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Future  作者: 浅咲夏茶
5th Chapter;Unpleasant memories of heroines.
55/127

Target:Rina and Rina father./episode54

 午後5時30分。空も暗くなり、生徒会室から僕と会長は出ようとしていた。英洙と零奈はというと、会長の言葉で部活へと向かった。まあ2時頃まで会長は書類系を片付けようとしていたわけだし、そんなに多い人数要らない、という意味なのだろう。

「――いやあ、今日は色々あったなあ。……で? 恋は口説いたそうだけど」

「あの、会長? 恋を口説いた覚えは一切無いんですけど……」

「でも、女の子を『屋上に呼び出して、コーヒー買ってやる』って時点で、ボクは『口説いてる』って思わせちゃってると思うけどなあ」

「会長、もしかして嫉妬してます?」

「……なんで?」

「いや。なんか、切なさそうな顔しているんで」

「――元々『無口系キャラ』だったからね。黒髪なのに、めちゃくちゃ無口」

 無口キャラには銀髪が多いのは皆分かっているはずだ。もしくは、毒舌を吐くキャラとか、主人公を『君』付じゃなくて、名前のみでクールに呼ぶとか。 無口キャラ……いや、銀髪キャラには貧乳が多い。だから、会長のような『無口』で『ボクっ娘』で、恐らくCからDは有るくらいの胸を持ったキャラは『新ジャンル』かも知れない。

「――んで、恋はどんな反応したの?」

「機嫌は直りました。……帰り際、めっちゃ笑顔だった」

「何か、別れ際の台詞とかはあったのか?」

 目を輝かせる会長。……やっぱりこの人、恋愛系の話には相当な興味を持っているようだ。エロい話はスルーしないけど、少ししか触れないくせに。

「『ありがとう』って言ってた。小さな声で」

「いいニオイした?」

「した……って、何でそんな質問するんですか!」

「やっぱり変態だったんだな、お前」

「ち、違……」

「ボクは君がそんな人間だったなんて、本当に悲しいよ」

「だ、だから……」

「――冗談。ボクは、過激なエロトークじゃない限り、恋愛以外のえっちな話でも色々と受け付けているので。……別に誘惑しているわけじゃないよ?」

「昨日と同じ過ち起こしませんよ! ……つか、ここ学校でしょ?」

「そういうシチュエーションのあるエロゲも有るって聞いたんだけど……」

「生徒会長が何でそんなこと言ってんですか! もうちょっと、生徒の見本になる行動を……って、僕も言えないですよね」

「そうだぞ。君だって、ボクの腰を痛めるくらいの強さで昨日は……」

「ほ、本当にごめんなさい!」

「……だから、謝る必要はないって」

 会長は笑顔でこちらを見て、僕を慰めてくれた。……朝もこんなやりとりしたっけか。……出来ることなら、あの過ちはチャラにしたいものだ。

「――あのさ」

「ん?」

「今スマホ見たら……」

 会長は、僕にスマホを見せてきた。スマホにはメール画面が開かれていて、差出人は会長の父。つまり、この学校の理事長だ。そんな理事長兼会長の父親から届いたメール。それは……。

『里奈。お前もいい年齢だ。望まぬ妊娠をしてしまうことさえ有るんだ。それを承知のうえでやってくれるならいくらでもやってもいいが、まだ高校生なんだ。少しは遠慮というものを、断るということを覚えろ』

 そんな内容だった。

「昨日は、ボクにも非はあるよね。けど、凛君がやらなきゃ……」

「ぼ、僕のせいですか!?」

「そりゃあ、ボクは恋ちゃんのように力が強くないからね。凛君は、もうちょっと大切に扱うべきだったんだよ! ……まあ、こんな話題ばっかでも楽しくないし、話題変えようか?」

 その時だった。トントン、と生徒会室のドアが叩かれる音が聞こえた。

「――やあ」

「お、お父さ……」

 ドアを開けて入ってきたのは会長の父親。何度も言うが、この高校の理事長は会長の父親である。親子の独裁政権でこの学校が動いていると思うと、ちょっと逆らいたくなる気も無くはないが、そんな勇気は僕にはない。

「君が、凛君だよね?」

「――は、はい」

「別に堅くなる必要はない。気を楽にしてくれ」

「も、もしかして今日の早朝に会長と色々とあった話とか……」

「確かに、不純異性交遊が有ったというのは、里奈の専属メイドである咲希からよく聞いていた。……そりゃあ、俺にもあった。青春時代というものが」

「……」

「――ところで凛君」

 そう言うと、会長のお父さんは僕の方に顔を近づけてきた。そして、ちょっとニヤけた顔で、自分の娘について、こんなことを言ってきた。

「――里奈は一人っ子だった。咲希というメイドも居るが、彼女も昔は西條家で働いてはいなかった。元はOLだったんだ。俺の執事も、メイドも、皆20歳を超えた人達ばかりで。だから、昔から里奈は敬語をよく使っていた」

「そんなこと聞くと、今の会長が別人のように見えてきますね」

「そうか? ……まあ、俺の娘は顔も綺麗になったし、身体もめっちゃ女ぽっくなったし、自慢じゃないが、それなりの胸も持っている。いい物件だろ?」

 なんだこの父は。自分の娘を『いい物件』とか言っちゃうなんて。その言い方に脱帽だよ、全く。……しかしまあ、本当にひどい言い方だよな。

「あの、いい物件という言い方は……」

「最後までやったくせに」

「あ、あれは会長のほうが誘惑してきたせいで……」

「――1つ言っておくが、結局責任を取らされるのは男の方なんだ。だから、誘惑に負けない心を持つことが重要だ。……だから、そこは冷静な判断が重要になってくる。これ、おじさんからのワンポイントアドバイスな」

「あ、は、はい……」

 そう言うしか無かった。それ以外の言葉は一切浮かばないのだから、いうことなんて出来ないわけだ。現実というものは、実にそういうものであることを、心の片隅にでも置いておくのが重要だと思った。

「……もう、何なのさ。お父さんと凛君で、一体何を話し合っていたのさ?」

「娘の婿を探そうとな」

「早いわ!」

「……いや、お前もいい歳だ。彼氏や彼女の一人や二人、作れるだろう?」

 会長の顔は悪くない。普通に可愛いし、喋り口調も『ボク』が一人称で、『君』とか『凛君』で呼んできてくれるし、女の子っぽい声でもないため、僕のようなボクっ娘属性のある男からしてみれば、ジャストミートである。

「なあ、里奈。里奈が『ボク』と一人称で使うのだと言うことを、何故凛の前では晒しているんだ? 家族と執事、メイド以外の前では一度もなかったのに」

「か、会長?」

 急に一言も喋らなくなる会長。会長はそっと後ろを向くと、足早に書籍室の方へ向かって行った。その時の会長の父は、堂々とした表情で立っていた。

「凛君も気づいているかも知れない。君の年下である会長さん、要は里奈は、俺と君、咲希など以外で『ボク』という言葉は使わない」

「それは、教育方針的なものなんですか?」

「……まあな。昔、俺はあの娘を捨てようとした」

「な、なんでですか?」

「俺は財閥のトップだった。だから娘じゃなくて息子が欲しかった。だが、俺の妻は余命半年の命だったから、里奈を産んですぐに亡くなったんだ」

「そうだったんですか……」

「確かに、多くのメイドや執事が居るから、本当の親が誰かはわからない状況になっている。それに、俺は里奈に、『実の母親が死んだ』という旨を説明した覚えはない。今の母親は、俺の二人目の嫁だ」

「……でも、それって会長が『ボク』って一人称を使っていることの説明にはならないんじゃ……」

「里奈が『ボク』と言っているのには、『息子が欲しかったから男口調で喋ろ』と言ったのが原因かも知れない。……それに、中学まで男装していたしな」

「じゃあ、なんで高校じゃ男装していないんですか?」

「中学の時、里奈から猛反発を喰らったからだ」

「成程……」

「だから、里奈はあれ以来、『無口キャラ』になっていた。とはいえ、『ボク』と自らを名乗っているから、そりゃあ仲間はずれにあったと聞いている」

 会長は仲間外れにあっていた。それも、テストの点数が良かったから尚更。それで手を出す奴らも奴らで凄い悪党だと思うが、会長も言えなかったんだろう。そういう雰囲気、オーラを醸し出していたのだから。もしかすると、元々『お嬢様』とうこということも相まって、なかなか言いづらかったのかもしれない。「やめて」なんて言うのは「負け」と思ってしまったのかもしれない。

「君も一切反論しないようだ。有ってるってことでいいのか?」

「はい。そうです」

「……そうだったのか」

「でも僕が見る限りでは、無理やり会長をどうたらこうたら、とかそういう卑猥で卑劣な行為を働いた人はいないと思います」

「でも、君は昨日……」

「あ、あれはその、なんというか……」

「でもまあ、俺も君になら里奈を渡してもいいかな、とは思うけど」

「そ、それはどういう……」

「……里奈はな、さっき言ったけれど、自分を『ボク』と名乗るのは、本当に親密な人との間じゃないと何も話さないんだ。それこそ、里奈だって、いっつもとまではいかないけど、殆ど君のことを話している。『今日は凛君が馬鹿げたことした』とか、『今日は凛君に手伝ってもらって生徒会の仕事が早く終わった』とか。……だから、里奈は君との関係を『絶とう』となんて、絶対思ってないはずだ。絶対、『もっと関係を深めたい』と思っているはずだ」

「だから、つまり僕には何を要求する……」

「一番いいのは『結婚』だ。……ああ、無理にとは言わない。でも、俺も君になら里奈を任せられると思ってる。君の話をするときの里奈は、いっつも笑顔なんだ。悲しい顔は一切していない」

 会長にそんな一面があったとは。やはり、僕は色々な人に名を知られているのかな。……というか、朝の咲希さんの態度凄かったな、あれ。

「――なあ、凛君」

「な、何ですか?」

「里奈を今日は君の家に連れて行くから」

「……え?」

「修羅場になりそうだな」

「あ、あの……」

「――『僕の幼馴染と生徒会長が修羅場すぎる』。タイトル、出来たな」

「いやそれ、ただのパロネタじゃないの?」

「……おっと。君はそんな言葉遣いしか出来ないような男なのか?」

「す、すいません」

「違う違う。謝って欲しいわけじゃない。なんつうか、馴れ馴れしいからさ。おじさんと年齢凄い離れてるのに、なんかめっちゃ馴れ馴れしいと、誤解しちゃうだろ……」

「やめてくださいよ、そういう意味深な台詞を言うのは……」

「意味深? 意味深長の間違いじゃあないだろう?」

 会長のお父さんがここに来て僕の発言に色々といちゃもんをつけてきている。でも、これがある意味の指導なんだろうな。こういうのがあってこそ、会長の今の性格が作られたんだろう。なにしろ、僕は今まで会長が本気で怒ったところだとかは、一回見たことはない。

「間違いでした」

「間違いじゃないだろ」

「そうですね」

「……正直に聞きたい」

 唐突だった。里奈の父の顔が真剣な顔になった。今、目の前の男の人を見ると、非常に男らしい顔でこちらを見てきている。

「な、何ですか?」

「……里奈の身体、美味しかったか?」

「そ、それは一体どういう意味で……」

「やったんだろ? どうだった?」

「こ、答える訳ないじゃないですか!」

「『二人だけの秘密』ってか。……羨ましいもんだ。青春時代に戻りたいよ」

 そうだった。里奈のお父さんの妻はもう死んでいるんだ。今の嫁は二人目だと、里奈のお父さんも言っていた。

「――青春って、何なんですかね」

「知らないよ。俺も青春を謳歌した人間じゃない。今で言う『リア充』なんて言葉は、俺が中高生の頃は無かったからな。携帯の普及で、多くの言葉が生まれたからな」

「確かにそうですね」

「『ワロタ』もそうだし、『クッソワロタ』もそうだし、『テラワロス』もそうだし。……それ全部、2ちゃん用語だけどな」

「ネットスラングをリアルで使う人って、あんまり同情しづらくないですか?」

「俺の意見は全て認めない、って事か?」

「違いますよ!」

「……そうか。んじゃ、会長……いや里奈を連れて来い」

「で、でも……」

「行け」

 里奈のお父さんの低い声で、僕は背中を叩かれて送り出された。


 ***


「秘密、知ったんでしょ?」

 書籍室へ入った時、本を読んでいる会長を見つけた。いつの間にか眼鏡をかけていた会長は、そのまま書籍室内の窓際に有る座るに丁度いいスペースにちょこんと座ると、そこで足を組んで本を読み始めた。

「知った。……いや、聞かされたってのが正しいかもね」

「なんだそれ」

「それこそ、お嬢様って設定だし、『西條里奈の秘密』ってタイトルどうよ?」

「ボクは作家じゃないし。それこそ、乃木坂は……」

「元ネタ、分かってるのか」

「父親ヲタクだもん」

 あの財閥のトップがヲタクってのも、本当に意外だよな。本当、意外だよな。

「……それで、その格好だとパンチラになるけど」

「変態かよ」

「男は皆変態だ。……正直、昨日は色々有ったからパンチラ程度じゃあね」

「発情期なのか?」

「……おいこら。一応お前はお嬢様なんだから、もっとな?」

「――酷いもんだよね、この世界は」

「どうした、突然」

 窓際に座っていた会長は、そこから床へすっと降りた。もう夜も始まろうとして入る。外暗いし『夕方』じゃなくて『夜』という呼び名でいいのかもしれないが、現在時刻は17時50分くらいだ。……それじゃあ、前につける夜も夕方も要らないけどな。

 会長は、持っていた本を片付けて、こちらへ近づいてきた。

「ボクが秘密をバラしたのは、君だけだ」

「お父さんも知ってるようだしね」

「ああ。書籍室は防音壁なんて無いからね。隣が図書室だから、そりゃあもう、ガンガン聞こえてくるんだよ。生徒会室での話し声が」

「だから図書室の放課後開放が無くなったのかな?」

「恐らくそうだと思うよ。けど、ボクも本当のことは聞いていないし」

「図書委員が勝手に決めたからな」

「どうせ本はラノベしか読まないくせに」

「悪いか!」

「ボクは昔から一般小説を読みまくる女だった。中学でラノベを読んで、オタク系の分野にも進出していったけど。……ボクは、昔は一人ぼっちだった」

「一人……か」

「正直、入学式に見た君と恋、愁と梨人の4人をボクは忘れられない。皆笑顔なんだ。……幼馴染、欲しかったな」

「居ると結構大変なことになるけどな」

「……それでもだ。楽しそうなんだ……皆が」

「確かに、僕は会長の真逆の生き方をしました。今まで、幼少期はエリザと共に馬鹿やったし、小学、中学、高校と、あの3人と馬鹿やりました。……最近、僕ら5人で寝たこと有ったんですが、あの時分かったんですよね」

「雨の日か」

「そうです。……何か、何処か懐かしい気分が心の何処かに有った気がして」

「なるほどな」

「ゲーマーでドMな愁、僕と恋愛に関して敵対関係に居る梨人、家庭的なのに暴力系の恋、いっつも僕に抱きついてくるエリザ……。でも、皆笑顔なんですよね、会長の言うとおり。だから、何処か懐かしい気分……あれ」

「涙、出てるぞ」

「会長こそ」

「情けねえな。ほら、胸貸してやるよ」

「それ男の台詞でしょ!? ……てか、泣いてる人に言われたくないな、そんな格好良い台詞。……つか、人の涙で制服汚していいんですか?」

「気づかれてるかもしれないけど、一応ボクも君には心を開いているんだ」

「君『には』……ですか」

「ああ。だから、飛び込んでこい。私にも、何か泣きそうな感情が……」

「独りぼっちは、寂しいもんな」

 決め台詞を言うと、僕は会長の頭を撫でた。これでも僕は身長175センチちょいある。小柄だが、会長に比べたら全然低くない。会長なんて160センチにも届いていないんだから。157センチだったっけ?

「――お前に撫でられてると、何か侮辱に見える」

「なんだそれ」

「テストの点数ボクより上のくせに」

「同じじゃんか、点数は」

「それは去年度末のテストの結果でしょ?」

「そうだったっけか。……じゃあ、会長。聞いてたようなので、僕の家に行きますか」

「飛んでいくの?」

 その時、書籍室の扉が開いた。

「失礼します」

 堂々とした歩きで入ってきたのは、咲希さん……いや、メイド服じゃない。スーツ? でも、髪型も男っぽくしてるけど、原型は咲希さん……。

「嬢。ご準備が整いました。御車で行きます」

 やっぱり咲希さんじゃん。声を聞いて、僕はそれを裏付けた。

「け、けどバレるんじゃ……」

「大丈夫です。今日は、先生方の冬休み、生徒会選挙等の重要な案件等についての話し合いが長引くため、部活動が夕方5時切り上げなのです」

「これまたご都合主義やで……」

 会長が関西弁になった。ツッコむ気なのかな?

「……んじゃ、行きますかね」

「いいところだったのに、凛様に奪われてしまいました」

「……すいません」

「まあ、そういうもんですよ。現実は非情である、その言葉のとおりです」

 今その言葉を使う場面だったのかちょっと考えちゃう僕。……はあ。


 ***


 今朝降りたあの路地裏前の小路のような場所で、僕と会長、そして会長のお父さんは車に乗り込んで、僕の家まで連れて行ってくれた。けど、バレるのが嫌な会長は僕の家の前じゃなくて、近くまででいい、と言っていた。

 会長の意見が通され、結局僕の隣の家、要は恋の家の玄関前で降ろされた。……この状況、やばくね? 上から恋が見てたらやばいんじゃね?

 ちらりと上を見る。けれど、誰もいない。恋の部屋の電気も消えている。一応、これは安心していいのかな……?

「じゃあ、おやすみ」

「まだ6時過ぎなのに」

 そんな会話を交わした後、黒い車は闇夜に消えていった。

「じゃあ、行くかね」

「そうですね」

 そんなことを言った後、僕と会長は、僕の家へと入っていった。

昨日は、プロ野球中継に熱中したおかげで更新遅れたので、今日は7000文字、欲を出して頑張りました。

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