変態ではないぞ? ……ぶっちゃけ、恋の方が『ムッツリスケベ』だろ? 表では、『私は清楚な女の子です』アピールしてるくせに、裏では色んな男を食べたんだろ? ……そんな幼馴染とか、ないわ」

「な、なわけないでしょーが!」

「だよな。……しっかしまあ、何というか。お前みたいな清楚でそれなりの胸も持っている美女がモテないっていうのもなあ。……確か、1年の頃に『ミスコン』にクラス代表1名の枠で出て、ビリッケツで泣いたんだよな、お前」

「そ、そういう黒歴史を引っこ抜くなあっ!」

「やめい! お前が殴ると命が危ないだろ!」

 そりゃあ伊達に柔道やっている女から殴られたら、大変なことになるのは間違いないだろう。……でも一応そういう『やっていいこと』とかは分かっているようだし、そこまで気にする必要はないと思うけれど。

 ただ、「じゃれあい」や「スキンシップ」を超える強さでかかって来られた時もあるため、一概に『危険はない』とか言うことが出来ないのが現状だ。

「……私だって、凛を殺そうなんて思ってないよ?」

「めちゃくちゃ強い力で殴られそうになるって思ったら、そう思うのは当然じゃないのか?」

「……あの、泣いていいですか?」

「やめてくれ。僕が人の涙に弱い事を、お前は人一倍分かっているはずだ」

「そりゃあ12年来の幼馴染ですからね」

「……メイド服、お前持ってるのかよ?」

「持ってるよ。……前にコスプレするために買っておいた」

「こ、コスプ……クスクス」

「こ、こらあっ! 笑うなあっ!」

 恋のコスプレ。……悪くはないかもしれないけど、やっぱりちょっとねえ。例えばエリザとかさ、ああいう豊かな胸の持ち主ならまだしも、恋は中途半端だからな。高校3年、もう成長も止まったわけだし、これ以上期待するのもあり得ない話に賭けをしているようなことで。……ただ、こいつの場合は別にそこまでキモいわけでもダサいわけでもない。事実、毎年文化祭で『ミスコン』のオファーが飛んでくるのだ。

 一応『ツンデレ』だからかな? ……いや、デレてないよね。じゃあ、ただ『ツンツン』してるだけだから? ……まあ、会長とは正反対だからな、恋は。僕の幼馴染ということもあり、友好関係は幅広い。昔は「僕と恋はデキてる」とか言われたことも合ったが、今じゃあそれも昔の話ってもんだ。

「――着ろ」

「……あの、恋さん?」

「着ないと殺す」

「殺すな! 人の命をなんだと思っている!」

「……じゃあ殺さない。その代わり」

「ん?」

「メイド服を着ろ」

「い、嫌に決まってんだろ!」

「……ふっ。そうはいかんぞ」

「ちょ、何をし……」

 捕まえられた。流石は柔道を習っているだけ有るな。強い力だ。

「は、離せ……」

「じゃあ着ろ」

「い、嫌だ!」

「この前は女の子になったくせに」

「だ、だがしかし、この声を変えることは出来ないのだからどうにも……」

「『無口キャラ』っていう手もありだろ」

「お、お前は更なる可能性を見出す天才かもな……って、そうじゃねえ!」

「メイド服、着てよ」

「い、嫌だと何回言えば……」

「言っておくけど、私凛がなんで私の部屋に来たか知ってるんだよ?」

「……え?」

 僕の家ってそんなに古い家だったっけか? ……まあ、そういうことなら聞こえていても問題はないんだろうけど。……ただ、もしそういう事じゃない場合、どうやって本題に持って行こうか……。というか、本題の件に関しては本当、忘れてしまっていた。なんてバカなんだ僕は……。

「私を、犯しに来たんでしょ?」

「お前、壊れたのか?」

「ふぇ?」

「そういう風に言っても僕は動じないぞ。……壊れちゃったなら、そりゃあまあ、仕方が無いか」

「嘘です。御免なさい……。ほ、本当はその……エロゲ、貰いに来たんだよね?」

「正解だ」

「やっぱりね。あんな大きな声で会長さん言ってたら、そりゃ気づくよ」

 会長は大豪邸に住んでいるんだ。声量は大きいのが普通かもしれない。……学校とかじゃあんまり大きいように感じないんだけどな。まあ、夜も更けてきたわけだし、大きく聞こえるのは仕方がないのか。

「じゃあ、エロゲはそこの棚にあるから」

「あ、ありがと」

 気が利く幼馴染は本当に居てくれるだけでありがたい。料理もできるし、それなりの学力も有る。世話の焼いてくれる幼馴染なので、健康とかにも気遣ってくれる奴だ。本当、こういう奴が居ると助かることは非常に多い。


 そんなことをつつ、棚からエロゲを取り出した僕は、自分の部屋へと戻っていった。


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